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回収不能債権の貸倒損失の計上 資産関係の節税


【目次】

1.事実上の貸倒れとは

金銭債権について回収の見込がない場合、債務の免除をしない限り法律的には債権は消滅しませんので、貸倒れとして処理することは原則として認められません。

しかし、法律上は債権が消滅していないとしても、事実上は回収不能というがよくあります。

そこで、一定の条件を満たす場合には、その債権の資産価値は事実上消滅したと同様の事情にあると考えられますので、損釡経理を条件に損金に算入することが認められます(法基通9- 6-2)。

通達に規定されている条件は、次の4つです。

①債務者の資産状況、支払能力等からみて回収できないことが明らかであること
②全額が回収できないこと
③その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすること
④担保物があるときは、それを処分した後に貸倒れ処理すること

この場合には、法律上は金銭債権が残っていますので、法人が損金経理をしない限り、貸倒れによる損失が損金に算入されることはありません。

なお、保証債務については、現実にこれを履行した後に貸倒処理することが要求されています。

これは、法人に保証債務があり、その保証債務を履行することが確実であって、かつ、これにより求償権を行使することが困難であることがあらかじめ明らかなときであっても、これを履行した後でなければ貸倒処理することはできない旨を明らかにしたものです。

この場合の履行とは、債務の肩代わりということではなく、現実にその肩代わりにより返済することをいいます。

2.法基通9-6-2の貸倒れの4要件

2-1.債権の全額が回収できないことが明らかであることとは

債権の全額が回収できないことが明らかであることが、法基通9-6-2での貸倒れの第一条件です。

「資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らか」とありますが、例えば、どういう事実が必要なのか、必ずしも明確ではありません。

その事実を客観的に証明する必要がありますが、これが税務上なかなか難しいのです。

旧通達は、次のようなことを列挙されていましたので参考となります。
1 債務者につき、破産、和議、強制執行又は整理手続の開始、又は解散、事業閉鎖となったとき
2 債務者の死亡、失跡、行方不明、刑の執行等があったとき
3 債務超過が相当期間継続し事業再起の見通しがないとき
4 天災事故、経済事情の急変などが発生したとき
もちろん上記にとらわれることなく、「債務者の資産状況、支払能力等」から判定すべきです。

2-2.全額が回収できないこととは

2つめの要件は、金銭債権の全額が回収できないことが要件となります。

したがって、債権の一部でも回収できる見込がある場合には、貸倒処理することができません。

これは債権の一部について貸倒処理を認めると、その債権について評価減したのと同じことになってしまい、債権の評価換えを認めない法人税法の建前に反することになってしまうからです。

また、法人の有する債権について、その一部だけについて貸倒処理することもできません。

この場合には、その一部の貸倒処理した金額も否認されることになります。
債権の一部だけの貸倒処理ができるとすると、そのことにより事実上の利益操作が可能となってしまうため、認められていないのです。

2-3.その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することとは

回収不能が明確になった場合、直ちに貸倒処理を行うべきであり、貸倒処理の時期を恣意的に選べてしまうと利益操作が可能となってしまいます。

そのため、回収不能が明らかになった事業年度において貸倒処理することが要求されます。

2-4.担保物を処分した後に貸倒処理すること

金銭債権について担保物があるときは、その担保物の処分をし、それにより受け入れた金額を控除した後の状況によって回収不能の判断をすべきこととされています。

これは金銭債権の全額が回収されないことが条件とされているため、たとえ一部であって担保物の処分によって回収できる見込があるときは、その担保物を処分するまでは貸倒処理が認められません。

この担保物には、債務者である法人の資産を担保として取っている場合だけでなく、第三者による債務保証という人的担保も含まれます。

債務者である法人の代表者等の連帯保証がある場合には、その債務保証が履行された後でなければ、貸倒処理することができません。

ただし、その保証人に支払能力が全くないと判断される場合には、全額の回収不能が明確になった段階で貸倒処理することができるものと考えられます。
以上のことから、担保物があっても、まだその処分をしていない場合には、個別評価による貸倒引当金の繰入れによって対応すべきです。

3.全額回収できないことを証明する証拠資料の作成

事実上の貸倒れによる貸倒損失の計上が認められるためには、客観的にみて、全額回収不能であることを立証する証拠資料が必要です。

例えば、破産等の整理に入っていることを表す裁判所等の書面、事実上の解散や事業閉鎖となっていることを証明する資料や関係者の証言、債務者の死亡や失跡を明らかにする資料、回収の努力をしたことを示す書類の整備が必要です。

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