資産の譲渡等の時期 消費税の仕組み
【目次】
資産の譲渡等があった日の判定は、法人税や所得税の課税所得金額の計算における収益の計上の時期とほぼ同じく、次のように定められています。
1.棚卸資産の譲渡の時期
原則 | 棚卸資産の譲渡の時期は原則、その引渡しがあった日となりますが、その引渡しがあった日がいつであるかは、たとえば出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針日等により販売数量を確認した日等、その棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じてその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち、事業者が継続して棚卸資産の譲渡を行ったこととしている日とされます。 |
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委託販売 | 棚卸資産の委託販売に係る委託者における資産の譲渡をした日は、その委託品について受託者が譲渡した日とされます。 ただし、その委託品に係る売上計算害が売上げの都度(受託者が週、旬、月を単位として一括して売上計算書を作成しているときもこれに該当します)作成されている場合において、事業者が継続してその売上計算書の到着した日を棚卸資産の譲渡をした日としているときは、これが認められます。 |
2.固定資産の譲渡等の時期
原則 | 固定資産の譲渡の時期は原則、その引渡しがあった日とし、引渡しがあった日の判定については先の棚卸資産の引渡しの日の判定に準じます。 ただし、その固定資産が土地、建物その他これらに類する資産の場合で、事業者がその固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは、これが認められます。 |
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工業所有権等の譲渡 | 工業所有権等(特許権、実用新案権、意匠権及び商標権並びにこれらの権利に係る出願権及び実施権をいう)の譲渡又は実施権の設定については、その譲渡又は設定に関する契約の効力発生日(その譲渡又は設定に関する契約の効力が登録により生ずることとなっている場合で、事業者がその登録日によっているときはその登録日)に行われたものとされます。 |
ノウハウの頭金等の譲渡 | ノウハウの設定契約に際して支払を受ける一時金又は頭金を対価とする資産の譲渡等の時期は、そのノウハウの開示を完了した日とされます。 ただし、ノウハウの開示が2回以上にわたって行われ、かつ、その一時金又は頭金の支払がほぼこれに見合って分割して行われることとなっている場合には、その開示をした日ごとに資産の譲渡があったものとされます。 |
3.有価証券の譲渡の時期
原則 | 有価証券の譲渡の時期は、原則として、その引渡しがあった日(証券が発行されていない場合はその譲渡の意思表示があった日)とされます。 また、法人が有価証券を譲渡した場合の資産の譲渡の時期についてその譲渡に係る契約をした日としている場合には、その契約をした日とされます。 |
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株式の信用取引等 | 事業者が金融商品取引法第161条の2第1項信用取引等における金銭の預託の規定による信用取引又は発行日取引の方法により株式の売付けを行った場合におけるその売付けに係る株式の譲渡の時期は、当該売付けに係る取引の決済を行った日とされます。 |
4.利子、使用料等を対価とする資産の譲渡の時期
貸付金利子等を対価とする資産の譲渡等の時期 | 貸付金等(貸付金、預金、貯金又は有価証券など)から生ずる利子の額は、その利子の計算期間の経過に応じてその課税期間に係る金額をその課税期間の資産の譲渡等の対価の額とされます。 |
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使用料等を対価とする資産の譲渡等の時期 | 資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る金額を除く)を対価とする資産の譲渡等の時期は、その契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とされます。 |
5.長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例
事業者が資産の長期割賦販売や延払条件付販売等に該当する課税資産の譲渡を行い、長期割賦販売等に係る対価の額を所得税法又は法人税法上の延払基準の方法により経理することとしているときは、それぞれの課税期間におけるその支払期日の到来しない賦払金部分(その課税期間において支払を受けたものを除きます)については、その課税期間において資産の譲渡等を行わなかったものとみなして、その部分に係る対価をその課税期間における売上げから控除することができます。
なお、長期割賦販売等をした日の属する課税期間において、課税資産の譲渡等を行わなかったものとした部分は、その長期割賦販売等に係る賦払金の支払期日の属する各課税期間において、それぞれの賦払金に係る部分の資産の譲渡等を行ったものとされます。
この場合の長期割賦販売等又は延払条件付販売等とは、次の要件に適合する条件を定めた契約に基づいて行われる資産の販売もしくは譲渡、工事(製造を含み長期大規模工事に該当するものを除きます)の請負又は役務の提供をいいます。
1.月賦、年賦等の賦課の方法により3回以上に分割して対価の支払を受けること
