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相続の放棄


財産承継を本質とする相続法では、被相続人の財産に属していたすべての権利義務は相続の開始により包括的に相続人に承継されることとされています。

この財産承継について、相続人はこの承継を全面的に承認するか、条件付きで承認するか、全面的に拒否するかのいずれかを選択することができることになっています。

これらの選択のための熟慮期間として民法では3力月という期間を設け、この期間内にその選択をすることとされており、全面的承認を単純承認、条件付承認を限定承認、全面的拒否を放棄といいます。

目次

1.相続の放棄とは

相続の放棄とは、相続人の地位にある者が被相続人からの財産承継である相続を全面的に拒否することをいい、自己の相続に関して初めから相続人とならなかったとみなされることを欲する意思表示のことをいいます。(民法938、939)


2.相続放棄の手続とは

相続放棄は要式行為なので、放棄の意思は熟慮期間(相続の開始から3力月内に家庭裁判所に申述しなければなりません。

なお、相続放棄は、限定承認とは異なり共同相続の場合でも各相続人単独で申述することができます。限定承認の場合は、相続人みんなで申述する必要があります。


3.相続放棄の効果

相続の放棄者は、初めから相続人でなかったとみなされることから、放棄者の子は放棄者を代襲して相続することができません。

また、血族相続人である同順位の相続人の全員が相続放棄をすると相続順位が変更されることがあります。

さらに、相続放棄により相続人が誰もいなくなるということがあります。

身分関係が重複する相続人、例えば代襲相続人としての孫で、かつ、養子である者のように同順位で身分が重複している場合や被相続人の弟で、かつ、養子のように異順位で身分関係が重複している場合において、その者が相続を放棄したときには、同順位・異順位を問わずその放棄はすべての資格に及ぶとするのが先例です(法務省民事局参事官室昭和32年1月10日回答)


4.相続税法との関係は?

現行の相続税は、相続又は遺贈により財産を取得した者を納税義務者とし、その取得財産を課税標準として課税する遺産取得課税方式を採用しています。

その負担すべき税額は、相続又は遺贈により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格を合計し、この合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した金額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものとした場合の相続税の総額を各人に按分することにより計算することとされています(相法15~17)。

この各人の税額の基礎となる相続税の総額は、「法定相続人」をべースとして計算することとされているのですが、この法定相続人とは民法第5編第2章の規定による相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)とされています。(相法19の3)

民法第5編第2章は、被相続人について相続が開始した場合において、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すべき相続資格を有することとなる相続人と相続権喪失により相続人になれない欠格及び廃除に関する事項を規定していて、これらの規定により相続人となれる者を確定させることとしており、相続資格が確定した後の相続の承認及び放棄を考慮しないところの相続人について定めているのです。

民法の規定による相続人を相続税法では「法定相続人」といい、相続税の総額の計算、遺産に係る基礎控除額、死亡保険金に対する非課税及び死亡退職金に対する非課税の各制度の、計算の基礎としています。

一方、相続資格が確定した相続人になる者は、自己又は共同相続人全員の意思により相続するかどうかの選択をすることが認められており、その選択により相続人となるか相続人以外の者となるかが確定する相続の単純承認又は限定承認をした者は民法上相続人となり、相続の放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされることとなります。

そこで、相続を承認した者が相続人となるのですが、その相続を承認した者は相続税法においても相続人となります(相法3①)。

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