遺産分割
目次
1.遺産分割
相続の開始によって被相続人の遺産は相続人に承継されますが、相続人が数人いるときは、各共同相続人が遺産をそれぞれの相続分に応じて共有するにとどまります。
このような共有の状態にある遺産に属する物又は権利をその種類、性質、各相続人の年齢、職業その他一切の事情を考慮して各相続人に帰属させることが遺産分割です。
2.遺産分割の内容
民法によれば「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、城業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と規定されています。
遺産分割は相続分に応じて単に機械的・形式的に公平な分割をするのではなく、共同相続人間に実質的・具体的に、公平、かつ、合理的に分配されるべきものとされています。
ですから、遺産の分割は、相続財産の種類を考慮し、また相続人が事業又は家業を承継するかどうか、さらに年少者・老年者、心身に障害があるかどうか、居住用不動産の確保が必要かどうかなど事情を考慮して、相続人間に具体的に公平に行われ、かつ相続財産が社会的にも有用となるよう、また経済的な機能、価値が最も有機的に発揮されるよう行われることが望ましいといわれています。
3.遺産分割の実行
遺産の分割は、遺言によって分割が禁止されている場合を除いて、いつでも分割することができます。
しかし、相続人の中に未成年者、障害者等がいる場合における養育費、療養費等の負担を考慮して、遺言による指定分割若しくは指定の委託による分割又は共同相続人間の遺産分割について民法では遺言で5年以内の間遺産の分割を禁止することができることとなっています。
遺産分割は共同相続人全員でいつでも実行できるのが、共同相続人間で遺産分割の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に分割の請求をすることができます。
4.分割方法
分割方法には、次の3つがあります。
4-1.現物分割
現物分割とは通常の共有物の分割のように、個々の物それぞれを分割するものをいいます。
このほか、このような狭義の現物分割だけではなくて、集合財産である遺産を包括的体とみて、遺産に属する財産をそのまま分割する広義の現物分割を含めて現物分割といいます。
4-2.換価(価額)分割
換価(価額)分割とは、遺産を構成する財産を金銭に換価し、その価格を分割する方法です。
4-3. 代償分割(債務負担の方法による分割)
代償分割とは、共同相続人のうちの1人又は数人が遺産に属する現物の一部又は全部を取得し、その現物を取得した者が他の相続人に対して債務を負担する方法をいいます。
なお、遺産分割に当たっては、次の条件を整えることが必要です。
- 共同相続人又は包括受遺者が確定していること
遺産分割協議時点で、相続人となるべき者に行方不明者がいる場合、相続人となるべき者に胎児がいる場合又は認知の訴え、相続人の廃除等相続人の身分又は資格が争われている場合などにおいては、相続人が確定しているとはいえないので原則として分割協議は無効です。
- 相続分が確定していること。
- 遺産が確定していること
- 遺産分割が禁止されていないこと
5.相続税法との関係は?
相続税法における分割は、相続開始後において相続又は包括遺贈により取得した財産を現実に共同相続人又は包括受遺者に分属させることをいいます。
その分割の方法が現物分割、代償分割若しくは換価分割であるか、又はその分割の手続が協議,調停若しくは審判による分割のいずれかであるかを問いません。
相続又は包括遺贈により取得した財産が一定の期限(相続税の申告書の提出の時又は相続税について更正若しくは決定をする時)までに分割が実行された場合は「分割遺産」となり、その期限までに遺産の全部又は一部が分割されていない遺産は「未分割遺産」となります。
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