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贈与と譲渡ではどちらか有利か
【目次】
1.贈与と譲渡ではどちらか有利か
後継者への株式の移転は、贈与と譲渡ではどちらか有利になるか解説いたします。
贈与による株式の移転あるいは譲渡による株式の移転のいずれによっても時価による取引となるため、時価の算定方法の相違による有利不利が重要な判断要素となりますが、株式代金の調達、贈与税額の納付、譲渡による所得税の納付、後継者への株式移転計画等総合的な判断が必要となります。
2.時価の算定方法
個人間の取引が時価以外で取引された場合には贈与税の問題が発生してしまうため時価の算定が重要なポイントとなります。
2-1.贈与税
贈与により株式を移転する場合、移転に伴う株式の評価は時価となります。
その時価は原則的には相続税法財産評価通達に基づいて評価します。
2-2.所得税
売買により株式が移転される場合、株式の売買が親族問で行われる場合や会社の経営権に及ぶ売買等の場合の時価は、純資産価額を基に評価します。
2-3.取引価額による比較
通常、贈与税の評価においては純資産価額方式と一般的に純資産価額より評価額が低い類似業種比準価額を併用することができ、また、純資産価額での評価において清算所得に対する税金を控除できるのに対し、譲渡の場合の取引価額は純資産価額を基に算定されます。
清算所得に対する税金を控除することができないため、売買実例がない場合の譲渡の場合には、贈与による評価額の方が有利となるケースが多くなります。
3.他の要素による比較
贈与による課税価格、譲渡による取引価額とを比較すると一般的には贈与による移転が有利といえますが、資金調達可能額、株式移転までの期間、他の相続人の遺留分等の他の要素を総合勘案して移転方法を検討することが重要です。
贈与 | 譲渡 | |
メリット | ・贈与税額分の資金調達で取引が可能となる ・暦年課税による基礎控除、相続時精算課税による特例等を活用できる | ・譲渡代金分の手元資金が次の対策(有益な収益物件の取得、他の相続人への分割財産等)に活用できる ・分離課税のため一度に多額の譲渡を実行しても税率は一定である ・他の株式の譲渡損失と譲渡益との相殺ができる |
デメリット | ・贈与税額分は資金流出する ・他の相続人の遺留分の問題に発展する可能性がある ・段階税率となっているため一度に多数の株式を移転する場合、高額な税金となる可能性がある | ・譲渡税額分は資金流出する ・後継者に資全調達力が必要である ・株式が譲渡代金に代わるためオーナーの財産は減少しない |
贈与による移転、譲渡による移転、いずれにも長所・短所があり、どちらが有利とすることは一概にはいえません。事業承継計画の全体像の中で検討することが重要です。
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