一括転貸(サブリース)方式の法人を活用した個人不動産オーナーの所得分散

不動産オーナー(地主)から税理士に寄せられる質問に「会社の活用」があります。そのうち、一括転貸(サブリース)方式の法人を活用した個人不動産オーナーの所得分散について解説いたします。
一括転貸(サブリース)方式の法人を活用した個人不動産オーナーの所得分散

1.一括転貸(サブリース)方式の概要

一括転貸(サブリース)方式は、不動産の所有者は個人のままです。

その個人が所有する不動産を低い家賃で一括して会社(同族会社)に賃貸(借上げ)し、これを会社(同族会社)が通常の家賃で第三者の賃借人に賃貸(転貸)する方式です。

不動産オーナーから会社へは、受け取った家賃と支払った家賃の差額が所得分散(収益移転)されることになります。

したがって、不動産オーナーから会社(同族会社)への一括賃貸料をいくらに設定するかが最も重要なポイントです。



2.一括転貸(サブリース)方式に対する課税当局の対応

課税当局は、一括転貸方式について、転貸型法人に残った所得金額(内部留保分)が不動産オーナーから所得分散(収益移転)されたものとして、管理委託方式の管理料と同様に考え、不相当に高額な管理料に相当する部分があれば、「同族会社の行為又は計算の否認等」の規定を適用して、否認します。

参考となる裁判例や国税不服審判所の裁決例からすると、不動産オーナーと転貸型法人(同族会社)の場合のー括転貸方式の適正な管理料率は、5~15%程度が多いようです。



3.会社へのー括賃貸料の算定法

不動産オーナーからすると、一括転貸方式のメリットは、入居率に関係なく、毎月一定額の家賃収入を得ることができる点といえます。

不動産オーナーの一番の悩みは空室リスクであり、これが回避できますので、メリットがあります。

また、会社が一括で借り上げた後は、管理業務はすべて転貸型法人が行うため、管理の煩わしさから開放されます。このようなメリットがあるため、転貸型法人への一括賃貸料は低く設定されることになります。

一括で借り上げる転貸型法人は空室率を低くすれば多くの利益が残りますし、空室率が上がれば利益が減ります。空室率によっては、転貸型法人に損失が生じることも考えられます。通常、第三者(同族以外の市中)である不動産業者が行う一括転貸方式による賃貸料(一括借上料)は、物件の種類や立地条件、見込まれる入居率等により算定されますが、「満室の場合の家賃収入の85~90%程度」が多いようです。

また、新築物件を一括で借り上げる場合には、入居者ゼロからスタートし、募集により徐々に入居率が上がっていくため、これに合わせた契約形態(例えば、当初1ヶ月は一括借上料率50%、2 ヶ月目は75%、3 ヶ月以降85%といったような契約)がとられることが通常です。

一括借上期聞か長期(例えば10 年)であったとしても、短期間(1~3 年程度)で一括借上料の見直しを行う契約になっている場合が多く見られます。

したがって、不動産オーナー個人と転貸型法人(同族会社)の間で一括借上料を算定する場合には、このような同族以外の市中の不動産業者との契約条件を参考に決めることが課税当局とのトラブル回避につながります。

なお、「満室の場合の家賃収入の85~90%程度」という場合の家賃収入は、管理委託方式と同様、礼金や更新料等の臨時的、一時的収入や共益費、共用部分の水道光熱費等を除いて計算するのが相当と考えられます。



4.転貸型法人(同族会社)に損失が計上される場合の対応

不動産オーナーと転貸型法人(同族会社)で一括転貸方式による取引を行った場合、収益物件の空室率によっては、会社に損失が生じることが考えられます。

これは、税金の軽減策ができません。このような場合には、軽減策の見直しが必要です。

入居率の低い物件は一括転貸方式には不向きです。

収益物件が複数ある場合にはどの物件を一括転貸方式に組み込むのか、一括借上科の算定は適切かなど多方面から検討して一括転貸方式の仕組みを作ることが大事です。



5.不動産オーナーの負担か、会社の負担か

一括転貸方式は、転貸型法人が建物を不動産オーナーから一括借上げしてこれを第三者に賃貸(転貸)する形態となります。したがって、不動産の賃貸経営自体は転貸型法人が行うことになります。

この場合、経営上生じる様々な費用をどちらが負担するか細かく契約書に定めておく必要があります。

建物の所有者は不動産オーナー(個人)ですから、建物の大規模修繕計画の修繕費はもとより、建物本体や付属設備(例えば受水槽や浄化槽、エレベータなど)、構築物(門、塀など)の修繕や保守管理の費用負担は不動産オーナー(個人)となります。

これに対し、通常の不動産賃貸経営を行うための費用(例えば入退去時のクロス・壁・畳・フローリング等の改修リフォーム費用や室内のクリーニング費用、共用部分の水道光熱費・電球交換費用など)負担は転貸型法人となると考えます。



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