青色申告等の届出による節税 法人の設立による節税
【目次】
法人を設立した後、最初の税務上の選択は、青色申告の届出や減価償却方法の届出などの各種の届出をするかしないかということです。そのうち最も重要なのが青色申告の届出ですが、各種の届出をしておくと有利な取扱いが受けられますので、必ず提出することをおすすめしています。各届出書ごとに期限が定められていますので、期限内に届出をしないと届出による特典が受けられませんので、ご注意ください。
1.青色申告制度とは
法人税は、納税義務のある法人が、自分でその所得の金額及び税額を計算し、それを記載した申告書を提出して税を納付するという申告納税制度が採られています。この申告書には、青色の用紙を用いてする申告書と、白色の申告書があります。税務署から送付されてくる確定申告書用紙が青いもので送付されてきます。
青色申告とは、青色の申告書を用いて申告することですが、そのためには定の帳飾書類を備え、これに日々の取引を正確に記載し、その結果に基づいて申告をする義務があります。
その反面、所得の計算上一定の特典が受けられるとともに、その申告については、帳簿書類を調査したうえでなければ更正できない等の特典があり、適正な記帳による正確な申告納税を奨励することを目的とした制度です。
法人は、税務署長の承認を受けた場合には、その提出する法人税の申告書を青色申告書によることができます。
青色申告書の提出の承認を受けようとする法人は、青色申告書を提出しようとする事業年度の開始の日の前日までに、「青色申告書提出の承認申請書」を税務署長に提出しなければなりません。この期限までに提出できないと、その事業年度では青色申告書により確定申告書を提出することができなくなり、欠損金なども繰り越せませんので、期限は必ず守るようにしてください。
新たに設立した法人について、設立第1期から青色申告書を提出しょうとするときは、その設立の日から3ケ月を経過した日とその事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までに申請書を提出すればよいことになっています。
税務署長は、青色申告の承認申請書の提出があった場合には、その申請をした法人に対して、書面で承認又は却下の通知をすることになっています。承認を受けようとする事業年度終了の日までに、承認又は却下の通知がなかったときは、承認があったものとみなされます。
2.青色申告法人の義務と特典
青色申告法人には、次のような義務と特典があります。
2-1.青色申告法人の義務
青色申告法人は、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、その帳簿書類を保存しなければいけません。
帳簿書類には、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行わなければなりません。
帳簿として少なくとも、仕訳帳及び総勘定元帳を備え付け、仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載し、総勘定元帳には、その勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目及び金額を記載しなければなりません。会計ソフトに取引を入力することになるのが通常ですが、その摘要には5W1Hを意識して入力するようにしてください。いつ、どこで、だれが、なにを、どうした、これらが明らかになっているだけで税務調査時の調査官への説明もスムースにできますし、自社の記録にも
決算に際しては、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表を作成しなければなりません。
これらの帳節書類等は整理して、原則として9年間保存しなければなりません。
2-2.青色申告法人の特典
青色申告法人には、次のような所得計算上の特典と更正及び不服申立等の特典があります。
2-2-1.所得計算上の特典
イ 欠損金の繰越控除
青色申告の最大のメリットは、欠損金の繰越控除が9年間にわたって受けられることです。
とりわけ設立間もない会社の場合には、初期投資で出費がかさみ、赤字になることがほとんど。また、会社を長く続けているうちには、思いがけず大きな損失(災害による損害や貸倒損失の計上など)によって、大赤字になるかもしれません。
このようなとき青色申告であれば、翌年度に利益が出たとしても、その年の所得と前年度の赤字分を相殺することができます。それでも赤字が残る場合にはさらに翌年度、さらに翌々年度…というように順に控除していき、最大9年間にわたって所得から控除できるようになっています。
つまり繰越控除などによって申告書上で赤字が続いている間は、法人税はもちろん、住民税の法人税割部分も事業税もかかってきません。納める税金としては、住民税の均等割部分(最低7万円です。)だけとなります。
平成23年度税制改正により、損金算入できるのは欠損金の80%に制限されましたが、中小企業はこの制限にはあたりません。
口 欠損金の繰戻しによる法人税額の還付
ハ 各種特別償却
