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所得税 個人事業の貸倒損失に関する税務調査ポイント
【目次】
所得税法においては、基本的に次の3つの基準に従って、貸倒損失を認識します。
1.法律的に債権が消滅している場合(所得税基本通達51-11)
貸金等について次に掲げる事実が発生した場合には、その貸金等の額のうちそれぞれ次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入します。
イ)更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があったこと。
→これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
ロ)特別清算に係る協定の認可の決定があったこと。
→この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
ハ)法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、次に掲げるものにより切り捨てられたこと。
→その切り捨てられることとなった部分の金額。
a)債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
b)行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が a)に準ずるもの
ニ)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し債務免除額を書面により通知したこと。
→その通知した債務免除額
2.実質的に債権が消滅している場合(所得税基本通達 51-12)
貸金等につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できな いことが明らかになった場合には、当該債務者に対して有する貸金等の全額につい て貸倒れになったものとしてその明らかになった日の属する年分の当該貸金等に係 る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入します。
この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとすることはできません。
なお、保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできません。
3.形式的に債権が消滅している場合(所得税基本通達51-13)
債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金そ の他これに準ずる債権を含まない。以下この項において同じ。)の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れになったものとして、当該売掛債権に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入することができます。
イ)債務者との取引の停止をした時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時より後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後 1 年以上を 経過したこと(当該売掛債権について担保物のある場合を除く)。
ロ)同一地域の債務者について有する売掛債権の総額がその取立てのために 要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支 払を督促したにもかかわらず弁済がないこと。
なお、1の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したため、その後の取引を停止するに至った場合を指すため、例えば不動産取引のように、たまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、その取り扱いの適用はありません。
【貸倒損失の認識について】
個人事業者であれば、資金繰りが厳しい場合も多々あり、得意先からの回収が滞っているような状況では、そのような債権を早期に貸倒損失を計上したいものです。
しかし、税務署側は上記の通達により判断を行うため、税務調査の際は見解の相違が生じる可能性があります。
そのような場合、クライアントが主張している貸倒損失の計上を勝ち取るために、貸倒損失として処理した根拠を報告書等にまとめて税務署側に提出することで、一定の効果が期待できます。
【資産負債アプローチ】
個人においては、所得金額を算定する基礎となる収入金額と経費の額が、重要視さ れる傾向にあります。
そのため損益計算書の作成はきちんと行われる反面、資産・負債などの管理や貸借対照表の内容が不十分であるケースが多いです。
個人事業者が仮に何年間も赤字申告が続くような場合でも、税務調査において本当に 赤字であったかどうかを、貸借対照表を使用して確認される場合もあります。
資産・負債の管理や適正な貸借対照表の作成を心がけてください。
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