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有姿除却の適用による節税 「資産」関係の節税


【目次】

減価償却資産の除却損は、現実にその資産を廃棄処分したときに計上するのが原則ですが、資産の使用価値が尽きていることが明確なものについては、現状有姿のまま除却損を計上することも認められます。

1.有姿除却とは

法人が有する減価償却資産については、各事業年度における減価償却限度額以内の金額を損金経理することにより損金に算入することになりますが、その減価償却資産につき除却、廃棄、滅失等があつた場合には、その資産の帳簿価額から廃材等の見積額を差し引いた金額を除却損として損金に算入することができます。

減価償却資産の除却損が認められるのは、現実にその資産を廃棄処分したときであるのが原則ですが、その資産の命数や使用価値が尽きていることが明確なものについては、現状有姿のまま除却損を計上できることになつていて、法人税基本通達には次のように規定されています。

7-7-2 次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であつても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする。(昭55年直法2-8「二十五」により追加)

(1) その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産

(2) 特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの

これは、例えば、企業の次のような実情と必要性に配慮し、現実にその資産を廃棄処分していない場合でも除却損の計上を認めるものです。

①その資産の解撤、破砕等に多額の費用を要することが見込まれるため、差し当たり解撤、破砕等をせずにそのまま放置しておく

②既に固定資産としての使用は廃止しているものの、将来ごくわずかでも再使用の可能性があるため、当分の間はそのまま解撤、破砕等をせずにそのまま保有しておく

2.有姿除却が認められる2つの事例

企業のこのような実情から、通達では2つの事例を掲げて、有姿除却であっても、その資産が固定資産としての命数又は使用価値を失つたことが客観的に証明されるものであれば、スクラップ価額を残したところで除却処理を認めることとしています。

2-1.事業の用に供する可能性のない固定資産

上述の通達の事例では、①使用を廃止していること、②今後通常の方法によって事業の用に供する可能性がないこと、の2つの条件を満たせば有姿除却が認められるとしています。

今後通常の方法によって事業の用に供する可能性がないかどうかは、事実認定の間題ですが、その使用を廃止した時点における事後処理の方法、客観的な経済情勢その他状況の変化を見極めたうえで判断することになります。

もし、他に転用する可能性が若干あるとしても、その転用後の使用方法がその資産の本来の用途や用法と全く異なるものであり、経済性が維持できないような極端な用途変更である場合には、「通常の方法により事業の用に供する可能性」があることには該当しないものと思われます。

2-2.専用金型等

通達の事例では、①特定の製品の生産のために専用されていた金型等であること、②製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことを条件に、有姿除却を認めようということが規定されています。

専用金型等は、耐用年数が2年程度であるため、生産中止をした段階で償却はかなり進んでいるのが一般的です。

このような専用金型等が、たとえ再使用されるとしても、その可能性がごく小さい場合には、固定資産としての機能が維持されているとみることはできません。そこで将来使用される可能性のほとんどない専用金型等については、有姿除却が認められるというわけです。

なお、生産の中止は、単に企業が生産の中止を決定したということだけでは十分ではありません。通達に「その後の状況等からみて明らが」と表現されているように、一般的には、生産を中止した後ある程度の期間にわたつて、状況を見極めたうえで除却処理ができるものと解されています。

過去の使用状況及び受注状況から、少量かつ多品種の部分品の注文を受け、その後それと同じものの再受注の実績がないような場合には、再使用の可能性がないものとして取り扱うことができます。

3.取壊し費用の見積額をどう見積もるか

有姿除却に当たり、その固定資産の取壊し費用の額をあらかじめ見積もり、その額を費用に計上したり、その資産の処分見込額から控除して除却損を計上することができるかどうかは問題になります。

企業会計においては、当期の業績の表示を重視し、財政状態の健全性に強い関心をよせることから、その発生が確実な費用については、早めに見積もり計上しておくべきです。

企業会計原則の発生主義の立場からすれば、費用の見越し計上や引当金の設定をすべきということになります。

しかし、法人税法第22条第3項では、外部取引に係る費用については、債務確定の事実をもってその発生を認識するとして、債務確定基準を採ることを明らかにしています。

つまり、税務上は、課税の公平という見地から、企業の恣意性が入り込みやすい費用の見越し計上や引当金の設定は、原則として認められていません。

この債務確定基凖からすれば、その固定資産の取壊し費用の額をあらかじめ見積もり、その額を費用に計上したり、その資産の処分見込額から控除して除却損を計上することは、原則として認められません。

ただし、期末までに取壊し作業に着手している場合には、通常の有姿除却とは異なりますので、取壊し費用の見積額を未払費用に計上することが認められる余地があると考えられます。

4.固定資産としての命数又は使用価値を失ったことを立証する

現状有姿のままで除却するとなると、外形的に見れば、将来、再利用する可能性が全くないとはいえないのではないかという疑間も生じ、税務上その是非をめぐって税務調査においてトラブルが発生することもあります。

有姿除却が認められるためには、その資産が固定資産としての命数又は使用価値を失つたことを客観的に証明する必要があります。

そのためには、その固定資産の規模に応じて、例えば、次のような対応策をとっておく必要があります。

4-1.大型の固定資産

建物や製造ラインなどの大型の固定資産を有姿除却する場合には、役員が承認した企業の経営計画にその資産の除却が織り込まれていて、その資産の運用担当者の配置転換等が済んでいる必要があります。

書類としては、その資産を有姿除却する理由を具体的で詳細に記載した稾議書、 役員会での決定を記載した議事録(役員会議事録)、取締役会議事録などを作成しておく必要があります。

4-2.金型等の小型資産

金型や小型の機械などの固定資産を有姿除却する場合には、個々の生産対象となる製品ごとに、今後製造しないことを立証できるようにしておく必要があります。

書類としては、その製品が会社の販売品目から外されたことを証明する稾議書、その金型や機械が他の製品の生産には転用できないことを証明する説明書(現場の技術者等が作成)などを作成しておく必要があります。

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