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オペレーティングリースを利用して株価を下げる 株価対策
オペレーティング・リースにより、一定期間利益を圧縮し、その間に事業承継対策を行うことが可能です。
目次
1.オペレーティング・リースとは
オペレーティング・リース取引とは、とくに航空機、船舶、プラント設備等の大口取引に用いられるリース・ファイナンスです。
リース期間が法定耐用年数の120%以内とし、税務上の条件をクリアした賃貸借取引等をいいます(実務上はリース会社が組成して金融商品として販売されています)。
投資家(事業会社等の出資者)は、物件の運用事業を行う営業者(リース会社の100%子会社)と匿名組合契約を結び、物件の購入価額の30~40%を出資します。
オペレーティング・リースの特色は、リース収入は毎年定額ですが、リース資産は定率法により償却し、かつ、リース期間が耐用年数を上回っていますから、リース期間の前半は必ず投資損益は赤字となり、投資家に損失が分配されることになります。
このようにオペレーティング・リースは、将来の赤字が予想できますから、計画的に利益を圧縮することが可能になります。
当然他の保険商品等の損失が予想できるものと組み合わせて対策するとよりその効果が発揮されます。
ただし、企業の損益予想はあくまで予測ですから贈与する株式の評価計算時点の決算では慎重に損益計算を行うことが必要です。
なお、オペレーティング・リースの後半はペーパー上の黒字が発生し、繰り延べられた利益が多額になりますから事前の対応もまた十分考えておくことが大切です。
匿名組合
商法535条に定められた契約で、出資者が事業の運営を営業者に任せ、分配金を受け取る契約です。
出資金の運用は営業者に一任され、運用資産の名義は、営業者の名義になり、出資者は匿名になります。
2.オペレーティング・リースの仕組み
ノン・リコースローンとはリース物件(航空機等)以外に担保しないで、かつ、他の財産、保証等に遡及しないローンのことをいいます。
3.匿名組合方式による投資家の会計処理
(1)出資時
(借方)出資金1億円(貸方)現金1億円
(2)毎決算期(赤字の時)
(借方)特別損失4,500万円(貸方)未払金4,500万円(または出資金)
(3)毎決算期(黒字の時)
(借方)未収入金1,200万円(貸方)雑収入1,200万円
(4)組合解散時
(借方)現金17,200万円(貸方)配当金17,200万円(一部出資金)
投資家の損益計算書には、年度ごとの投資純損益が計上され、貸借対照表には、対応する債権、債務(未収入金または未払金)と出資金が計上されます。
4.投資リスク
4-1.借りの倒産リスク
借主が倒産した場合は、リース契約は終了し、同時に匿名組合契約も終了します。営業者は返還されたリース物件を処分し、ローン残債を清算した後、残額を投資家に配分します。または再リースを行うケースもありますが、リース料は減額されるリスクがあります。
投資家はリース借主会社の格付等で会社内容を検証しなければなりません。
また、第三者(保険会社等)の最低保証等があればよりよいと考えられます。
4-2.リース物件の全壊リスク
リース物件が全壊した場合は、リース契約は終了し、同時に匿名組合契約も終了します。リスクはすべて借主が負うが、保険金で出資金は全額回収されます。
ただし、その時点で益金が計上されることになります。
4-3.税制改正リスク
契約締結時の前提としていた税制が改正された場合のリスクがあります。
リース事業が黒字になった段階で税率が上がると投資効果は低下します。(税率が下がれば投資効果は上昇します)。
4-4.為替変動リスク
為替相場の変動によるリスクはあります。ただし逆に為替差益にもなります。毎月のリース収入の変動よりも、購入選択権の行使またはリース期間終了時での出資金の為替リスクが大きくなる場合があります。よって投資は税効果と比較して判断する必要があります。
4-5.当初予定残価で売却できないリスク
リース期間の終了により、リース物件を売却して清算したときに、当初予定の残価で売却できない場合のリスクがあります。
通常は出資金の全額回収が予定されている購入選択権が行使されますが、もし行使されないケースがあったときはリスクがあります。
ただし、その残価が第三者で保証されている場合はリスクは減少します。
4-6.倒産リスク
営業者(事業運用会社)はS・P・C法人ですから通常倒産はありません。ただし、親会社(100%株主)が倒産した場合は事業の管理ができなくなりますから別会社への移譲が必要になります。
また、親会社が倒産した場合は、機体等を廉価で借主が購入できる契約になっているケースがあります。
5.匿名組合出資持分の相続税評価額
商法上の匿名組合契約により営業者(航空機等のリース業者)に金銭を出資した匿名組合(出資した法人)の株式を、純資産価額方式で評価する場合に、その出資金の相続税評価額はどのようにして算出し、評価するのかという問題があります。
匿名組合員が有する出資持分は、利益配当請求権と匿名組合契約の終了時における出資金返還請求権が一体となった債権的権利の財産と解されています。
したがって、その出資持分の価額(時価=相続税評価額)は、出資金を含めた匿名組合契約に基づいた営業者のすべての財産、債務を対象として、課税時期(評価時期)において、その匿名組合契約が終了したものとした場合に、匿名組合員(法人)が分配を受けることができる清算金の額に相当する金額によることになります。
課税時期の営業者の清算金の具体的な方法は次のようになりうると考えます。
すなわち、営業者の財産のほとんどは、航空機等のリース物件です。このリース物件を売却し、借入債務等を支払った後に清算金が分配されますから、このリース物件の売却可能な時価の算定が必要となります。
航空機の場合、欧米では中古市場が形成されでいますから、この中古販売を業とする複数社の売却見積り価額をとり、平均価額を算出して財産評価とします。実務上は、オペレーティング・リースの販売会社に依頼することになります。
その他の財産・債務についても時価評価とし、分配を受けることができる見込み金額により算出することとなります。
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