個人事業から法人成りの選択 法人の設立による節税
【目次】
法人では代表者に給与を支給することができますので、年間の利益金額が約700万円から800万円程度を超えると法人成りに税務上のメリットが生じます。
1.役員給与を支給した場合の選択ポイント
個人と法人の税務上の最も大きな違いのーつは、個人事業では事業主が自分自身に対し報酬という形で給与を支給することができませんが、法人では役員に対して役員給与を支給できるということが最大のメリットといえます。
2.個人と法人の税率比較
すでに事業を行っている個人事業者が、法人成り(個人事業を法人組織にする
ことです。)を検討する際には、個人と法人ではどちらが手取り額が多くなるのかということを検討します。
所得税や法人税が算出されるまでのプロセスは複雑で、給料・報酬の決め方や会計処理の方法によっても違ってきます。
そこで、ここではまず、個人事業にかかる所得税と法人にかかる法人税の税率の違いを比較します。
【平成19年分から平成26年分の所得税率】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 | 40% | 2,796,000円 |
【平成27年分以降の所得税率】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
【法人税の税率】
所得金額 | 資本金1億円以下の会社の税率 | 資本金1億円超の会社の税率 |
---|---|---|
年800万円以下の部分 | 15% | 25.5% |
年800 万円超の部分 | 25.5% |
法人の利益には法人税がかかりますが、「法人税の税率表」の通り、資本金1億円以下の法人では所得金額が800万円以下の部分について15%、800万円を超える部分については25.5%の税率で、資本金が1億円を超える法人では一律に25.5%となっています。
個人が事業を行って利益を得れば、事業所得となって所得税が課税されることになりますが、所得税では、所得が増えれば増えるほど、税率が高くなっていくという超過累進課税になっています。上記所得税の税率表を見ればわかる通り、現在の所得税率は、最低5%から最高40%までの6段階税率となっています。平成27年以降は7段階税率となり、最高税率の45%まであがります。
所得税の税率と法人税の税率を単純に比較して、所得がいくらになったら法人成りした方が有利かという結論を出すことはできませんが、課税総所得金額が900万円を超えていれば、法人にした方が有利なことは明らかです。
ただし、これは法人が役員給与を支払っていない場合の判定の選択ポイントです。
現実の法人では役員給与が支払われることがほとんどです(例えば会社に対して個人から貸付を行っており、会社に欠損金があるような場合、欠損金の使用を優先するため、貸付の返済をし役員給与を支給せず、利益と欠損金を相殺するというようなことは考えられます。)ので、その支払いがあった場合では個人と法人でどちらが有利になるのか、手取り額が多くなるのかということを次に検討をする必要があります。
3.役員給与を支給することのメリット
所得が500万円から800万円といった程度の金額の場合でも法人成りすることによりメリットがあります。
それは法人では役員給与を支給することができ、役員給与として受け取れば
「給与所得控除」
を受けることができるからです。
そもそも給与所得控除というのは、給与所得者には必要経費が認められないため、必要経費に相当するものとして給与から一律に一定金額を差し引くことにしたものです。
したがって、法人成りした場合には、法人で支出する経費が損金に算入され、さらに法人から受け取る給与については給与所得控除を受けることができるという二重のメリットを享受できることになります。これらのことを勘案して個人か法人成りかを検討する必要があります。
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