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貸倒引当金を計上する【個人事業の確定申告前の対策】


【目次】

1.貸倒引当金を計上する

年末に売掛金や貸付金などの金銭債権がある場合には、貸倒引当金の繰り入れをして、その金額を必要経費にすることができます。

貸倒引当金とは、将来発生することが予想される貸倒れをあらかじめ見積もって費用化するもので、個別評価による貸倒引当金と一括評価による貸倒引当金があります。

一括評価によるものは青色申告者についてのみ認められる特典です。

貸倒引当金に繰り入れた金額は、その全額を、翌年に戻し入れをして収入に計上しなければなりません。

したがって、2年間を通算してみると貸倒引当金の繰り入れをしてもしなくても同じになるため、繰り入れをしていない人もいるようです。

しかし、今年は特に利益が出たというときの決算対策には節税対策となります。

2.個別評価による貸倒引当金

相手方が倒産状態にあるため、売掛金等の回収が困難な状況になっている場合に、個別評価による貸倒引当金繰入額として必要経費に算入することができます。

貸倒引当金の繰入限度額は、次のとおりです。

(1)次に掲げる事由に基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済される貸金等の金額のうち、その事由が生じた年の翌年から5年以内に弁済されない金額(担保権の実行その他によりその取立て又は弁済の見込みがあると認められる部分の金額を除きます。)

イ 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定

口 民事再生法の規定による再生計画認可の決定

ハ 会社法の規定による特別清算に係る協定の認可の決定

ニ 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で以下のもの

(イ)債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

(ロ)行政機関、金融機関その他第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で、その内容が(イ)に準ずるもの

(2)債務超過の状態が相当期間(おおむね1年以上)継続し、業務に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急、変等により多大な損害が生じたこと、その他の事由が生じていること等により、貸金等の一部の金額にその取立て等の見込みがないと認められるときにおけるその一部の金額に相当する金額

(3)債務者に、次に掲げる事由が生じている場合におけるその貸金等の額の100分の50に相当する金額(その貸金等の額のうち、その債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権と見られない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除きます。)

イ 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の申立て

口民事再生法の規定による再生手続開始の申立て

ハ 破産法の規定による破産手続開始の申立て

ニ 会社法の規定による特別清算開始の申立て

ホ 手形交換所(手形交換所のない地域にあっては、その地域において手形交換業務を行う銀行団を含みます。)による取引停止処分

4外国の政府、中央銀行又は地方公共団体に対する貸金等のうち、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じている貸金等の額の100分の50に相当する金額(その貸金等の額のうち、これらの者から受け入れた金額があるため実質的に債権と見られない部分の金額及び保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除きます。)

不渡りになった手形の額面金額の100分の50に相当する金額を貸倒引当金勘定に繰り入れたときは、その繰り入れた金額を限度としてあなたの事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができます。

なお、この場合、貸倒引当金勘定に繰り入れた金額は、その繰入れをした年の翌年分の事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しなければなりません。

そして、この貸倒引当金勘定に繰り入れた引当金については、翌年のその貸金等の状況により、引き続き引当金として繰り入れるもの又は貸倒損失として計上するもの等所要の処理をすることとなります。

また、事業の全部を譲渡し又は廃止した年は、貸倒引当金勘定への繰入れはできません。

さらに、この規定の適用を受けるためには、確定申告書にその繰入額に関する明細書を添付しなければなりません。

3.一括評価による貸倒引当金

年末の売掛金等の合計額に5.5%(金融業は3.3%)を掛けた金額を貸倒引当金繰入額として必要経費に算入することができます。

対象になる債権は、売掛金のほか貸付金、未収入金、受取手形(割引・裏書譲渡したものも含みます)などです。家事上の貸金、保証金・敷金、手付金・前渡金、前払費用、仕入割戻しの未収金、同じ相手方の買掛金等と相殺できる金額などは対象になりません。

3-1.一括評価の対象となるもの

①売掛金
②事業上の貸付金
③受取手形
④未収加工賃、未収請負金、未収手数料、未収保管料、その他事業所得の収入となる債権

3-2.対象とならないもの

①保証金、敷金、預け金
②手付金、前渡金
③仮払金(実質的な内容に応じて貸金に該当するかどうか判定)、立替金
④雇用保険法、雇用対策法等の法令の規定に基づき交付を受ける給付金等の未収金
⑤仕入割戻しの未収金
⑥同一得意先に売掛金と買掛金があるなど実質的に債権と認められない部分の金額

上記の計算により、あなたの事業所得の金額の計算上、必要経費に算入された金額は、その繰入れをした年の翌年の事業所得の金額の計算上、総収入金額に「貸倒引当金の繰戻額」(洗替)として算入する必要があります。

なお、この規定の適用を受けるためには、青色申告決算書にその繰入額の明細を記載しなければなりません

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