2.その資産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の期日の翌日から最後の賦払金の支払期日までの期間が2年以上であること
3.その資産の販売等の目的物の引渡しの期日までに支払の期日が到来する賦払金の合計額が、その資産の販売等目的物の対価の額の3分の2以下となっていること
資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合の注意点
長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例の適用を受ける事業者が、免税事業者から課税事業者へ変わる場合又は課税事業者から免税事業者へ変わる場合には、その変わることとなった課税期間の初日の前日以前に行った長期割賦販売等に係る賦払金の額で、その変わることとなった課税期間の初日以降に支払期限が到来するもの(既に支払を受けたものを除く)については、その変わることとなった課税期間の初日の前日において資産の譲渡等を行ったものとみなされます。
6.工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例
事業者が行った工事の請負について工事進行基準の方法により経理している場合には工事着手の日の属する課税期間から引渡しの日の属する課税期間の直前の課税期間までの各課税期間において資産の譲渡等を行ったものとされた部分についてはそれぞれの課税期間において資産の譲渡等を行ったものとみなし、引渡しの日の属する課税期間においてはすでに資産の譲渡等を行ったものとした部分をその工事の請負対価の合計額から控除する計算を選択することができます。
なお、消費税法においては、所得税法及び法人税法に規定する工事進行基準の方法による経理を前提として資産の譲渡等の時期の特例の適用を認められていますが、消費税におけるこの特例の適用はあくまで事業者の任意であるため、所得税法及び法人税法における特例の適用(工事進行基準)を受ける場合であっても、工事の請負に係る資産の譲渡等の時期をその引渡しのあった日とすることを選択することができます。
資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合の注意点
工事の請負に係る対価につき工事進行基準の適用を受けている事業者については、課税事業者から免税事業者へ変わった場合又は免税事業者から課税事業者へ変わった場合であっても、何ら調整を行いません。
7.小規模事業者に係る現金主義会計の特例
所得税法上の現金主義による会計処理が認められている青色申告の小規模事業者(前々年分の事業所得の金額と不動産所得の金額の合計額で青色専従者給与又は事業専従者控除額を引く前の金額が300万円以下の者のうち、この規定の適用を受ける旨の届出書を提出している者をいいます)については、消費税法においても、資産の譲渡等及び課税仕入れを行った時期は、その資産の譲渡等に係る対価の額を収入した日及びその課税仕入れに係る費用の額を支出した日とすることができます。
ただし、所得税の計算について現金主義会計の規定を適用している場合であっても、小規模事業者が行った全ての資産の譲渡等、課税仕入れの時期につき引渡しがあった日によることも認められます。
資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合の注意点
小規模事業者の現金主義会計の特例の適用を受けている個人事業者で所得金額が増加した場合、消費税の免税事業者になったことなどにより現金主義会計の特例を受けることができなくなった場合には、その特例の適用を受けないこととなった課税期間の初日の前日に有していた売掛金、買掛金等の債権債務と、当初、現金主義会計の適用を受けることとなった課税期間の初日に有していた売掛金、買掛金等の債権債務の差額について調整を行うこととなります。
8.その他の資産の譲渡等の時期
物品切手等と引換給付する場合の譲渡等の時期 | 物品切手等と引換えに、物品の給付又は役務の提供を行う場合には、その物品切手等が自ら発行したものであるか他の者が発行したものであるかにかかわらず、その引換え又は役務の提供を行うときにその引換え又は役務の提供に係る資産の譲渡等を行ったこととなります。 |
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保証金等のうち返還しないものの額を対価とする資産の譲渡等の時期 | 資産の賃貸借契約等に基づいて保証金、敷金等として受け入れた金額であっても、その金額のうち期間の経過その他その賃貸借契約等の終了前における一定の事由の発生により返還しないこととなった日の属する課税期間において行った資産の譲渡等に係る対価となります。 |
法人の設立期間中の資産の譲渡等・課税仕入れの時期 | 法人の設立期間中にその設立中の法人が行った資産の譲渡等及び課税仕入れは、その法人のその設立後最初の課税期間における資産の譲渡等及び課税仕入れとすることができます。 ただし、設立期間が、その設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合のその設立期間中の資産の譲渡及び課税仕入れや個人事業者が法人成りした場合の個人事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れについては、資産の譲渡等及び課税仕入れを行った日の属する課税期間の資産の譲渡等及び課税仕入れとなります。 |
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