eBayやAmazonなどの小売業や卸売業の税務調査の留意点

eBayやAmazonなどの小売業や卸売業の税務調査の留意点

1.eBayやAmazonなどの小売業や卸売業の税務調査の留意点

東京都北区赤羽の税理士 鈴木宏昌です。

当事務所ではeBayやAmazon.comのセラーやAmazon.co.jpのセラー、BtoBの卸売業などのお客様の顧問が多く、税務調査も増えてきております。

当記事ではeBayやAmazonなどの小売業や卸売業の税務調査の留意点について解説いたします。

目次



2.証憑書類のファイリング

eBayやAmazonなどの小売業や卸売業者の証憑書類は月ごと、業者ごとなど会社に合った方法によりきれいにファイリングする必要があります。


3.現金・普通預金

3-1-1.現金

税務証拠のなかで最も重要な資料は「カネ」に関する資料です。特に領収書の取扱いには十分に注意する必要があります。

現金には事業用現金や納税者個人用現金などがありますが、事業用現金と他の現金との明確な区分がなされているか否かが問題となります。

区分が不明確な場合には単に現金だけの問題ではなくなります。まず納税者個人用現金との区分が不明確な状況においては個人用支出が事業用支出として会計処理されている場合が多く役員賞与認定のおそれがあります。

また従業員個人用現金との区分が不明確である場合には横領着服の危険が考えられ、従業員の個人支出を十分にチェックする必要があります。

現金の区分は納税者の姿勢の問題であり、調査官の心証を悪くする原因を作り出しかねません。

具体的な現金管理の改善策としては、最低限次のようなことが必要です。

1.店舗がある場合にはレジスターを準備し必ずレシートを発行すること。

2.店が終了した時には事業用現金は翌日の「つり銭」を除いて全額を銀
行に預金すること(夜間金庫を利用できる場合夜間金庫を利用する。)。

3.出金はレジスターからは一切しないこと。別の小口現金用金庫を利用すること。小口現金は必ず銀行から引き出すこと。

要はすべての入出金をできる限り銀行経由にすることにより管理としては厳重となります。


3-1-2.預金

eBayやAmazonなどの小売業や卸売業者に限りませんが、帳簿残高と通帳残高を一致させる必要があります。

法人で個人名義の通帳を使っている場合、事業で使っていない個人名義の通帳もすべて見られる可能性がありますので、なるべく個人名義通帳は使用しないようにしてください。

eBayやAmazonなどの小売業だとバーチャルオフィスやレンタルオフィスを本店所在地にしていることが少なくありません。バーチャルオフィスやレンタルオフィスだと法人銀行口座の開設が難しくなってきており、自宅かオフィスビル、倉庫などを本店所在地とすれば法人銀行口座を開設しやすくなります。

また、資本金1円から法人を作れますが、資本金1円だと銀行からの評価が低く法人銀行口座開設が難しいため、有限会社時代に必要であった300万円の資本金とすることをおすすめしています。

すでに法人設立済みであり資本金が低く役員借入金が貸借対照表に残っているという場合には役員借入金の資本金組入(DES)により資本金を増やすことができますし、繰越利益剰余金がある場合には利益を資本金に振り替えることができます。



4.売掛金

決算前に締め日後の売上がある場合、締め後売上を計上する必要があります。忘れがちですので必ず確認するようにしましょう。

MFクラウドなどにAmazonアカウントを同期し売上を計上する場合、2週間ごとの売上をMFクラウドに登録することができますが、最後の登録日から決算日まで間があいてしまうことがありますので、セラーセントラルから最後の2週間の売上計上日から決算日までの売上を抽出し締め後売上を計上するようにしましょう。

MFクラウド×eBayであればPaypalを同期することになり、Paypalの動きを毎日帳簿に記帳することになるので、締め後売上は原則発生しません。

eBay手数料をクレジットカード払いしていれば、クレジットカードの同期データから入力するので記帳もれがないですが、eBay手数料をPayPal払いとしている場合で1日単位の集計で記帳している場合、記帳が漏れてしまいますので、手数料の入力漏れがないか確認するようにしましょう。


5.棚卸

決算日に在庫をカウントし、棚卸表の作成が必要となります。

棚卸表は手書き・EXCELなどで作成していただき、データで保存するのではなく、紙に出力し、会社名・代表取締役サイン・社印の押印をしていただき、修正できないような状態で保管しておく必要があります。

棚卸額は税務署に評価方法について届出がない場合には「最終仕入原価法」となり、一番最後に仕入れた仕入れ価格を棚卸額とします。

税込経理の場合には税込価格により、税抜経理の場合には税抜価格により棚卸額の算定をすることになります。


6.在庫の廃棄

在庫を廃棄したい場合、「いつ」「何を」「どのような理由で」「どのような方法で」廃棄が行われたかを、後日証明できるようにしておく必要があります。

帳簿上だけの廃棄損は認められませんのでご留意ください。

廃棄処分は決算対策に利用でき、廃棄損を計上することにより所得が減ることになるので、税務調査ではその廃棄が実際に行われたのかどうかの証明を必ず求めてきます。処分せずに帳簿上だけ廃棄として現物が残っていると、税務上は廃棄損を認めてくれません。

