調整対象固定資産 消費税の仕組み
固定資産等に係る消費税額について、その用途や課税売上割合だけで仕入税額控除を完結させると、用途変更をした場合や課税売上割合が大きく変動した場合に、その実態が大きくずれてしまうおそれがあります。
そこで、一定の調整対象固定資産について、
(イ)一定期間における課税売上割合が著しく変動した場合
(ロ)一定期間にその調整対象固定資産の用途を課税業務用から非課税業務用に変更した場合、あるいは非課税業務用から課税業務用に変更した場合
には、控除する仕入税額の調整を行うこととしています。
【目次】
1.調整対象固定資産の範囲
調整対象固定資産とは、次に掲げる資産をいいます。
【調整対象固定資産の範囲】
棚卸資産以外の資産で、建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権等の無形固定資産その他の資産のうち、その資産の税抜の取得価額が一取引単位につき100万円以上のものをいいます。
(注1) 付随費用の取扱い
その資産が調整対象固定資産に該当するかどうかを判定する場合の取得価額には、その資産の購入のために要する引取運賃、荷役費等のその資産を事業の用に供するために必要な付随費用は含まれません。
(注2) 一の取引の判定単位
一の取引の判定単位については、例えば、機械及び装置にあっては1 台又は1基、工具、器具及び備品にあっては1 個、1 組又は1 そろい、構築物のうち例えば枕木、電柱等単体では機能を発揮できないものにあっては、社会通念上一の効果を有すると認められる単位ごとに判定します。
いわゆる固定資産が対象になりますから、販売用不動産などの棚卸資産については、たとえ建物であっても調整対象固定資産には該当しません。
また、課税仕入れを前提としていることから、土地などの非課税資産については、調整対象固定資産には該当しません。
なお、調整対象固定資産の範囲には、会計上、固定資産として取り扱わないような次に掲げる資産も含まれるので注意する必要があります。
【固定資産に準ずる資産】
(1) 回路配置利用権
(2) 預託金方式のゴルフ会員権
(3) 課税資産を賃借するために支出する権利金等
(4) 著作権等
(5) 他の者からのソフトウエアの購入費用又は他の者に委託してソフトウエアを開発した場合におけるその開発費用
(6) 書画・骨とう
2.調整対象固定資産を取得した場合の特例
調整対象固定資産を取得した場合の特例が適用されるケースには、二つのパターンがあります。
どちらのパターンにおいても、原則として、その調整対象固定資産を取得した課税期間から三年目の課税期間( 以下「第三年度の課税期間」と記載します。)までは課税事業者となり、かつ、簡易課税制度を選択することができません。
したがって、調整対象固定資産を取得した課税期間から第三年度の課税期間までは、本則課税による確定申告が強制されることになります。
なお、自動販売機設置による還付スキームの対抗策として、第三年度の課税期間において「調整対象固定資産に関する仕入控除税額の調整」を適用させるために改正されたものです。
しかし、前述したように、条件さえ当てはまってしまえば調整対象固定資産を取得した場合の特例が適用されることになりますので注意が必要です。
【特例が適用されるケース】
(1) 課税事業者を選択した事業者が、本来の課税事業者の強制適用期間中に調整対象固定資産を取得した場合
(2) 資本金1,000万円以上で設立された新設法人又は特定新規設立法人が、その基準期間がない事業年度(設立1期目又は2期目)において調整対象固定資産を取得した場合
3.課税事業者を選択した場合
3-1.内容
免税事業者が課税事業者選択届出書を提出し、その本来の課税事業者たる拘束期間中に調整対象固定資産を取得した場合には、課税事業者選択不適用届出書の提出が制限されます。
この結果、原則として調整対象固定資産を取得した課税期間から第三年度の課税期間までは強制的に課税事業者として拘束されることになります。
また、この場合には、簡易課税制度選択届出書の提出が制限され、原則として調整対象固定資産を取得した課税期間から第三年度の課税期間までは簡易課税制度を適用することができません。
(注1) 課税事業者選択不適用届出書の提出制限
調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3 年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、課税事業者選択不適用届出書を提出することができません。
(注2) 簡易課税制度選択届出書の提出制限
調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3 年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、簡易課税制度選択届出書を提出することができません
3-2.届出書が無効とされる場合
課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者を選択したとしても、調整対象固定資産の取得がなければ課税事業者選択不適用届出書や簡易課税制度選択届出書の提出制限はもちろんかかりません。
ただし、課税事業者選択不適用届出書や簡易課税制度選択届出書を提出した後、同一課税期間中に調整対象固定資産を取得した場合には、いったん受理されたこれらの届出書が無効となる場合がありますので注意してください。
3-3.適用時期
この改正は、平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出する事業者の平成22年4月1日以後に開始する課税期間について適用されます。
4.新設法人の場合
4-1.内容
資本金1,000万円以上で設立された新設法人が、その基準期間がない設立1期目又は設立2期目において調整対象固定資産を取得した場合には、原則として調整対象固定資産を取得した課税期間から第三年度の課税期間までは強制的に課税事業者として拘束されることになります。
また、この場合には、簡易課税制度選択届出書の提出が制限され、原則として調整対象固定資産を取得した課税期間から第三年度の課税期間までは簡易課税制度を適用することができません。
なお、特定新規設立法人についても同様の取り扱いとなります。
(注1) 課税事業者として拘束される期間
調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間からその課税期間の初日以後3 年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、その納税義務は免除されません。
(注2) 簡易課税制度選択届出書の提出制限
調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3 年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ簡易課税制度選択届出書を提出することができません。
4-2.届出書が無効とされる場合
資本金1, 000万円以上で設立された新設法人の設立1期目又は設立2期目において調整対象固定資産の取得がなければ、第三年度の課税期間まで課税事業者として拘束されることはありませんし、簡易課税制度選択届出書の提出制限もかかりません。
ただし、簡易課税制度選択届出書を提出した後、同一課税期間中に調整対象固定資産を取得した場合には、いったん受理されたこの届出書が無効となる場合がありますので注意が必要です。
なお、簡易課税制度を設立1期目から適用する場合には、設立1期目の期末までに簡易課税制度選択届出書を提出する必要がありますが、この場合には、たとえその設立1期目に調整対象固定資産を取得したとしても簡易課税制度選択届出書を提出することはできます。
また、その簡易課税制度を適用している課税期間において調整対象固定資産を取得したとしても、課税事業者としての拘束期間は延長されません。
(注) 簡易課税制度を設立1期目から適用する場合も設立2 期目から適用する場合も、簡易課税制度選択届出書の適用開始課税期間の欄に必ず日付けを記入するようにしましょう。
4-3.適用時期
この改正は、平成22年4月1日以後に資本金1,000万円以上で設立された新設法人について適用されます。
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