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長期の工事には工事進行基準 個人事業の売上・仕入関係を利用した節税
【目次】
1.長期の工事には工事進行基準
物の引渡しがある請負契約の場合、完成した物を引き渡した日に売上げを計上するのが原則で、これを「工事完成基準」といいます。
ところが、長期に渡る請負工事では、工事完成基準を適用すると、工事期間中は売上げが計上されず、工事の完成引渡しとともに、一時に多額の売上げが計上されるという不合理な結果となってしまいます。
しかも、所得税は超過累進税率となっているため、一度に多額の利益が生じると、税負担が大きくなってしまいます。
そこで、長期の請負工事の売上計上は、工事完成基準のほか、工事進行基準も選択適用できることになっています。
これは、年末にどの程度工事が進行しているかを見積り、その進行度合いに見合った工事利益の一部を、その年に計上する方法です。
工事進行基準を採用した場合、早めに売上げを計上することになりますので、売上計上をできるだけ繰り延べるという節税の考え方とはそぐわないように思えます。
ですが、個人事業では、ある年にだけ多額の利益が出るよりも、毎年平均的に利益が出たほうが税負担は軽くなります。
よって、工事進行基準を採用することで、利益を平準化したほうが有利なのです。
なお、工事進行基準は、すべての工事に適用しなければならないというわけではなく、個々の工事ごとに選択適用することができますし、事前の届出等も必要がありません。
したがって、毎年の利益がどのくらい出るかを見積もって、工事進行基準を選択するかどうかを判断してください。
2.工事進行基準が適用できる条件
①着工事業年度中にその目的物の引渡しが行われない工事であること
②利益が生じる工事であること
損失が見込まれる工事については、対象となりません。
③いったん工事進行基準を選択した工事については、毎年継続して適用すること
なお、その後損失が生ずると見込まれるに至った場合、すでに計上した工事利益が最終の予想利益を超えることとなった場合には工事進行基準は適用できなくなります。
3.工事進行基準を適用した場合の工事利益に対応する未収金
工事(製造を含みます。)の請負に係る収入金額及び費用の額につき工事進行基準の方法により経理している場合には、たとえ収入金額に対応する工事収入金を未収金として計上しているときであっても、その工事の目的物の引渡しがあるまでは、当該未収金は貸金に該当しません。
これは、その年に計上する工事進行基準の収入金額を未収金として計上したとしても、その未収金は対外的な請求権としての性質を有していないからです。
4.工事の目的物について個々に引渡しが可能な場合
長期大規模工事に該当するかどうかは、一の契約ごとに判定します。
請け負ったった工事が長期大規模工事に該当するかどうかの判定は、その契約ご
とに行うのであるが、複数の契約書により工事諸負契約が締結されている場合であって、その契約に至った事情等からみてそれらの契約全体でーの工事を請け負ったと認められる場合には、その工事に係る契約全体を一の契約として判定を行います。
この長期大規模工事の判定に当たって、例えば、工事の請負に係る契約において、複数棟から成る一団の団地の建設を一括して諸け負い、その目的物たる建物を1棟完成するごとに引き渡すというような場合について、その工事が長期大規模工事に該火するかどうかの判定をその団地全体で行うのかあるいは個々の建物ごとに行うのかという問題があります。
このような一団の団地の建設は、建物の建設だけでなく、その敷地内に公園、給水棟、駐車場等の施設が含まれており、通常はそれらの工事全体を一つの工事として請け負ったとみることが相当であると考えられます。
したがって、その契約に係る目的物の一部について個々に引き渡すことが可能であっても、長期大規模工取に該当するかどうかは、そのーの契約全体で判定を行うこととなります。
ーの工事に係る諸負契約は、通常一の契約書により締結されますが、実際に工事請負契約の締結に当たっては、契約当事者双方の便宜等から、個々に独立した複の契約が1枚の契約書により一括して締結されているという場合があります。
このような場合には、 1枚の契約書により締結されているという形式に捕らわれることなく、その契約書の実態が個々に独立した複数の契約を1枚の契約書に一括して記載しているに過ぎない場合、その個々の契約ごとに長期大規模工事に該当するかどうかの判定を行うことができます。
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