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相続があった場合 消費税の仕組み


【目次】

相続があった場合の消費税の取扱いは、次のようになっています。

1.小規模事業者の納税義務の免除

免税事業者である相続人が被相続人の事業を引き継いだ場合には、小規模事業者の納税義務の免除の規定について次の取扱いがあります。

相続のあった年相続人の基準期間の課税売上げが1,000万円を超える場合には、相続のあった日の翌日からその年12月31日までの期間については小規模事業者の納税義務の免除の規定の適用はありません。
相続のあった年の翌年と翌々年相続人の基準期間の課税売上高と、相続人の基準期間に対応する被相続人の課税売上高として一定の方法により計算した金額の合計額が1,000万円を超える場合には、それぞれの年について小規模事業者の納税義務の免除の規定の適用はありません。


2.届出書の効力

被相続人が生前、税務署に対し「課税事業者選択届出書」「簡易課税制度選択届出書」「課税期間特例選択届出書」を提出していた場合であっても、その効力は被相続人の事業を承継した相続人には及びませんが、これらの届出書はいずれも事業を開始した日の属する課税期間に提出があった場合を除き、提出のあった課税期間の翌課税期間から効力が生ずるため、被相続人の事業を引き継いで、これらの届出書の提出が必要になった場合には不具合が生じることになります。

そこで、相続という予測不可能な事態を想定して、これらの届出書の効力発生日について次のような規定が設けられています。

免税事業者である相続人が、相続により、課税事業者選択届出書の提出をしている被相続人の事業を引き継いだ場合でその引継ぎのあった課税期間に課税事業者選択届出書を提出した場合にはその提出のあった日の属する課税期間からその効力が生じることとなります。
相続人が、相続により簡易課税制度選択届出書の提出をしている被相続人の事業を引き継いだ場合でその引継ぎのあった課税期間に簡易課税制度選択届出書を提出した場合にはその提出のあった日の属する課税期間からその効力が生じることとなります。ただし、相続人が被相続人から事業を引き継ぐ以前から課税事業者である場合にはこの規定の適用はありません。
個人事業者である個人が、相続により、課税期間特例選択届出書の提出をしてぃる被相続人の事業を引き継いだ場合でその引継ぎのあった課税期間に課税期間特例選択届出書を提出した場合にはその提出のあった日の属する課税期間から効力が生じることとなります。


3.確定申告書の提出

課税事業者である被相続人がその年分に係る消費税の確定申告書を提出せずに亡くなった場合には、その被相続人の事業を引き継いだ相続人は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過する日までに、通常の消費税額の計算に係る事項のほか、その相続によって得た財産の価格等を記載した消費税の確定申告書を、被相続人の納税地の所轄税務署へ提出し、納税額がある場合には、納付を行わなければなりません。この4か月というのは、所得税の準確定申告書の提出期限と同様です。

4.申告義務の承継

相続があった場合には、相続人は被相続人の次に掲げる義務を承継します。

1.中間申告及び確定申告の義務
2.帳簿の記録及び保存の義務

5.資産の譲渡等の時期の特例

長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例及び工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例の適用を受ける個人事業者が死亡した場合において、その相続に係る相続人が延払基準の方法により経理することとしている場合又はその工事の目的物の引渡しを行った場合には、これらの特例を適用することとされています。

6.仕入れに係る対価の返還等を受けた場合

相続により被相続人の事業を承継した相続人が被相続人により行われた課税仕入れにつき、仕入れに係る対価の返還等(値引き、割戻し、債務の減額など)を受けた場合には、その相続人が行った課税仕入れにつき仕入れに係る対価の返還等を受けたものとみなされます。

7.売上げに係る対価の返還等を行つた場合

相続により被相続人の事業を承継した相続人が、被相続人により行われた課税資産の譲渡等につき、売上げに係る対価の返還等(値引き、割戻し、債権の減額など)をした場合には、その相続人が行った課税資産の譲渡等につき売上げに係る対価の返還等を行ったものとみなされます。

8.貸倒れに係る消費税額の控除

相続により被相続人の事業を承継した相続人について、被相続人が行った課税資産の譲渡等に係る売掛金その他の債権につき、その相続があった日後に貸倒れの事実が生じたときは、その相続人が行った課税資産の譲渡等に係る売掛金その他の債権につき貸倒れの事実が生じたものとみなされます。

9.貸倒れ債権の回収をした場合

相続により被相続人の事業を承継した相続人について、被相続人が行った課税資産の譲渡等に係る売掛金その他の債権で貸倒れの事実が生じているものについて、全部又は一部の回収をした場合には、その相続人が行った課税資産の譲渡等に係る売掛金その他の債権で貸倒れの事実が生じているものについて全部又は一部の回収をしたものとみなされます。

10.調整対象固定資産に係る消費税額の調整

課税売上割合が著しく変動した場合の調整対象固定資産に関する仕入れに係る消費税額の調整及び調整対象固定資産を転用した場合の仕入れに係る消費税額の調整の規定は、相続により被相続人のその調整対象固定資産に係る事業を承継した相続人について適用されます。

11.納税地

個人事業者が死亡した場合には、その死亡した者の資産の譲渡等に係る消費税の納税地は、その相続人の資産の譲渡等に係る消費税の納税地によらず、その死亡当時におけるその死亡した者の資産の譲渡等に係る消費税の納税地となります。

12.個人事業者が死亡した場合の死亡届出書の提出義務

個人事業者が死亡した場合には、その死亡した個人事業者の相続人は、その旨を記載した届出書を速やかにその納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

13.12月中に相続があった場合

相続があった場合の各種届出書の効力が生ずる日は、基本的に事業を開始した課税期間に提出を行った場合と同じです。

しかし、実務上、12月に相続が開始した場合には各種届出害の提出が翌年になってしまうことが多く、この場合において通常の規定を適用してしまうと届出書の効力が生ずる年は、相続があった年の翌々年(各種届出書の効力発生日は提出のあった日の属する課税期間の翌課税期間となる)となってしまいます。

そこで、12月中に相続があった場合には、届出書の提出期限に間に合わないことについてやむを得ない事情があるものとし、翌年2月末までに各種届出書の提出があった場合にはこれを相続があった年において提出があったものとみなすこととしています。

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