欠損金の繰戻し還付制度の使い方

欠損金の繰戻し還付制度の概要と有利不利の実務上の判断について解説いたします。
欠損金の繰戻し還付制度の使い方

1.概要

青色申告書を提出する法人は、その確定申告書を提出する事業年度において生じた欠損金がある場合には、その事業年度(以下「欠損事業年度」という)開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(以下「還付所得事業年度」という)に繰り戻して法人税の還付を請求することができます。


2.対象法人

中小企業者等

  • 資本金等1 億円以下の普通法人又は人格のない社団等
  • 一般社団法人又は法人税法以外の法律により公益法人等とみなされているもの
  • 公益法人等又は協同組合等、 特定医療法人等


3.対象要件

  • 還付事業年度から欠損事業年度の前事業年度まで連続して青色申告書を提出していること
  • 欠損事業年度の青色申告書を期限内に提出していること
  • 確定申告書の提出と同時に欠損金の繰戻しによる還付請求書を提出すること


4.還付金額

(欠損事業年度開始の日前1 年以内に開始したいずれかの事業年度の所得に対する法人税額 + 所得税額等の控除額)

× 欠損事業年度の欠損金額÷還付所得事業年度の所得金額



5.注意点

地方税、事業税は繰戻し還付制度がありません。


6.このほか既に対象となっている法人

解散等の事実(※)が生じた場合、当該事実が生じた日前1年以内に終了したいずれかの事業年度又は同日の属する事業年度において生じた欠損金額をこれらの事業年度開始の日前1 年以内に開始したいずれかの事業年度に繰戻し、法人税額を還付請求することができます。

(※)解散等の事実
① 解散(適格合併等による解散を除く)
② 事業の全部の譲渡
③ 会社更生法等に基く更生手続きの開始
④ 事業の全部の相当期間の休止又は重要部分の譲渡(これらの事由による繰越欠損金の損金算入が困難となると認められるものに限る)
⑤ 民事再生法の規定による再生手続開始の決定



7.繰越控除について

欠損金額が生じた事業年度において、青色申告書を提出し、かつその後の各事業年度において連続して確定申告書を提出している法人について、前9年以前の開始事業年度の青色欠損金額は、繰越控除が認められています。


8.ポイント

8-1.有利・不利の実務上の判断

欠損金の繰越控除か繰戻し還付かの有利判定については、その時々の納税者の状況を考慮したうえで、判断することが必要です。

前期に黒字で法人税額を納付し、当期に欠損が生じた場合には、経済状況などを考えても、今後数年間は黒字が生じる見込みがなく赤字が継続しそうであれば、先行きが不透明である点を考慮して、繰戻し還付の適用を選択すべきかもしれません。

また、納税者の資金繰りの状況が芳しくないのであれば、資金繰りの悪化を食い止めるためにも、やはり繰戻しによる還付を請求することが有利な判断です。


8-2.繰戻し還付の適用を選択する際の実務上の留意点

納税者の状況を考慮して繰戻し還付の適用を受けることが有利で
あると判断されても、その適用を受けるためには、適用要件を満たさなければなりません。

具体的に次のような手順になります。

9.欠損金の繰戻し還付の適用の流れ

9-1.還付請求書の提出

欠損金の繰戻し還付の請求しようとする場合は、還付を受けようとする法人税の額、その計算の基礎その他省令で定める事項を記載した還付請求書を納税地の所轄税務署長に提出します。

9-2.税務署長による還付手続

9-1.により還付請求書の提出があった場合、税務署長は、その請求の基礎となった欠損金額その他必要な事項を調査することになります。したがって、この制度の適用を受ける場合、原則として税務調査が行われることになります。

この場合の調査は、必ずしも実地調査を意味するものではなく、机上調査で済まされる場合もあるが、やはり納税者にとって、税務調査による負担は大きいものであるケースが多いです。

ですから、納税者の資金繰りの状況や今後の展望を考慮し、務調査に対応してでも還付の適用を受ける状況であるならば、欠損金の繰戻し還付制度を選択するなどの判断をすることが現実的であると考えられます。

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