工事進行基準の適用 売上と費用関係の節税
【目次】
1.工事完成基準と工事進行基準とは
物の引渡しを要する請負契約にあっては、その目的の全部を完成して相手方に引き渡した日に収益を計上するのが原則であり、これを
工事完成基凖(又は完成基凖)
といいます。
ところが、その完成に長期間を要する長期の請負工事の収益計上について、この工事完成基凖を適用すると、工事期間中は収益が計上されず、工事の完成引渡しとともに一時に多額の収益が計上されるという結果となってしまい、正確な期間損益計算をすることができません。
そこで、企業会計上は、長期の請負工事に関する収益の計上については、工事完成基凖のほか工事進行基凖(決算期末に工事進行程度を見積もり、適正な工事収益率によって工事収益の一部を当期の損益計算に計上する方法)も選択適用することができるものとされています。
この工事進行基準は、収益の計上を実現主義ではなく、発生主義で行うもので、収益が早期に計上されることになります。
税務上は、長期大規模工事については工事進行基凖が強制されます。
一般の工事(長期大規模工事以外の工事)については、工事完成基凖と工事進行基凖のいずれかの選択適用を認めることとされています。
工事進行基準は、すべての工事に適用しなけれぱならないというわけではなく、個々の工事ごとに選択適用することができますし、事前の届出等も必要がありませんので、是非適用を検討してみてください。
工事進行基準を適用するためには、次の条件が必要です。
- 着工事業年度中にその目的物の引渡しが行われない工事であること。
- 確定した決算において工事進行基凖の方法により経理を行うこと。
確定した決算とは、株主総会等で承認された決算をいいます。法人税の申告書別表4において調整することは認められません。
- いったん工事進行基準を選択した工事については、毎期継続して適用すること。
工事ごとに選択できますので、全ての工事に強制されるわけではありません。
改正前までは、工事進行基準の適用要件の1つに「利益が生じる工事であること」という要件がありましたが、平成20年4月1日以降はこれが廃止され、損失の見込まれる工事も工事進行基準の対象になりましたので選択できる可能性が広がりました。
なお、工事進行基凖の対象となる工事の範囲にはソフトウエアの受注制作も含まれます。
2.工事進行基準の方法
税務上の工事進行基準は、次のように工事進行割合に応じて、各事業年度の収益の額及び費用の額を計上する方法をいいます。
2-1.各事業年度の収益の額
工事請負代金の額 × 工事進行割合 - 前期までに計上した工事収益の額
=収益の額
2-2.各事業年度の費用の額
見積工事費用の額 × 工事進行割合 - 前期までに計上した工事費用の額
=費用の額
(注)上記算式中の「工事進行割合」は、次の計算式で求めます。
期末までに投入した実際工事原価の額÷見積もり工事原価の額
なお、工事進行基準の方法による未収入金は、その工事の請負に係る売掛債権等の帳簿価額として各事業年度の所得の金額を計算することになっていますので、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の計算の基礎に含まれることになるほか、外貨建であれば期末換算の対象になりますので注意が必要です。
3.長期大規模工事について
工事進行基準が強制適用される長期大規模工事とは、次の工事をいいます。
①工事着手から契約上の目的物の引渡しまでの期間が1年以上であること
②請負代金の額10億円以上であること
③請負代金の2分の1以上が引渡しの期日から1年経過日後に支払われる契約になっていないこと
長期大規模工事に該当する工事であれば、工事完成基準を選択できません。
たとえ損失が見込まれるものについても工事進行基凖を適用しなければなりません。
ところで、長期大規模工事であっても、次のものは、選択により、工事進行基準の適用を開始しないことができるものとされています。
①期末において着手の日から6ケ月を経過していない工事
②工事進行割合が20%未満である工事
また、長期大規模工事に着手したかどうかの判定は、その請け負った工事を完成するために行う一連の作業のうち重要な部分の作業を開始したかどうかによって行いますが、工事の設計に関する作業がここでいう重要な部分の作業に該当するかどうかは、法人の選択によるものとされています。
長期大規模工事については工事進行基準が強制適用されるのですが、このように法人の選択によりその適用を翌事業年度以後にすることができるケースもあります。
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