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少額減価償却資産の購入による節税 「資産」関係の節税


【目次】

減価償却資産は固定資産に計上し耐用年数にわたって償却するのが原則ですが、10万円未満のもの及び使用可能期間が1年未満のものについては一時償却することができます。

1.少額減価償却資産とは

企業が長期にわたり使用する目的で所有している資産を固定資産といいます。

その固定資産のうち、時の経過又は使用によりその価値又は効用が漸次減少す
る資産を減価償却資産といいます。

減価償却資産は、たとえその取得価額がいかに少額であったとしても固定資
産として計上し、減価償却によって費用配分するのが原則です。

しかし、あまりに少額な資産についてまで長期にわたって帳簿管理をしたり、減価償却費計算の要求をするのは、現実的ではなく企業にとっては手数がかかり煩雑になるだけです。

そこで少額な減価償却資産については、企業会計上の重要性の原則が税務においても認められています。

すなわち、取得価額が10万円未満の減価償却資産及び使用可能期間が1年未満の減価償却資産は、これを事業の用に供した時点で、損金経理を条件に一時の損金に算入することができます。

すなわち、取得価額が10万円未満の減価償却資産及び使用可能期間が1年未満の減価償却資産は、これを事業の用に供した時点で、損金経理を条件に一時の損金に算入することができます。

この場合に、取得価額が10万円未満かどうかは、通常1単位として取引されるその単位、例えば、機械及び装置については 1台又は 1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、 1組又は1そろいごとに判定することになっています。

構築物のうち、鉄道の枕木や送電線用の電柱などのように単体では機能を発揮し得ないものについては、ーの工事等ごとに判定するものとされています。

取得価額についての消費税の取扱いは、法人が適用している消費税の経理処理方式に応じて算定した取得価額により判定することになっています。

つまり、法人が税抜経理方式を適用している場合には、消費税抜きの価額が取得価額となり、法人が税込経理方式を適用している場合には、消費税込みの価額が取得価額となります。

(例)95,000円(税抜き)の備品を購入した。
税抜経理方式 95,000円が取得価額となり、10万円未満のため費用処理可。

税込経理方式 95,000円×1.08%=102,600円となり、10万円を超えてしまうため、費用処理不可。(なお、中小企業の場合、取得価額が30万円未満の少額減価償却資産を取得して事業の用に供すると、全額を損金とすることができます。損金算入できる金額には限度があり、1事業年度で合計300万円までです。)

また、使用可能期間が1年未満かどうかは、その法人の属する業種において一般に消耗性の資産として認識されており、かっ、その法人における平均的な使用状況や補充状況などからみて、その使用可能期間が1年未満かどうかを判定することになります。

2.少額減価償却資産の判定単位

取得価額が10万円未満であるか否かの判定は、通常1単位として取引されるその単位によるとされています。

2-1.応接セット

応接セットの通常の取引単位はテーブルとイスのセットであると考えられますので、その判定単位は 1セットになります。

したがって、10万円未満のテーブルとイスを別々に購入したとしても、 1セットとなるその合計額が10万円を超えていれば一時償却することはできません。

2-2.新築した建物の蛍光灯

「建物附属設備」の「電気設備」には、「(照明設備を含む。)」と規定されており、照明設備には蛍光灯も含まれます。

したがって、蛍光灯は個々に一単位として金額を判定するのではなく、新築した建物については電気設備に含めて資産計上することになります。

なお、蛍光灯の一部が不良となったので取り替えたという場合には、その取替えに要する費用は修繕費になります。

2-3.力ーテン

カーテンは 1枚で機能するものではなく、ーつの部屋で数枚組み合わされて機能するものです。

したがって、カーテンの取得価額が10万円未満であるかどうかは、部屋ごとのその取得価額で判定すべきものです。

ただし、窓等によって異なる種類の力ーテンを取り付ける場合には、その異なる種類ごとに取得価額が10万円未満であるかどぅかを判定することになるものと考えられます。

2-4.百科事典

書籍は、備品として減価償却資産に該当するものと考えられていますが、通常は、その 1冊当たりの取得価額が10万円未満であり、少額減価償却資産として使用した事業年度の損金に算入することができます。

