なぜ、会社を活用すると税金が減るのか
不動産オーナー(地主)から税理士に寄せられる質問に「会社の活用」があります。主な目的は所得税や相続税の税金対策です。なぜ、会社を活用すると税金が減るのでしょうか。
1.不動産オーナー(個人)の所得分散による超過累進税率緩和
課税所得金額が多額となる不動産オーナー(個人)が会社に所得分散することにより超過累進税率の緩和が図れます。これにより、毎年の所得税が軽減されるとともに、金融資産の増加を防ぐことができますので、長期的には相続対策にもなります。
個人の所得が高いままだと、個人にどんどん財産が貯まっていき、結局相続税が高くなるんですね。
2.個人(超過累進税率)と会社(比例税率)の税率差
個人に対する所得税・住民税の超過累進税率と会社に対する法人税等の税率(比例税率)には差があり、個人に対する課税所得金額が一定額に達すると、個人に対する税率の方が低くなります。
不動産オーナー(個人)が会社の所得分散した金額には、個人の高い税率より会社の低い税率が適用され、税金の軽減が図られることになります。
不動産オーナー(個人)の不動産所得の金額が多ければ多いほど、会社の活用(会社への所得移転)により、不動産オーナーグループ全体の税金減額効果を見込めます。
3.役員給与の支給による所得分散
一般的に、会社の役員には不動産オーナー本人ではなく、同族関係者(子や孫など)が就任します。
これら役員に対し、適正な範囲で役員給与の支給をすることにより所得が分散され、個人に対する所得税等の超過累進税率が緩和されます。
したがって、役員の数は多いほど、同族関係者全体の税金の軽減額は多くなることを見込めます。
4.役員給与に対する給与所得控除の適用
個々の役員に支給される役員給与については、所得税の給与所得控除(給与に対する概算の必要経費)が適用されます。たとえば、月額給与30 万円の役員は年間で360 万円の役員給与を得ますが、これに対する給与所得控除は126 万円となります。
この126 万円は年収360 万円の役員の給与所得に対する概算の必要経費として所得税法上認められたもので、この場合には給与収入の35%にも及びます。
これは実質的な非課税枠なのです。
360 万円の役員が3 人いれば給与所得控除額の総額は378 万円(126 万円×3 人)にもなりますので、実際に経費を支払っていないにもかかわらず、378万円の経費が認められるのと同じ効果があります。
会社活用の効果と留意点
① 不動産オーナーの所得を会社に分散(所得移転)した場合、不動産オーナー個人の課税所得金額は減少し、超過累進税率が緩和されます。
② 不動産オーナーの所得を分散することは、金融資産の増加防止につながり相続税対策になります。
③ 所得を会社に分散した後の不動産オーナーの所得は減少し、超過累進税率の適用税率が下がります(適用税率は高い方から減少します。)
④ 会社に移転された所得については、法人税と法人地方税の課税がされますが、これらの税率は基本的に比例税率となります。また、会社の資本金を1 億円以下とした場合には、法人税の計算上、年間所得800 万円以下の部分について軽減税率が適用され有利となります。法人税が少なくなると連動して法人住民税も軽減されるため、この効果は大きいです。
さらに、会社の資本金を1 億円以下にすることによって特定同族会社に対する留保金課税(同族会社に対して重課する税度)の適用も除外されます。これらの点から、不動産オーナーが会社を設立する場合には、資本金を1 億円以下とするようにプランニングすることが重要なです。
なお、会社に利益を移転するため、会社の財産は増加します。この会社の財産は、その会社の株主等に帰属することになります。したがって、株主用の名義は不動産オーナーではなく、それより下の世代の親族(例えば子や孫)名義にすることが望ましいといえます。
それにより、将来の相続税対策になります。
⑤ 役員給与については、実際にかかった必要経費が少額でも給与所得控除(給与に対する概算の必要経費)が適用されます。これは実質的な非課税枠といえます。また、会社の役員には不動産オーナーの同族関係者(子や孫など)が就任しますが、これら役員に対しては、適正な範囲で役員給与の支給をすることにより所得が配分され、個人に対する超過累進税率が緩和されることになります。
役員給与の支給額が適正か否かは、税務調査で厳しくチェックされますので、慎重に検討して決める必要があります。
⑥ 役員給与の支給を受けた役員は、可処分所得が増加します。それを預貯金等でプールすることにより、将来、不動産オーナーに相続が起こった場合の相続税の納税に備えることができます。
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