亡くなる数日前に引き出したお金が相続財産とされた事例

亡くなる数日前に引き出したお金が相続財産とされた事例

名義預金・名義株は相続調査で問題とされやすい

相続人名義の預金や有価証券等の金融商品が相続財産を構成するかどうか、いわゆる名義預金や名義株などは、相続税調査の際に最も問題になりやすいです。

その多くはその預貯金等の原資・管理・運用の状況から過去に贈与されたものか、名義のみ借りた相続財産か否かの判断を必要とします。

1.名義財産(相続財産)か贈与財産かの判断

  • 被相続人以外の名義の財産でも、その財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められれば、その財産は、相続税の課税対象、つまり被相続人の財産とされてしまいます。
  • 名義財産となる(相続財産に取り込まれる)かどうかは、その原資がだれのものか、取引や口座開設の意思決定やその手続をだれが行っているか、その管理又は運用による利得を収受していたのがだれか、といった点から判断されます。
  • 名義財産ではなく、過去に贈与を受けたものであると判断する場合は、いつの時点でどのように贈与が行われたかが大きなポイントです。贈与を受けたものであれば、相続財産に取り込まれません。


2.亡くなる数日前に引き出したお金が相続財産と認定された事例

平成23年6月21日の裁決では、被相続人の相続開始数日前に相続人によって5,000万円が被相続人の口座から引き出されましたが、相続人はその使途についてあいまいで不自然は口述をするのみで、何に使ったのか不明のままであり、被相続人によって費消等された事実はないということから相続財産であると認定されました。


3.相続人の主張

相続人は、相続開始の数日前に被相続人名義の預金から相続人が出金した5,000万円について、出金された当日に被相続人に引き渡され、相続開始日までに被相続人によって費消されて存在していなかったから、相続に係る相続財産ではないということを主張しました。


4.結論

被相続人が、5,000万円いう高額なお金を家族に知られないまま費消することは通常考えられません。

また5,000万円をギャンブル等の浪費によってすべて費消するには相続開始前の数日間では短すぎますし、もともとそれほどギャンブルをする方ではなかったようで被相続人の消費傾向に照らしても、お金がすべて費消されたとは考え難いとされました。

また、被相続人自身、数日後に死亡するとは考えていないのに、多額の費用が必要な手術の準備をしていた時に、5,000万円を引き出す直前の預貯金残高の8割を超え、総所得金額の2倍以上に相当する5,000万円ものお金が、そのような短期間で軽々に費消されたとも考え難いとされました。つまり、このお金の引き出しはあまりにも不自然すぎたのです。

また、国側及び審判所の調査の結果によっても、5,000万円が相続開始日までに、他の預金等に入金された事実、債務の返済や貸付金に充てられた事実、資産の取得又は役務の提供の対価に充てられた事実、その他何らかの費用に充てられた事実はなく、家族以外の第三者に渡されたような事実もありませんでした。

以上のとおり、通常想定し得るお金の流出先についてみても、5,000万円が費消等された事実はなかったということとなり、5,000万円は被相続人によって費消等されなかったと認めることができ、ほかにこれを覆すに足りる証拠がありませんでした。

したがって、そのお金は、相続の開始時点までに被相続人の支配が及ぶ範囲の財産から流出しておらず、その相続に係る相続財産であるとされました。

【業務に関するご相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。】

03-6454-4223
電話受付時間 (日祝日は除く)
平日 9:00~21:00
土曜日9:00~18:30

チャットワークメールでのお問合せ