遺贈とは
目次
1.遺贈とは
遺贈は、遺言により無償で財産的利益をあげることであり、包括遺贈と特定遺贈の2つがあります。
この遺贈は贈与に似ているのですが、贈与が贈与者の生前行為で、受贈者との契約であるのに対して、遺贈は死後に効力を生ずる死後行為であり、遺言者の一方的意思によって効力を生ずる単独行為である点が異なります。
なお、遺言者を遺贈者といい、遺贈の利益を受ける者を受遺者といいます。
また、受遺者は遺贈者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができ、その効力は遺言者の死亡の時に遡ります。相続放棄は3か月後なので、相続放棄とは期間が異なることとなります。
民法では、遺言者の終意を尊重し、その実現を保障する制度として遺言を認めています。
遺言の制度は、次の事項について、遺言者の死後の法律関係が遺言に定められたとおりに実現することを法的に保障する制度といわれています。
【遺産処分に関する行為】
- 遺贈
- 寄附行為
- 相続分の指定又はその委託
- 持戻し免除の意思表示
- 遺産分割方法の指定又はその委託
- 遺産分割の禁止
- 相続人相互間の担保責任
- 遺留分減殺方法の指定
【その他の行為】
- 推定相続人の廃除又はその取消し
- 親子関係の認知
- 未成年後見人及び未成年後見監督人の指定
- 遺言執行者の指定又はその委託
2.遺言の効力発生時期
遺言の効力は、遺言者の死亡の時に生じます。
これに対して、停止条件付の遺贈については、その条件が遺言者の死亡前に成就していれば、遺言者の死亡の時から無条件にその効力を発生します。
しかしその条件が遺言者の死亡後に成就した場合には、遺贈の効力は、その条件が成就した時に生じます。
2-1.遺言の効力発生時期
遺言の効力発生の時期は次のとおりです
- (イ)一般の遺贈 遺言者死亡の時
- (ロ)停止条件付遺贈 条件成就の時
2-2.特定受遺者の放棄
遺贈は、遺贈者の死亡時にその死亡について受遺者が知ってても知らなくても、またその意思とは関係なく、当然に効力が生じます。
しかし、受遺者について特定遺贈による財産の取得について選択権を認めることが必要ですので、受遺者は遺贈者の死亡後いつでも、特定遺贈を放棄することができます。
そして、放棄についての方式には特別の方式はなく、通常の意思表示によって行うことでよく、また期間の制限もありません。
なお、特定遺贈について承認又は放棄をした後は、これを取り消すことはできません。
2-3.包括受遺者の権利義務
包括受遺者は、遺産の全部又は定割合を受けることとなりますので、相続人と同一の権利義務を有することとされています。
包括遺贈は、遺贈者の財産に属した権利義務の全部又は一部を包括的に承継することから、相続と同じく積極財産を承継するとともに債務(消極財産)も負担することとなり、包括遺贈の承認又は放棄の手続も相続と同じく、自己のために包括遺贈があったことを知った時から3力月以内に承認又は放棄をしなければならないなど相続人に関する規定が適用されます。
3.遺贈の種類
遺贈には、特定遺贈と包括遺贈があり、その内容は次のとおりです。
3-1.特定遺贈
特定遺贈とは、遺言により無償で遺産に含まれる特定財産を譲与する遺贈のことをいい、特定遺贈を受けた者を特定受遺者といいます。
特定遺贈は、遺言の性質のから考えると、遺言の効力が生ずれば、受遺者の承諾があるかないかに関係なく財産処分の効力が生じます。
特定受遺者は遺言者の死亡後いつでも放棄できることができ、期間の制限はありません。
また、遺贈の放棄の効力は遺言者の死亡の時に遡及します。
3-2.包括遺贈
包括遺贈とは、遺言による無償で遺産の全部又は一定割合の譲与を目的とした遺贈をいい、包括遺贈を受けた者を包括受遺者といいます。
この包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することとされています。
- 相続の承認
- 相続放棄
- 遺産分割
などの規定は包括受遺者に適用されますが、
- 代襲相続
- 遺留分
など相続人の固有の権利に属する規定は適用されません。
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