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相続を放棄した者とは
相続を放棄した者が相続税の課税対象となる財産のみなし取得財産を取得した場合について解説しています。
目次
1.相続を放棄した者とは
相続を放棄した者とは、民法に規定する期間内に民法の相続の放棄の方式の規定により家庭裁判所に申述して相続の放棄をした者(民法の相続の承認及び放棄の撤回及び取消しの規定により放棄の取消しをした者を除きます。)だけをいい、正式に放棄の手続をとらないで事実上相続により財産を取得しなかったにとどまる者はこれに含みません。
相続税法では、相続又は遺贈により取得したとみなされる財産として、
- 生命保険金
- 退職手当金等
- 生命保険契約に関する権利
- 定期金給付契約に関する権利
- 保証期間付定期金給付契約に関する権利
- 契約に基づかない定期金に関する権利
の6種類のみなし財産があります。
そして、これらの財産を取得した者が
- 相続人であるときは相続により
- 相続人以外の者であるときは遺贈により
取得したものとみなして相続税がかかります。
この場合、「相続人」には、相続を放棄した者及び相続権を失った者は含みません。
したがって、相続を放棄した者や相続権を失った者が、る生命保険金、退職手当金等を取得した場合、相続人が取得したことにはならないで相続人以外の者が取得したこととされ、遺贈により取得したものとみなされます。
2.相続放棄者は非課税の規定がない
相続人が相続により取得したものとみなされる生命保険金及び退職手当金等については、一定金額まで非課税とされることになっているのに対し、相続を放棄した者及び相続権を失った者は相続人に該当しないため、これらの者が遺贈により取得したものとみなされる生命保険金及び退職手当金等は、非課税の規定は適用されません。
このため、相続税法上、「相続を放棄した者」又は「相続権を失った者」に該当するかどうかは、非課税規定が使えるか使えないかで相続税額が大きく変わることがあるためとても重要な問題です。
ですから相続税法では、民法に定める手続に従い、正式に家庭裁判所に申述して相続を放棄した者だけをいうのです。
事実上相続を放棄した場合、例えば、家業を承継する者に相続財産の全部を取得させ、それ以外の者は相続財産を取得しないという方法で、共同相続人間において遺産分割協議が調ったという場合、その相続財産を取得しなかった者は、事実上「相続を放棄した者」と同じようにみえますが、このような者に対しては、被相続人の債権者は被相続人の債務について請求できることなど、法律的には、その者は「相続を放棄した者」に含まれませんので注意が必要です。
事実上本来の相続財産を取得しなかった者が、生命保険金や退職手当金等のみなし相続財産を取得した場合でも、相続人について適用される生命保険金や退職手当金等についての一定金額の非課税規定を適用することができますし、その者が被相続人の債務を承継した場合は、相続人や包括受遣者のみについて適用される債務控除の規定も適用することができます。