ニ 各種法人税額の特別控除
ホ 各種準備金の積立て
2-2-2.更正及び不服申立等の特例
イ 推計課税の制限
白色申告法人については、会社の収入や支出の状況、財産や債務の増減の状況、生産量や販売量、従業員数その他の規模などによって、所得金額を推計して課税されることがありますが、青色申告法人については、このような推計課税が制限されています。
口 更正の理由の付記
青色申告法人については、帳簿書類を調査して、計算に誤りがあるときだけ正当な所得金額などに是正することができますが、この場合に、税務署からの更正通知書にその理由を附記することになっています。
ハ 更正があった場合の異議申立てと審査請求の任意選択
3.青色申告か白色申告かの選択をどのように判断するか
白色申告法人についても、所定の帳簿を備え、これにその取引を一定の方法により保存しなければなりません。
ただし、帳簿の種類や様式は法定されていませんし、仕訳帳や総勘定元帳の作成は義務付けられていませんが、平成26年分からは事業所得等の金額が300万円を超える場合、記帳が義務付けられました。
白色申告法人であれば簡易的な記帳が認められますが、現在ではほとんどの法人の記帳はパソコンで行われるため、白色申告と青色申告の事務負担に実質的な差異はほとんどありません。したがって、青色申告を選択することにより、その特典を受け、法人税の負担を軽減するのが得策です。
4.届出書の提出期限(設立時)
青色申告の届出書の提出期限は、法人の設立後3ケ月以内です。設立後3ケ月を過ぎてしまうと、設立第1期は白色申告法人を選択したことになり、青色申告の特典が受けられなくなってしまい、所得がマイナスだった場合青色であれば繰り越せたはずの青色欠損金が繰り越せなくなってしまいます。
設立の日から設立第1期末日までの期間が3ケ月に満たない法人については、特に注意が必要です。この場合には、その事業年度終了の日の前日までに申請書を提出する必要があります。
承認申請を失念して第2期目に入ってしまうと、第2期も青色申告の適用ができなくなってしまいます。青色申告の届出は、第2期の開始の日の前日までにしなければならないからです。
青色申告の適用が受けられないと、法人の設立当初に赤字が予想される場合には、その繰越しができなくなってしまいますので留意してください。申請書については、事業年度開始と同時に提出されることをおすすめしています。
5.青色申告の承認の取消し
青色申告の届出がしてあっても、帳簿書類の備付け等がされていない場合には、それが取り消されることがあります。
この場合、その事実があった事業年度にさかのぼって取り消されることになり、そうなると取り消された事業年度以降の欠損金の繰越しができなくなりますので注意してください。
青色申告書の提出の承認を受けた法人について、次のいずれかに該当する事実がある場合には、税務署長は、それぞれに掲げる事実があった事業年度までさかのぼってその承認を取り消すことができるものとされています。
- 帳簿書類の備付け、記録又は保存が所定したところに従って行われていないこと
- 帳簿書類について税務署長の指示に従わなかったこと
- 帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体にっいてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること
- 確定申告書をその提出期限までに提出しなかったこと
取消しがあったときは、その取り消された事業年度開始の日以後取消しのあった日までの間に既にその法人が提出した申告書は、青色申告書ではなかったものとみなされます。
なお、青色申告の承認の取消しを受けた日以後1年以内に、青色申告の承認申請書を提出した場合には、その申請を却下してよいことになっています。
【税務署への届出書提出書類一覧】
届出書の種類 | 提出期限 |
---|---|
①法人設立届出書 ~必要な添付書類~ (a)定款等の写し(会社保存用定款のコピー) (b)登記簿謄本(法務局で交付を受けたもの) (c)株主名簿(持分会社の場合は社員名簿)の写し (d)現物出資者名簿 (e)設立時の貸借対照表 (f)設立趣意書 | 設立後2ヶ月以内 |
②給与支払事務所等の開設届出書 | 開設後1ヶ月以内 |
③源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 適用を受ける月の前月まで |
④棚卸資産の評価方法の届出書 | 確定申告書の提出期限まで |
⑤有価証券の1単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書 | 確定申告書の提出期限まで |
⑥減価償却資産の償却方法の届出書 | 確定申告書の提出期限まで |
⑦法人設立時の事業概況書 | 確定申告書の提出期限まで |
⑧青色申告の承認、申請書 | 設立後3ケ月以内 |
⑨申告期限の延長の特例の申請 | 事業年度終了の日まで |
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