関係会社間の資産の売買・役務取引

関係会社間で資産の売買等を行う場合の税務上の論点について解説いたします。
関係会社間で資産の売買等を行う場合の税務上の論点について解説いたします。

1.関係会社間の売買における税務上の論点

関係会社間や同族会社における資産の譲渡や役務取引において、譲渡金額の決定が恣意的に行われ、税務上問題となることが多くあります。

譲渡金額としては、譲渡資産の時価を適正に把握していない、恣意的な金額調整、その資産を譲渡する意思がないが譲渡という法形式を利用して含み損を顕在化する、ということが行われやすく、この点が論点となります。

なお、完全支配関係がある法人間で譲渡損益調整資産が譲渡された場合には、譲渡損益が繰り延べられます。グループ法人税制のこの点に注意が必要です。


2.保有不動産を子会社に売却し再度借り受ける取引

監査法人から減損会計の適用をすべき旨の言明があったような場合、対象の不動産を子会社に売却し、売却後借り受けるという取引をしたときは、この不動産売却により、当社には土地売却損が多額に発生します。

このような場合、単に減損会計を回避するためだけの不動産譲渡ならば、税務上問題があります。

「関係会社間の取引に係る土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱い(日本公認会計士協会、昭和52 年8 月8 日監査委員会報告第27 号)」において、関係会社間の土地、設備等の取引に関する会計処理に関して、監査上の取扱いにおいて次のような点を留意すべきものとしております。

① 合理的な経営計画の一環として取引がなされていること
② 買戻し条件付き売買又は再売買予約付売買でないこと
③ 資産譲渡取引に関する法律的要件を備えていること
④ 譲受会社に置いて、その資産の取得に合理性があり、かつ、その資産の運用につき、主体性があると認められること
⑤ 引渡しがなされていること、または、所有権移転の登記がなされていること
⑥ 代金回収条件が明確かつ妥当であり、回収可能な債権であること
⑦ 売主が譲渡資産を引続き使用しているときはそれに合理性が認められること。

これらを総合的に勘案して判断します。

このように、たとえ不動産の所有権移転が法律的に行われていても、その取引に客観的な経済合理性がないときは、会計上も売却を認めないことがあり、かような場合には、税務上も売買としては認められないものと考えられます。

なお、これは「売却益」の計上の妥当性について述べていますが、「売却損」の計上の妥当性についても同様に適用することができます。

以上から、単に減損会計を免れるためだけに不動産の所有権をグループ会社に移転し、譲渡損として損金を実現した場合には、税務上その譲渡損の損金性が問われます。


3.子会社からの不良債権の買い取り

子会社において不良資産が多額に発生し、それが原因で破綻の危機に瀕しているような場合、そこで破綻回避策として、子会社が有する不良債権を当社が簿価で買い取り、子会社の破綻を回避しようとしたとします。

買い取り債権の簿価と時価の差額を当社の損金として処理した場合、法人間における資産の譲渡金額が時価と乖離している場合、その差額は寄附金とされます。

土地等の資産だけでなく債権の譲渡でも、その譲渡金額は時価でなければなりません。

そのため、不良債権でその債権金額の大半もしくは全額が回収できないことが明らかなものを簿価で買い取った場合には、買取り時点の債権の時価と簿価との差額は、子会社に対する寄附金と考えられます。

この取扱いは、仮に子会社の破綻等を防止する合理的な再建計画に基づき行われる場合でも、譲渡は時価で行われることを原則とするため、時価で取得したうえで別途子会社に対する再建支援を行えばよいことになり、簿価で取得した場合には、時価との差額は寄附金とされます。

ただし、債権の時価の算定は、実務上は困難な場合が多く、時価の算定は慎重に行いましょう。

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