出国税と国外財産調書制度

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1.出国税とは

2015年7月1日より出国税が導入されました。

出国税とは、国外転出時における未実現のキャピタルゲインに対する租税回避防⽌措置として(国外転出をする場合の譲渡所得課税の特例)が導⼊された税制です。

導⼊された主な法令
所得税法第60条の2「国外転出をする場合の譲渡所得の特例」
所得税法第60条の3「贈与等により⾮居住者に資産が移転した場合の譲渡所得の特例」



2.出国税の制度概要

制度導⼊の背景ですが、⾮居住者が株式等を譲渡しても、同⼀銘柄の株式の買い集め等の場合を除いて⽇本では課税されません。そこで、巨額の含み益を有する株式等を持つ居住者がシンガポールや⾹港等のキャピタルゲイン⾮課税国の居住者になることにより、租税回避を図る例が多発したため導入されました。

平成27年7⽉1⽇以後の国外転出、⾮居住者に対する贈与等については、含み益が実現したものとして課税されます。
具体的には、国外転出する居住者が、その時に有価証券等を有する場合、転出時に当該有価証券等の譲渡があったものとして、事業・譲渡・雑所得の⾦額を計算します。

1. 納税義務者→居住者

2. 譲渡益課税の対象→株式等、社債、国債等、匿名組合契約の出資持分、未決済信⽤取引等、未決済デリバティブ取引の含み益

3. 適⽤除外
1億円未満である場合は適用除外となります。また、国外転出の⽇以前10年以内に国内に住所⼜は居所を有していた期間が5年以下である場合も適用除外となります。

4. 課税標準 株式の時価ー取得費
国外転出の場合の時価は下記の区分により異なります。

納税管理⼈の届出を⾏っていた場合 転出時の時価
納税管理⼈の届出を⾏っていなかった場合 転出予定⽇の3ヵ⽉前の⽇における時価区分測定時

5. 課税⽅式と税率
国外転出時を含む年の他の所得と合算して申告・納税、総合課税、分離課税それぞれの税率が適⽤されます。

6. 申告・納付期限

納税管理⼈の届出あり 翌年の3⽉15⽇
納税管理⼈の届出なし 出国の時まで



3.出国税の留意事項

3-1.株式の譲渡に係る所得

譲渡収⼊-必要経費(取得費+譲渡費⽤+借⼊⾦利⼦)が所得となり、税率15.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%)となります。

3-2.海外駐在後5年以内に帰国する場合

出国時に申告を⾏うとともに納税猶予の適⽤を受けることが可能です。ただし担保の差し⼊れが要件となります。出向時にいったん納税した上で更正の請求を⾏い還付を受けることも可能です。

3-3.住⺠税

住⺠税は、その年の1⽉1⽇における住所地において、前年の総所得⾦額等を基礎として課税されます。



4.国外財産調書提出制度とは

国外財産調書制度というものもはじまっています。国外財産調書制度(「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送⾦等に係る調書の提出等に関する法律」第5条第1項)の概要は以下の通りです。

1.提出義務者
⾮永住者以外の「居住者」でその年の12⽉31⽇において有する国外財産の額が5,000万円超である者

12月31日時点で国外財産が5,000万円超の居住者財産の所在地が「国外」か否かは、相続税法第10条1項、2項に基づき判定します。同法同条に規定する動産、不動産、預貯⾦、特許権等が「国外財産」に該当します。

2.提出内容

  • 財産の価額は、「時価」⼜は「⾒積価額」で表⽰します。
  • 外貨で表⽰された財産の円貨換算は、12.31における対顧客電信買相場(TTB)により換算します。
  • 調書には、提出者の⽒名・住所、国外財産の種類・⽤途・所在地・数量・価額等を記載して提出します。
  • 所得税法に規定する「財産及び債務の明細書」を提出する場合には、国外財産調書に記載した国外財産の記載は不要です。
    ※国外財産調書の提出漏れには加算税有りますのでご注意ください。
    ※H27.6.30までの提出件数は8,184件です。



5.国外送⾦等調書の提出義務

国外送金をした場合、調書の提出が義務付けられています。

国外送⾦等調書の提出は、国税当局が対外取引や国外にある資産等を把握するためのもので概要は以下の通りです。

1.名称・住所等を記載した告知書の提出により取引当事者(納税者)は特定されています。
2.運転免許証や国税・地⽅税の領収書等により窓⼝での本⼈確認が⾏われています。
3.⾦融機関は、100万円を超える国外送⾦・受⾦について、その名称、住所、送⾦⾦額等を記載した調書(電⼦データ)を税務署に提出します。
4.国外送⾦等には、電信送⾦、⼩切⼿送⾦、国債郵便為替、⼩切⼿・⼿形の⽀払なども含まれています。

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