平成27年度税制改正の狙い

画像の説明

平成27年度の税制改正大綱が発表されました。まだ大綱であり、法律にはなっていませんが、順次解説していきます。

今回の大綱は量は多いものの、それほど大きな増税改正があるわけではありません。ですから、中身としては少し薄いものとなっているようです。

「税制改正大綱より」

法人税改革は、 欧米各国も行ってきたように「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」ことにより、法人課税を成長志向型の構造に変えるものである。

今回の税制改正の大きな目的としては、日本が少子化となり、日本国内のマーケットが縮減していくなかで、日本の大企業が国際マーケットにしていって、世界で戦える企業にしなければいけない、そのためにはライバル国である中国、韓国の実効税率が25%以下となっているので、日本だけが35〜36%とするわけにはいかない、世界的な優良企業のアジア拠点が軒並みシンガポールにあるということになっているので、日本国内に誘致できるような環境を作っていき、海外からの雇用者・移住者を増やすことによって人口減少を食い止める、ということが目的となります。

ただし、税理士の立場からいうと、税理士のお客様である中小企業が増税になってしまったら大変です。

中小企業の軽減税率の増加や減価償却の改正など色々な動きがあり、早めに正確な情報をキャッチすることが必要です。

税率が下がるのであれば、課税を繰り延べたほうがメリットとなりますし、所得税があがり、法人税が下がるのであれば、法人に内部留保をし、オーナーに渡せるようなこと(例えば退職金など)ができれば、合法的に節税ができるものと考えられます。

今回の改正は平成27年と平成28年の2段階で税率を下げるわけですが、まだまだ安倍内閣が目指している実効税率20%台は実現できていません。

おそらく4年くらいかけて20%台を目指すということになると考えられます。

そのための財源確保が必要となりますが、外形標準課税の見直しや受取配当金の益金不算入制度の見直し、欠損金制度の見直しなどが検討されています。

税制改正大綱より

I 平成27年度税制改正の基本的な考え方
[1] デフレ脱却・経済再生に向けた税制措置 (大綱2頁~5頁)
1 成長志向に重点を置いた法人税改革
(1) 改革の趣旨

今般の法人税改革は、 欧米各国も行ってきたように「課税ベースを拡大しつつ税率 を引き下げる」ことにより、法人課税を成長志向型の構造に変えるものである。


すなわち、より広く負担を分かち合い、「稼ぐ力」のある企業や企業所得の計上に前向き な企業の税負担を軽減することで、企業の収益力の改善に向けた投資や新たな技術開 発等への挑戦がより積極的になり、それが成長につながっていくように、法人課税の 構造改革を行うものである。


この改革を通じて、企業が収益力を高めれば、継続的な 賃上げが可能な体質となり、より積極的な賃上げへの取組みが可能となる。


これまで、 企業に賃上げを促すために所得拡大促進税制を創設・拡充してきたが、今回、さらに その要件を緩和するとともに、 法人事業税の外形標準課税においても、新たに所得拡 大促進税制を導入し、企業の賃上げへの動き出しを一層力強く後押しする。


経済界においては、今般の改革がもたらす経営環境の変化も踏まえ、収益力や生産 性の向上に向けて一層の企業努力を行い、得られた利益を従業員や株主に適切に還元 するとともに、取引先企業への支払単価を改善することを通じて、経済の好循環の実 現に向けて積極的に貢献していくことを求めたい。


(2) 改革の枠組み


平成27年度を初年度とし、以後数年で、法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す。


その際、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保
するため、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により、恒久財源をしっかりと確保する。


税率引下げと課税ベースの拡大等の改革は、大きく分けて2段階で進めることとし、以下のとおり取り組む。


1 第1段階として、平成27年度税制改正において、欠損金繰越控除の見直し、受 取配当等益金不算入の見直し、法人事業税の外形標準課税の拡大、租税特別措置の 見直しを行う。


これらの改革に当たっては、地域経済を支える中小法人への影響に配慮して、大法人を中心に改革を行う。


また、賃上げへの配慮措置や地域で雇用を 支える中堅企業の負担増の軽減措置、改革を段階的に実施する等の激変緩和措置も 講ずる。


法人税については、平成29年度にかけて段階的に財源が確保されることとなる が、経済の好循環の実現を力強く後押しするために税率引下げを先行させることとし、平成27年度から、現行の25.5%から23.9%に引き下げる。

また、大法 人向けの法人事業税所得割(地方法人特別税を含む。)については、外形標準課税 の拡大にあわせて、現行7.2%の標準税率を、平成27年度に6.0%、平成28 年度に4.8%に引き下げる。

これらにより、国・地方を通じた法人実効税率(現行 34.62%) は、平成27年度に32.11%(▲2.51%)、平成28年度に 31.33%(▲3.29%)となる。


2 第2段階として、平成28年度税制改正においても、課税ベースの拡大等により財源を確保して、平成28年度における税率引下げ幅の更なる上乗せを図る。


さらに、その後の年度の税制改正においても、引き続き、法人実効税率を20%台まで 引き下げることを目指して、改革を継続する。


このため、以下をはじめとして、幅広く検討を行う。


イ 大法人向けの法人事業税の外形標準課税の更なる拡大に向けて、平成27年度 税制改正の実施状況も踏まえつつ、引き続き検討を行う。


その際、分割基準や資 本割の課税標準のあり方等について検討する。あわせて、外形標準課税の適用対 象法人のあり方についても、地域経済・企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行う。


ロ 生産性向上設備投資促進税制(平成28年度末期限)、所得拡大促進税制(平 成29年度末期限)及び研究開発税制(増加型・高水準型は平成28年度末期限) については、経済の好循環の定着状況等を踏まえつつ、取扱いについて検討を行う。


ハ 減価償却については、中小事業者等における設備投資への影響に留意しつつ、 経済の好循環の定着状況等を見極めながら、定額法への一本化について、検討を行う。


ニ 法人事業税の損金不算入化について、税の性格上は損金算入が自然であるとの 考え方もある一方、地方独自の減税措置の効果が国税等の課税ベースの変動によ り減殺されてしまうことや、各税目の税負担が納税者にとって不明確となることを考慮しつつ、検討を行う。


ホ 租税特別措置については、毎年度、期限が到来するものを中心に、廃止を含め てゼロベースで見直しを行う。


3 全法人の99%を占める中小法人(資本金1億円以下)については、軽減税率や 各種の政策税制(例えば、中小企業投資促進税制)が適用されるほか、欠損金繰越 控除の控除限度、特定同族会社の留保金課税、法人事業税の外形標準課税をはじめ とする多くの制度において、大法人と異なる扱いが認められている。


中小法人の実態は、大法人並みの多額の所得を得ている法人から個人事業主に近い法人まで区々であることから、そうした実態を丁寧に検証しつつ、資本金1億円 以下を中小法人として一律に扱い、同一の制度を適用していることの妥当性につい て、検討を行う。


その上で、中小法人のうち7割が赤字法人であり、一部の黒字法 人に税負担が偏っている状況を踏まえつつ、中小法人課税の全般にわたり、各制度の趣旨や経緯も勘案しながら、引き続き、幅広い観点から検討を行う。