渡切交際費の活用 売上と費用関係の節税
【目次】
1.渡切交際費の活用
交際費は、大会社では、交際費を損金とすることがいっさい認められていませんが、資本金の額が1億円以下の中小企業では、その支出の一部は損金に算入することが認められています。
一方、給与については、役員に対する定期同額給与等は原則として損金算入、一般の従業員給料は無条件で損金算入とされています。
そこで、交際費の損金算入枠のない大法人等については、渡切交際費を活用して交際費課税に対応するという方法が考えられます。
「渡切交際費」は、給与として取り扱われることになっています。交際費のままで損金不算入となるよりは、渡切交際費として支給すれば損金に算入できるわけです。
税務も渡切交際費を認めていますので、交際費の損金算入枠のない法人はその利用を検討すべきものと思われます。
渡切交際費は給与ですから、その使途を明らかにする必要はありません。
使途を明らかにしなくても、使途不明金や使途秘匿金とされることももちろんありません。
2.交際費等と給与の区分
役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないものは、その役員等に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらし、その金額で毎月定額により支給される渡切交際費は定期同額給与になるものとされています。
また、従業員に対して支給される機密費、接待費、交際費、旅賀等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないものは、給与の性質を有するものとして交際費等には含まれないとされています。
法人の役員等は、種々の出費に備えて、あらかじめ仮払金等として法人より金銭の支出を受けておくことが少なくありません。
このような場合、支払い後に領収書等を添付して精算するというのが本来の方法ですが、精算されないものや、精算されてもその費途が不明なものや法人の業務には関係ないと認めら
れるものもあります。
このようなものはその支給された者が任意に処分することができるもの又は任意に処分したものですから、交際費等とは認められず、その役員等に対する給与とするというのが通達で明示されています。
3.認定給与、過大役員給与の問題
渡切交際費で、毎月定額で支給されないものは賞与とされ、それが役員に対して支給したものであれば、臨時の役員給与として損金不算入となります。
渡切交際費を役員に支給する場合は、毎月定額で支給する必要があります。
法人税通達でも毎月定額により支給される渡切交際費は報酬(定期同額給与)、それ以外は賞与(臨時の役員給与)となることとしています。
渡切交際費が毎月定額で支給される限り、費途不明等の金額に毎月異動があっても、その費途不明等の部分の金額も定期同額給与として取り扱われます。
なお、定期同額給与となる場合でも、過大役員給与に該当してしまうと、その過大部分は損金不算入となりますので注意が必要です。
また、渡切交際費のなかに会議費や旅費交通費として処理できるものがあっても、精算すべきではありません。
精算してしまうと、臨時の役員給与と認定されてしまう可能性があるのです。
渡切交際費を役員に支給すると認定給与や過大役員給与の問題が生じますので、渡切交際費は従業員に支給すべきです。
従業員に対する賞与は損金に算入されますので、従業員に支給する渡切交際費については、必ずしも毎月定額で支給する必要はありません。
また、支給額も全額損金に算入されます。
従業員であれば、渡切交際費のなかで会議費や旅費交通費などとして処理できるものは、精算して損金に算入しても問題はありません。
4.源泉所得税、消費税、個人の税負担の問題
渡切交際費は給与ですので、源泉所得税の対象になります。
また、給与は消費税の仕入税額控除の対象になりません。
交際費等としての支出であれば、課税仕入になることもありますが、給与であれば課税仕入となることはありません。
この点で渡切交際費は、法人税では有利となっても、消費税では不利となることがあります。
さらに、渡切交際費の支給を受けた役員等の所得税・住民税負担の問題もあります。
高額な給与の支給を受けている役員では、所得税等の負担が法人税等の負担よりも高くなるということもあります。
この点からも、渡切交際費は、経理部長、経理課長、営業部長、営業課長といった使用人に対して支給するのが税務上は有利となるわけです。
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