書籍でも分冊されているような辞典類は、通常全巻1そろいで取引され、また、その効用は全巻1そろいで発揮する性質のものと考えられます。

したがって、辞典類は 1冊ごとではなく、 1そろいの取得価額をもって10万円未満であるかどうかを判定することになります。

このことは毎月1巻ずつ配本され、その都度支払うことになっている百科辞
典類であっても同じく 1そろいの取得価額をもって10万円未満であるかどうかを判定することになります。

なお、書籍の耐用年数は、耐用年数省令の「器具及び備品」の「Ⅱ前掲のもの以外のもの」の「その他のもの」の「その他のもの」の5年となります。

2-5.レンタル用のDVD等

レンタル用のDVD等は、販売用のものではありませんので、減価償却資産として取り扱うことになります。

減価償却資産ですので、 1個当たりの取得価額が10万円未満であれば、それを事業の用に供した年度に一時償却することができます。

なお、「事業の用に供した時期」とは、本来の用途用法のとおり現実に使用を開始した時と解されていますので、レンタル用のDVD等については顧客に対していつでもレンタルが可能な状態になったときということができます。

したがって、たとえ 1度も貸したことがないものであっても、店頭に陳列してあれば、事業の用に供したことになります。

3.少額減価償却資産の一時償却は資産ごとに選択できます

少額減価償却資産は、必ずしも一時償却しなければならないというものではありません。

取得価額が10万円未満の減価償却資産を固定資産に計上して、減価償却により費用配分するという方法を選択することもできます。

その判断は当期の利益がいくらであるのかを鑑みて判断することとなります。

黒字にしなければいけないなどの理由があれば固定資産に計上し、減価償却を行うことにより利益を大きくすることができますし、節税を図りたいということであれば、費用処理すべきでしょう。

さらに、少額減価償却資産の一時償却は企業が取得した減価償却資産ごとに選択することもできます。

4.共有資産については持分割合によって取得価額を判定します

少額減価償却資産であるかどうかは、事業の用に供した減価償却資産の、その取得価額によって判定することとされています。

共有資産の取得価額は、その持分によって算定されますので、持分により算定した取得価額をもって少額減価償却資産に該当するかどうかを判定することになります。

5.事業の用に供した年度で一時償却する必要があります

少額減価償却資産について一時償却ができるのは、あくまで「事業の用に供した日」です。

したがって、少額減価償却資産を取得しただけで、その事業年度末までに事業の用に供されていない場合には、一時償却することができません。

税務調査対策として、少額減価償却資産を事業の用に供したことを立証できるように証拠資料(業務日誌や写真などにより事業の用に供したことがわかるようにする)を揃えておくとよいでしょう。

また、少額減価償却資産の一時償却は、事業の用に供した年度でしか選択することができません。

したがって、少額減価償却資産を取得して、事業の用に供した年に固定資産に計上しておき、その後の事業年度で一時償却するといったことはできません。

6.非減価償却資産は対象外

取得価額が10万円未満の資産につき一時償却が認められるのは、あくまで減価償却資産です。

したがって、電話加入権や書画骨とうなどのような非減価償却資産は、たとえ取得価額が10万円未満であったとしても、損金に算入することはできません。

これらは時の経過に応じて減価する事実がないか、減価の事実が一般的に明確でないので、減価償却をすることができません。

書画骨とうは、時の経過により価値が減少するものではなく、むしろ、一般的には価値が増加するものといえます。

ただし、書画骨とうといっても、複製品のようなもので、単に装飾的目的のみに使用されるものは、時の経過により価値が減少していきますので、減価償却資産に該当することになります。

非減価償却資産とされる税務上の書画骨とうは、次のものと定められています。

①古美術品、古文書、出士品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの

②美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係る書画、彫刻、工芸品等

(注)書画骨とうに該当するかどうかが明らかでない美術品等でその取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号2万円)未満であるものについては、減価償却資産として取り扱うことができます。

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