トップ > 相続の教科書 > 民法 > 同時死亡の推定と相続開始の場所

同時死亡の推定と相続開始の場所


目次

1.同時死亡の推定とは

相続の基本的な考え方として、被相続人と相続人は相続開始の時にともに生存していなければならないという「同時存在の原則」というものがあります。

一方、相続の当事者となる父と子、祖父母と代襲相続人である孫などが飛行機事故や海難事故などの同一危難に遭って死亡する場合などがあります。

このような場合、その死亡の順位によって相続人が変わることがあることから、民法では、数人が同一の危難に遭って死亡したときは、これらの者は同時に死亡したものと推定しこれらの者相互間では相続は開始しないこととされています。

これを「同時死亡の推定」といいます(民法32の2)。

そうすると、同時存在の原則との関係から、相続の当事者がこの同時死亡の推定を受けると、一方の相続開始の時に他方は既に死亡していると推定される(例:親と子が同一危難に遭遇して死亡した場合、親と子が同時死亡の推定を受けると親が死亡した時には既に子は死亡していると推定される)から、死亡者である親と子相互間には相続が開始しないこととなります。

ただし、親子が同時死亡の推定を受けるときにおいて、死亡した子に子(孫)がいればその死亡した子の子(孫)がその死亡した子を代襲して相続することができることとなっています(民法887②)。


2.相続開始の場所とは

相続は、被相続人の住所において開始する(民法883)とされており、この相続開始の場所とは、相続が開始した場合における被相続人から相続人への権利義務関係の移転、承継を生ずる場所をいい、相続関係事件の裁判管轄を定め、また相続財産の所在場所などの判定基準にかかわるものです。

なお、被相続人が自己の住所地以外の場所で死亡した場合や相続財産が被相続人の住所地以外に所在する場合であっても死亡時の住所が相続開始の場所とされます。


3.相続税法との関係は?

相続開始の場所は、通常被相続人の住所地であり、相続税の課税対象となる財産の所在地の判定及び相続税の申告書の提出先と次のような関係があります。


3-1.財産の所在

相続税の納税義務者のうち外国に住所がある者(制限納税義務者といいます。)の課税財産は、相続開始の時に日本国内に所在するものとなっています。

そこで制限納税義務者の相続税の課税対象となる財産の所在の判定が必要となりますので、制限納税義務者の取得財産が日本国内にあるかどうかの判定も含めてそれぞれの財産ごとにその所在地が定められています(相法10)が、被相続人の財産のうちその所在地が相続税法第10条第1項及び第2項に定められていないものの所在地は被相続人の住所地にあるものとされます(相法10③)。

なお、相続税法10条では、下記のように規定しています。

第十条  次の各号に掲げる財産の所在については、当該各号に規定する場所による。
一  動産若しくは不動産又は不動産の上に存する権利については、その動産又は不動産の所在。ただし、船舶又は航空機については、船籍又は航空機の登録をした機関の所在
二  鉱業権若しくは租鉱権又は採石権については、鉱区又は採石場の所在
三  漁業権又は入漁権については、漁場に最も近い沿岸の属する市町村又はこれに相当する行政区画
四  金融機関に対する預金、貯金、積金又は寄託金で政令で定めるものについては、その預金、貯金、積金又は寄託金の受入れをした営業所又は事業所の所在
五  保険金については、その保険(共済を含む。)の契約に係る保険会社等(保険業又は共済事業を行う者をいう。第五十九条第一項において同じ。)の本店又は主たる事務所(この法律の施行地に本店又は主たる事務所がない場合において、この法律の施行地に当該保険の契約に係る事務を行う営業所、事務所その他これらに準ずるものを有するときにあつては、当該営業所、事務所その他これらに準ずるもの。次号において同じ。)の所在
六  退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(政令で定める給付を含む。)については、当該給与を支払つた者の住所又は本店若しくは主たる事務所の所在
七  貸付金債権については、その債務者(債務者が二以上ある場合においては、主たる債務者とし、主たる債務者がないときは政令で定める一の債務者)の住所又は本店若しくは主たる事務所の所在
八  社債(特別の法律により法人の発行する債券及び外国法人の発行する債券を含む。)若しくは株式、法人に対する出資又は政令で定める有価証券については、当該社債若しくは株式の発行法人、当該出資のされている法人又は当該有価証券に係る政令で定める法人の本店又は主たる事務所の所在
九  法人税法第二条第二十九号 (定義)に規定する集団投資信託又は同条第二十九号の二 に規定する法人課税信託に関する権利については、これらの信託の引受けをした営業所、事務所その他これらに準ずるものの所在
十  特許権、実用新案権、意匠権若しくはこれらの実施権で登録されているもの、商標権又は回路配置利用権、育成者権若しくはこれらの利用権で登録されているものについては、その登録をした機関の所在
十一  著作権、出版権又は著作隣接権でこれらの権利の目的物が発行されているものについては、これを発行する営業所又は事業所の所在
十二  第七条の規定により贈与又は遺贈により取得したものとみなされる金銭については、そのみなされる基因となつた財産の種類に応じ、この条に規定する場所
十三  前各号に掲げる財産を除くほか、営業所又は事業所を有する者の当該営業所又は事業所に係る営業上又は事業上の権利については、その営業所又は事業所の所在
2  国債又は地方債は、この法律の施行地にあるものとし、外国又は外国の地方公共団体その他これに準ずるものの発行する公債は、当該外国にあるものとする。
3  第一項各号に掲げる財産及び前項に規定する財産以外の財産の所在については、当該財産の権利者であつた被相続人又は贈与をした者の住所の所在による。
4  前三項の規定による財産の所在の判定は、当該財産を相続、遺贈又は贈与により取得した時の現況による。



3-2.相続税の申告書の提出先はどこ?

相続税の納税地は、原則として納税義務者の住所地によることとされています(相法62)が、被相続人の死亡当時の住所地が国内にあるときは、相続税の納税地は、被相続人の住所地とされています。

相続人により東西南北ばらばらに暮らしている方も多いと思います。そのような場合、相続人の所轄税務署にそれぞれ申告書を提出するのではなく、被相続人の所轄税務署にみんなで提出すればよいのです。

【業務に関するご相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。】

03-6454-4223
電話受付時間 (日祝日は除く)
平日 9:00~21:00
土曜日9:00~18:30

info@suztax.com
24時間受付中