廃棄にあたっては、どの在庫を廃棄したのかを示す一覧表などを作成しておきましょう。できれば廃棄を業者に依頼し、その業者から請求書・廃棄物一覧などをを発行してもらったほうが客観性があります。

廃棄を証明できる書類の例は以下になります。

・廃棄業者からの請求書
・廃棄業者からの廃棄証明書
・廃棄商品のリスト
・廃棄商品の写真
・廃棄決定内容の議事録
・廃棄決定内容の稟議書


7.役員借入金・役員貸付金がある場合

役員貸付金がある場合には認定利息を計上する必要があります。

利率は

1.銀行等からの借入がある場合、その借入利率
2.銀行等から借入をしていない場合、租税特別措置法第93条第2項により、国内銀行の短期貸出約定平均金利+1%以上

のどちらかを使用することになります。

銀行は、どのような理由があろうとも役員貸付金を社長が私的に使っているとみなします。さらに、役員貸付金の期間が数期にわたっている場合、返済見込みがないとみなされ融資が難しくなります。

役員借入金がある場合、役員借入により自己資本比率が下がり銀行からの評価がさがります。なお、役員借入金は利息を計上しなくても大丈夫です。

また、役員借入金は、借り入れをした役員の死亡時には相続財産になるため、相続税の対象になってしまいますし、役員借入金が多額になると売上を役員借入金として処理をしているのではないかと疑われ税務調査率が上がる傾向にあります。

役員借入金が帳簿上たくさんある場合には、債務免除や資本金組入などを検討しなるべく減らすことをおすすめいたします。


8.前払費用

来期以降の費用を当期に支払っている場合、前払費用に振り替える必要があります。

請求書などを確認し、来期以降の家賃や保険などの支払いがないか確認してみましょう。


9.役員報酬

役員報酬は会計期間開始後3か月以内に変更し、その額を12か月動かすことができません。

ですから、決算が終わり来期の予算を詳細にたて、その予算から役員報酬としていくらが適正かを予測する必要があります。

役員報酬を高くすると所得税・住民税・社会保険料の合計が法人税より高くなりますので、社宅の検討や法人保険などを活用し個人・法人合計の手取りが多くなるようシミュレーションしてみましょう。

役員に賞与を支給したい場合、株主総会から1月を経過する日までに「事前確定届出給与」の届出書を税務署に提出する必要があります。



10.外注業者を使っている場合

外注業者がいる場合、外注先とは必ず業務委託契約書を作成してください。

eBayやAmazonなどの小売業でよくあるケースではクラウドワークスやランサーズで発注や発送業務をお願いし、それから個人に直接業務をお願いするというケースですが、その場合も必ず業務委託契約書を作成しましょう。

遠隔地にいる外注業者の場合直接印鑑をもらうのは面倒くさいので、クラウドサインなどを活用しましょう。


11.クレジットカードの利用

消費税法上、クレジットカード明細だけでは消費税の課税仕入れが認められません。レシートや領収書を必ず保管していただくようお願いいたします。


12.会議費・交際費

会議費、交際費はレシート・領収書に誰と食事をしたのかを手書きにて記載をするようお願いいたします。



13.地代家賃

事務所や倉庫などの賃貸借契約がある場合には、賃貸契約書を税務署に提出しますので、解約してしまった物件も含めて保存をしておく必要があります。

なお、居住用マンションを賃貸し、契約書に居住用と記載がある契約は消費税の課税仕入れを行うことができませんのでご留意ください。


14.輸出を行っている場合

20万円未満の商品はEMSの伝票を保管してください。

20万円以上の商品は輸出許可証を保管してください。

輸出許可証の輸出者の名義が転送業者の場合には、転送業者との間で消費税輸出免税不適用連絡一覧表を作成することになります。輸出者=貴社の場合は消費税輸出免税不適用連絡一覧表の作成は不要です。

消費税還付を受けている場合には、消費税集計表の作成が必要ですので必ず作成をしましょう。

現状eBayとUSAmazonは登録国外事業者に該当しますので、
・eBay手数料
・USAmazon手数料のうち一部(Your Amazon Seller Fees tax invoice)
が消費税課税仕入れとなります。

仕訳の摘要欄には登録国外事業者番号を入力しておきましょう。

なおPaypal手数料は現状消費税課税対象外です。

USAmazon手数料を全額消費税課税対象外としているケースがありましたので、その場合は更正の請求により消費税還付を検討することになります。



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