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役員退職金の活用 給料と退職金などによる節税


【目次】

1.役員退職金の活用

長年社長として第一線で経営にあたってきた人が現役を引退するときや、社長に万が一のことがあったときには、役員退職金を上手に活用すると、会社の節税につながります。

退職金には所得税がかかりますが、ほかの所得とは分離して課税される分離課税であり、非常に安い税額となっています。

退職金という性質上、所得控除額が大きく設定されている特徴があります。したがって通常の計算と比べて所得税の負担が格段に軽減されているのです。

これは従業員退職金にも適用されます。

また役員に支払った退職金は、よほど高額でない限り会社の損金とすることができますので、会社の株価対策としても大きく影響を及ぼすことがあります。

2.役員退職金支給が認められる場合

役員退職金を支給できるのは、次のようなケースが該当します。

①その会社の役員を退任したとき
②死亡したとき
③実質的に退職したのと同様の事情があるという場合(分掌変更による退職金)

●常勤の役員が非常勤役員になったとき……常時勤務していなくても代表権がある者や、代表権はないが実質的にその経営上主要な地位を占めている者を除く

●取締役が監査役になったとき…監査役でありながら、実質的にその会社の経営上重要な地位を占めていると認められる者、同族会社の株主で持株が5%を超える者(使川人兼務役員とされない役員の要件を満たしている者)を除く

●役職の変更によって報酬が激減したとき……おおむね50%以上の減少であるとき

3.役員退職金は総会決議が必要となる

役員退職金を支給するには、一定の手続きが必要です。

まず、あらかじめ退職金規程を整備しておきましょう。これは後日の調査に備え必須です。

次に支給事由が発生したときには、できるだけすみやかに株主総会を開催しなければなりません。役員退職金は総会決議を経て、はじめて決定するからです。
 
ただし、支給すべき事由が生じたのに、総会までにかなりの期間があいてしまうという場合には、とりあえず先に退職金を支給し、決算書にきちんと反映させておけば、その会社が退職給与を実際に支給した事業の損金にすることも認められています。

総会では事後承諾のかたちになります。これを支給日基準といいます。

なお、役員退職金は非常に高額になってしまうため、税務署の調査に備え、総会議事録、退職金規程などを整備しておくことが重要です。

【臨時株主総会議事録】(クリックすると大きくなります。)

14-09-24 議事録

4.役員退職金の適正額

役員退職金は、その役員の職務の内容や期間、会社の収益状況、同業他社の水準と比べて著しく高額でない場合、損金に算入できると規定されています。

役員退職金に関しては、一般的に

最終月額報酬 × 勤続年数 × 類似法人の功績倍率

で計算することが多いです。

功績倍率の目安は示していますが、倍率2~3倍程度であれば問題ありません。

たとえば勤続10年、150万円の報酬を受け取っていた社長が退職して非常勤役員となる場合、功績倍率を3倍とすると、150万円×11年×3=4500万円が退職金の適正額となります。

退職金を不当につり上げようとして最終月額報酬を退職前にアップしたりすると、利益操作ともとられますので注意が必要です。

なお、役員退職金は金額が高額になります。資金繰りが悪化する場合には、いったん会社から退職金を受け取り、それを会社に貸し付けるという方法もあります。

役員退職金を判断するときの基準は、下記のとおりです。

役員退職金の内規により決定したか?(恣意的でないか?)
その役員の会社への貢献度にふさわしい額であるか?
役員報酬とのバランスはどうだったか?
会社の支払能力とのバランスはどうか?
退職直前に役員報酬を引き上げるなどの行為がなかったか?
同業他社に比べて著しく高くないか?

5.退職金の支給方法

役員退職金は、基本的には損金に算入されます。その計上時期は、

①原則として、退職金に関する決議があった年度の経費とする……実際に支払いが先になるときには未払金として一括で計上する

②実際に支給した日の属する事業年度の経費とする

のいずれかの方法を採用することが認められています。

ただし、分掌変更による退職金については、①に示した未払計上が認められていませんので注意が必要です。

小さな会社の場合には資金繰りの都合で、まとまった資金を準備できないことも多く見受けます。

このような場合には、分割で支払い、②の方法によって損金に計上することも認められています。

なお、退職金を分割払いするときには、総額の源泉所得税額が確定してから、支給額に応じて納付するという方法をとります。

役員退職金を分割によって支払うという場合には、

①総額が確定している
②「退職金の分割払いである」旨の決議(取締役会)がされている

2点に留意する必要があります。

当然のことながら役員退職金の追加支給は損金と認められません。

また毎年均等に長期間分割払いをする場合、役員年金と混同されるおそれがあります。

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