欠損金の繰戻還付と繰越控除の留意点(新型コロナウイルス関連)
1.欠損金の繰戻還付と繰越控除の留意点(新型コロナウイルス関連)
東京都北区赤羽の税理士 鈴木宏昌です。
コロナウイルス感染症緊急経済対策の税制上の措置として、前年度までに納めた法人税の一部を還付できる制度(欠損金の繰戻還付制度)について対象範囲を拡大することとなりました。資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人等(大規模法人を除く。)が対象となります。
(注)大規模法人とは、次の法人をいいます。
1.各事業年度終了の時において資本金の額又は出資金の額が10億円を超える法人
2.保険業法に規定する相互会社等
3.1.又は2.に掲げる法人の100%子法人等
欠損金の繰戻しによる還付の特例では、大規模法人等以外の法人が令和2年2月1日から4年1月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額は、中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置を適用しないこととする、つまり法人税額の還付を請求することができます。
上記の各事業年度(清算中に終了する事業年度を除く。)分の法人税につき確定申告書を令和2年7月1日前に提出した法人(不適用措置の対象とならない法人を除く。)のその各事業年度において生じた欠損金額については、令和2年7月31日までに納税地の所轄税務署長に還付請求書を提出することにより欠損金の繰戻しによる還付制度が適用できることとされます。
2.欠損金の繰戻還付の適用要件
欠損金の繰戻還付を受けるには次の要件を全て満たさなければなりません。
2-1.青色申告法人の場合
イ 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して青色申告書である確定申告書を提出していること。
ロ 欠損事業年度の青色申告書である確定申告書をその提出期限までに提出していること。
ハ 上記ロの確定申告書と同時(※)に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること。
(※)新型コロナ税特法の規定により、令和2年2月1日以後に終了する各事業年度(清算中に終了する事業年度を除きます。)の上記ロの確定申告書を令和2年7月1日前に提出している法人(下記7の中小企業者等を除きます。)のその事業年度の欠損金額についての還付請求書の提出期限は、令和2年7月31日となります。
2-2.災害損失欠損金を有する法人の場合
イ 還付所得事業年度から欠損事業年度の前事業年度までの各事業年度について連続して確定申告書を提出していること。
ロ 欠損事業年度の確定申告書又は仮決算による中間申告書を提出していること。
ハ 上記ロの確定申告書又は仮決算による中間申告書と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること。
3.還付金額の計算
法人税の還付金額は次のとおりです。
還付所得事業年度の法人税額 × 欠損事業年度の欠損金額÷還付所得事業年度の所得金額
欠損事業年度の欠損金額が還付所得事業年度の所得金額を超えるときは、分子の欠損金額は分母の所得金額を限度とします。
4.欠損金の繰越控除と欠損金の繰戻還付の選択
コロナウイルスの影響により欠損金額が生じた場合、欠損金額を繰越控除するか、法人税の繰戻し還付を請求するかは法人の任意です。
資金繰りを考慮すれば、すでに支払った法人税が還付される欠損金の繰戻し還付が有利ですが、欠損金の繰戻し還付制度の適用を受けると原則税務調査が行われることになっているので、この点は非常に重要です。
コロナウイルスや消費税増税による大不況により業績が悪化し、先行きが見通せない、営業すらできない企業が増加しています。
今期は黒字を見込めるが、来期以降は赤字になりそうという場合には、様々な決算対策をおこなうことにより今期を赤字決算とし法人税の還付を受けるということも考えられます。
なお、地方税には欠損金の繰戻還付の制度はありませんので、法人税で繰戻還付を受けた場合でも、地方税では繰越控除を適用することになります。