委託管理方式の法人を活用した個人不動産オーナーの所得分散

不動産オーナー(地主)から税理士に寄せられる質問に「会社の活用」があります。そのうち、委託管理方式の法人を活用した個人不動産オーナーの所得分散について解説いたします。
委託管理方式の法人を活用した個人不動産オーナーの所得分散

1.管理委託方式の法人の概要

管理委託方式は、不動産収益物件は個人の不動産オーナーが継続して保有します。

個人所有の不動産の管理業務を会社(同族会社)に委託して管理料を徴収する方式です。

管理量の多寡により会社活用の効果が違うため、管理料をいくらにするかが最も重要なポイントです。


2.管理型法人の管理業務の内容

実務上、管理料は管理業務の内容により決められます。一般的な管理業務としては、次のような業務があります。

<管理型法人の管理業務>

  • 入居者の募集や面接
  • 賃貸借契約の締結、更新、解約などの手続き
  • 入居者の入居時のチェック
  • 入居者や近隣住民などのクレーム処理
  • 入居者の退去時のチェックと清算金の精算
  • 家賃の請求と受領
  • 敷金、礼金、保証金等の請求と受領
  • 建物及びその周辺の清掃・見回り、警備(巡回)・管理業務
  • 共用部分の保守・管理業務
  • 建物の修繕工事等の見積もり依頼や工事の選定、発注業務
  • 建物保守管理業務(エレベータ、電気保安など)に伴う業者への連絡・発注・確認業務
  • 大規模修繕計画の立案、実行、チェック業務



3.管理型法人への管理料

管理委託方式で最も重要なポイントは会社への管理科をいくらにするかです。

管理型法人(同族会社)への管理料の支払を通して不動産オーナーの所得が分散(移転)され、税の軽減につながるからです。

したがって、通常、管理料は多ければ多いほど効果がありますが、税務調査において、管理業務の実態に照らして支払った管理料が「不相当に高額」と認められると、その高額な部分は不動産オーナーの必要経費として否認されることになります。

実務上、税務調査において同族会社に対する管理科が「不相当に高額」と認められ否認された例は数多くあります。

これは、同族会社ゆえ、第三者(まったく関係のない市中の業者)に支払う管理料に比べて著しく高額に管理料を設定し、その結果、税金負担を不当に減少させたとして「同族会社等の行為又は計算の否認等(所法157)」の規定を適用するものです。

管理委託方式の場合、不動産オーナーが会社に支払う適正な管理科の算定が最重要ポイントです。


4.不相当に高額な管理料

実務上、不動産オーナーが会社に払う管理料は「家賃収入の○%(管理科割合)」という形で契約書に定められることが多いです。

この管理料は、管理業務の内容によって決められますが、課税上、「何%までなら適正な範囲」という明確な基準が示されているわけではありません。不動産オーナーの間では、最高裁の判断は7%だったとか、国税不服審判所の裁決例では20%まで認めた例があるとか、過去の税務調査で20%までは認められたとか、いろいろなケースがあります。

実際のところ、税務調査において、課税当局が「不相当に高額」と判断するか否かは、同族会社に委託されている管理業務の内容や実態、事業規模や収益の状況などをもとに個々に、第三者(まったく関係のない市中の業者)の管理業者に同じ管理業務を委託した場合の管理料と比較して、不相当に高額か否かを判断することが税務リスクが低い方法です。

したがって、同族会社への管理料を決める際、第三者である業者の管理実態と管理料を参考に決めることは税務調査対策として意味のあることです。

できれば複数の市中の管理会社の管理実態と管理科をもとに、税理士等の意見も聞き、管理料を決めれば、税務調査で否認される可能性は相当低くなるものと考えます。

しかし、一般的には、市中の管理会社の管理科は(管理業務の内容によって相当異なりますが)月額家賃(一般的には集金額ベース)の3~8%程度が多いと思います。この程度のパーセントではなかなか所得の分散(すなわち税金の軽減)効果が得られないのではないでしょうか。


5.管理料の算定と留意点

税理士など専門家の間では、管理会社の管理料が月額家賃(集金額ベース)の3~8%程度が多いことを参考に、最高で家賃の10%までとか、8%程度が限界という意見もありますが、実際は、委託する管理業務の内容や実態などに応じて個々に算定します。

特に、税務調査では管理業務の実態について厳しくチェックされますので、遂行した管理業務について、業務内容を明らかにすることができる業務日誌をつけるなどして記録を残すようにしておくようにオススメしています。

具体的な管理料は、「家賃収入の○%(管理料割合)」という形で契約されることが多いのですが、この場合の家賃収入には、礼金や更新料等の臨時的、一時的収入や共益費、共用部分の水道光熱費等を除いて計算するのが相当と考えられます。

また、第三者(同族以外)の管理業者に管理業務を委託した場合には、「家賃の集金額(現金ベース)×○%(管理料割合)で管理科が請求されるケースが大半です。

したがって毎月の管理料は集金額により変動するということになります。

しかし、同族の不動産管理会社では、管理科計算の簡便性を加味して「家賃の発生額(契約書による発生ベース)XO%(管理料割合)」で毎月の管理料を請求することが多く見受けられます。

この場合でも、毎年(又は毎事業年度)ごとに管理実態などを勘案して管理料の見直しを行い、契約書等を整備しましょう。

なお、「満室の場合の家賃収入の85~90%程度」という場合の家賃収入は、管理委託方式と同様、礼金や更新料等の臨時的、一時的収入や共益費、共用部分の水道光熱費等を除いて計算するのが相当と考えます。


6.不動産オーナーの負担か、会社の負担か

不動産オーナーとその同族の管理型法人が契約を締結する際には管理業務の内容と管理料について定めるほか、管理上生じる様々な費用をどちらが負担するかも細かく定めることが望ましいです。

実務上、この点が曖昧なことが多く、適当に双方で費用負担していると税務調査で否認されることになります。たとえば、エレベータの保守管理費や、大規模修繕計画に沿った修繕費の負担は、不動産オーナー個人が負うものと考えられます。これに対し、管理型法人が行う建物清掃の清掃器具購入費用や、共用部分の電球交換費用などは一般的には管理型法人が負担します。


7.外注がある場合

管理委託方式は、不動産オーナー個人が所有する不動産の管理業務を管理型法人(同族会社)が行い、管理料を徴収する方式です。

しかし、実際には、管理業務の一部を第三者(同族以外)の管理業者に外注する場合があります。

この場合、その外注費用は管理型法人(同族会社)の負担となります。また、管理型法人(同族会社)が管理費用に上乗せして不動産オーナーに請求している場合には、(管理費用+外注費の上乗せ額)を管理費用として、その管理費用が適正か否か(不相当に高額か否か)判断されます。

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