社員旅行を行うことによる節税 売上と費用関係の節税
【目次】
1.福利厚生費として損金算入できる社員旅行の要件とは
会社の慰安旅行に参加した従業員が、会社から受ける旅行費用相当額の経済的利益は現物給与となり、給与所得として課税されるのが原則です。
なぜなら、金銭以外の物又は権利その他の経済的な利益の価額については、所得の金額の計算上収入金額とすべきとされているからです。
ただし、使用者が役員又は使用人のレクリエーョンのために社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用を負担することによる経済的利益については、課税しなくてもいいとされています。
したがって、法人がこれらの経済的利益を負担した場合には、福利厚生費として処理することができます。
これは、一般的に行われているレクリエーションの費用による経済的利益の額は少額であり、少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追求の原則が税法にはあるからです。
しかし、どんな社員旅行でも必ず損金に算入できるか、というともちろんそんなことはなく、一定の要件を満たした場合に損金に算入することができます。
社員旅行について、法人が負担した費用が福利厚生費として取り扱われるのは、
①旅行期間が4泊5日以内であること
②旅行に参加した人数が全体の人数の半分以上であること
の形式要件を満たしているものに限られています。
この要件を満たしているものについては、原則として、給与課税は行われないことになります。
2.社員旅行費用の少額、多額の判定について
社員旅行の費用について給与課税が行われないのは、その経済的利益の額が小さいからです。
したがって、経済的利益の額が高ければ、たとえ4泊5日以内、全体の人数の半分以上の参加という形式要件を満たしていても課税されることになります。
ただし、通達には会社の負担金額がいくらまでなら福利厚生費として処理できるという旦体的な金額基準は示されていません。
そのため、 1人当たりの会社負担額がどの程度の金額であれば、福利厚生費として損金算入できるのか悩ましいところです。
3.社員旅行の1人当たりの負担額はいくらまでか
過去の裁決事例等から考えると、 1人当たり負担額が10万円程度以下なら原則として問題なし、10~15万円では給与課税の可能性あり、15万円を超えると給与課税の可能性が高くなる、ということができるものと考えられます。
1人当たりの負担額が10万円を超えた場合に給与課税されるかどうかは、その金額だけでなく、「当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合などを総合的に勘案して」判定されることになります。
また、旅行費用については、シーズン中は費用が高くなり、シーズンオフには費用が安くなる傾向がありますので、この点についても考慮する必要があります。
4.社員旅行に参加しなかった従業員に金銭を支給すると給与課税
社員旅行を行った場合に、単純に行きたくないとか、仕事が忙しいなど様々な理由で不参加者が出ることがあります。
この場合に、自己の都合により参加できなかった従業員に対して、社員旅行の会社負担額相当の金銭を支給すると、その金銭の支給を受けた不参加者だけでなく、社員旅行に参加した従業員についても、給与課税が行われてしまいます。
社員旅行による経済的利益が課税されない理由の1つに、従業員等は雇用されている関係上、必ずしも希望しないレクリエーション行事に参加せざるを得ない、つまりほぼ強制であり、自分の意志とは関係がなく参加しなくてはいけないということがあります。
もし、自己の都合により参加できなかった従業員に対して、社員旅行の費用相当額の金銭を支給するとすれば、従業員は「社員旅行に参加する」か「現金でもらう」かの選択ができることになり、社員旅行による経済的利益を課税しないとする理由がなくなってしまうことになります。
ただし、例えば保安要員のように、法人の業務の必要に基づき参加できなかった者に対して金銭を支給した場合には、その者についてだけ給与課税が行われ、社員旅行に参加した従業員等について課税されることはありません。
5.給与課税される場合の問題点
社員旅行の費用が給与として課税された場合、法人税法上は、福利厚生費として損金に算入することはできなくなりますが、原則として給与として損金に算入することができますので、法人が納める法人税額には変わりはありません。
ただし、役員が社員旅行に参加している場合、その役員に対する旅行費用は臨時の役員給与となりますので、損金に算入できなくなる部分が生じてしまいます。
また、給与となると、法人には源泉徴収義務が生じてきます。社員旅行に参加した従業員には、思いがけない所得税の負担が発生してしまいます。
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