被相続人の家族名義の預金が相続財産とされなかった事例

被相続人の家族名義の預金が相続財産とされなかった事例

名義預金・名義株は相続調査で問題とされやすい

相続人名義の預金や有価証券等の金融商品が相続財産を構成するかどうか、いわゆる名義預金や名義株などは、相続税調査の際に最も問題になりやすいです。

その多くはその預貯金等の原資・管理・運用の状況から過去に贈与されたものか、名義のみ借りた相続財産か否かの判断を必要とします。

1.名義財産(相続財産)か贈与財産かの判断

  • 被相続人以外の名義の財産でも、その財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められれば、その財産は、相続税の課税対象、つまり被相続人の財産とされてしまいます。
  • 名義財産となる(相続財産に取り込まれる)かどうかは、その原資がだれのものか、取引や口座開設の意思決定やその手続をだれが行っているか、その管理又は運用による利得を収受していたのがだれか、といった点から判断されます。
  • 名義財産ではなく、過去に贈与を受けたものであると判断する場合は、いつの時点でどのように贈与が行われたかが大きなポイントです。贈与を受けたものであれば、相続財産に取り込まれません。


2.相続人名義の預金が相続財産と認定されなかった事例

平成25年12月10日の裁決では、被相続人の家族名義の預貯金等について、その管理状況、原資となった金員の出捐者及び贈与の事実の有無等を総合的に勘案したところ、被相続人に帰属する相続財産とは認められないとされ、家族名義の預金が相続財産とはされませんでした。なぜ相続財産とされなかったのでしょうか。


3.財産の管理状況・運用状況はどうなっていたか

預貯金の管理・運用状況をみてみると、平成17年に被相続人の配偶者が病気で入院した後は、相続人がその管理・運用を行っていたと認められるところ、それ以前の状況については、被相続人名義の印鑑及び被相続人の配偶者印を届出印とする被相続人の配偶者名義の預貯金は、被相続人の配偶者が管理・運用しており、一方家族名義の預貯金等は被相続人印及び被相続人の配偶者印以外の印鑑を使って請求人夫婦及び孫らが管理・運用していたものと認められました。


4.出捐者・贈与事実について

国側は被相続人が亡くなる5年前まで遡って金融機関を調査し、国税不服審判所もそれに基づき調査を行いましたが、個々の預貯金の出捐者が誰であるのかを特定することができませんでした。

また、贈与についても、相続人は贈与があったと主張しますが、国側は贈与税の申告をしていないことをもって、贈与がなかったという旨を主張しました。しかし、審判所は、被相続人から相続人に贈与がなかったと認めることができませんでした。

結局、預貯金の管理・運用の状況、原資となったお金が誰から出たのか、贈与があったのかなどを総合的に勘案しても、預貯金が誰に帰属するのか明らかではなく、その預貯金が被相続人に帰属すると認められなかったことから、被相続人の相続財産とはされませんでした。

次回は、別の裁決事例をご紹介いたします。

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