遺産分割が決まらない場合の留意点

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遺産分割が決まらない場合の留意点
相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立しない場合には、さまざまなデメリットがあります。

目次

1.相続税の申告期限までに遺産が未分割な場合

相続税の申告期限内に遺産分割協議が成立しない場合には、未分割にて相続税の申告をすることになります(相法55)。


1-1.適用できない特例

遺産が未分割の場合には、次のような特例の適用を受けることができません。

  • 配偶者の相続税額の軽減(相法19の2②)
  • 小規模宅地等の課税価格の計算の特例(措法69の4④)
  • 特定計画山林の課税価格の計算の特例(措法69の5③)
  • 農地等の相続税の納税猶予(措法70の6④)
  • 非上場株式等の相続税の納税猶予(措法70の7の2⑦)
  • 山林の相続税の納税猶予(措法70の6の4⑥)



1-2.配偶者の相続税額の軽減

配偶者が相続する財産が決まらないと特例は適用できません。

配偶者は、未分割遺産を法定相続分にて財産を相続したと仮定して、それに見合う相続税を納税することとなります。配偶者は
負担する相続税が大きくなってしまいます(「申告期限後3年以内の分割見込書」)。


1-3.小規模宅地等の課税価格の計算の特例

どの敷地を誰が相続するのかが決まっていないと、この特例は適用できません。

土地の課税価格計算について80%減額や50%減額できるこの特例の適用がないと、大幅な相続税の軽減がなくなります(「申告期限後3年以内の分割見込書」)。

被相続人等の事業用宅地等又は居住用宅地等であっても、相続税の申告期限までに分割されていないもの(未分割宅地等)については、原則として特例の適用はありません。

ただし、相続税の申告期限までに分割されなかった宅地等が、この申告期限から3年以内に分割された場合には、その分割された宅地等についても特例の適用があります。

また、申告期限から3年以内に分割されなかった宅地等であっても、分割されなかったことにつき、相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の一定のやむを得ない事情があるときには、納税地の税務署長の承認を受け(「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」)その宅地等の分割ができることとなった日として定められた一定の日の翌日から4か月以内に分割されたときには、特例の適用があります。


1-4.特定計画山林の課税価格の計算の特例

どの特定計画山林を誰が相続するのかが決まっていないと、この特例は適用できません(「申告期限後3年以内の分割見込書」)。


1-5.農地等の相続税の納税猶予

農業相続人が相続税の納税猶予を受ける場合には、相続脱の申告期限までにその農地を取得し、かつ農業経営を開始するなどといった要件を満たす必要があります。このため、申告期限までに遺産分割が整わない場合には、適用を受けることができなくなります。また、その後、一定期間内に遺産分割協議が成立しても、この納税猶予の特例を適用して相続税の計算をし直すことはできません。


1-6.非上場株式等の相続税の納税猶予

後継者が相続税の納税猶予を受ける場合には、相続脱の申告期限までにその会社の株式等を取得し、かつ会社経営を開始するなどといった要件を満たす必要がです。

このため、申告期限までに遺産分割が整わない場合には、適用を受けることができなくなります。

また、その後、一定期間内に遺産分割協議が成立しても、この納税猶予の特例を適用して相続税の計算をし直すことはできません。


1-7.山林の相続税の納税猶予

後継者が相続税の納税猶予を受ける場合には、相続税の申告期限までにその山林を取得し、かつ山林経営を開始するなどといった要件を満たす必要があります。

このため、申告期限までに遺産分割が整わない場合には、適用を受けることができなくなります。

また、その後、一定期間内に遺産分割協議が成立しても、この納税猶予の特例を適用して相続税の計算をし直すことはできません。


2.物納ができない

物納申請は相続税の納付期限までです。

遺産が未分割である場合には、相続財産を共有で相続している状態であるため、物納財産としては不適当とされます。分割が確定していない状態にある相続財産の物納は原則として許可されません。


3.3年10ヶ月を過ぎても遺産が未分割な場合

相続税の申告期限までに遺産分割が整わない場合でも、後日、遺産分割が決定すれば、実際の遺産分割に応じた相続税額を計算して、各相続人が相続税の申告と納付をやり直すこととなります。

税額が増える者は「修正申告(相法31①)」を提出し追加の税金を支払いし、税額が減る者は「更正の請求」を提出し払いすぎた税金の還付を受けることができます。


4.申告期限から3年を経過する日までに遺産分割が決まった場合に適用できる特例

  • 配偶者の相続税額の軽減(相法19の2②)
  • 小規模宅地等の課税価格の計算の特例(措法69の4④)
  • 特定計画山林の課税価格の計算の特例(措法69の5③)

上記に示す制度は、申告期限から3年を経過する日までに遺産分割が決まった場合には、これらの特例を適用して税額計算をやり直すことができます。

ただし、相続についての訴えや和解の申し立てがされたこと等により分割されない場合には、3年を経過した日から2ケ月以内に税務署長に申請書(「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」)を提出することにより、これらの事由が完結した日の翌日から4ヶ月以内に分割されればこれらの特例の適用を受けることができます。

また、「相続財産を譲渡した場合の譲渡所得の特例」(措法39①)の制度は、3年10ケ月以内にその財産を譲渡する場合に適用を受けることができるものです。

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