社葬を行うことによる節税 売上と費用関係の節税
【目次】
1.葬儀の費用を会社で負担すると、損金に算入できる場合がある
法人の役員等が死亡した場合に、葬儀の費用を会社で負担する「社葬」が行われることがあります。
本来、人の死亡に伴う葬儀は、個人の行事であると考えられますので、遺族が負担すべき葬儀の費用を社葬において法人が負担した場合には、法人がその遺族が負担すべきであった葬儀費用を肩代わりしており、遺族としては利益を享受したことになりますから、法人からその遺族に対する贈与(遺族の一時所得になる。)として取り扱われるのが原則です。
遺族が会社の役員や従業員であれば、遺族に対する給与として取り扱われます。
遺族が役員なら臨時の給与として損金不算入となり、従業員であれば賞与として損金に算入されることになります。
もっとも、故人が生前役員等として会社に功労があった場合に、その功労に対してとして会社が主催する社葬には、福利厚生的な意味合いとして行うこともあるでしょう。
そこで法人が、その役員又は使用人が死亡したため社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる金額は、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができるとされています。
社葬の費用が法人の損金に算入されるかどうかのポイントは、次の二点です。
1-1.社葬を行うことが社会通念上相当であること
「社葬を行うことが社会通念上相当」であるかどうかは、死亡した役員等の死亡の事情、生前における当該法人に対する貢献度合等を総合勘案して判断することになります。
1-2.社葬のために通常要すると認められる金額であること
社葬のために通常要すると認められる金額とは、会葬のための費用と一般には考えられています。
例えば、社葬のための会場使用料等の費用、購入した花輪の費用、新聞広告費などです。
したがって、明らかに故人の遺族が負担すべきものと考えられる費用、例えば、密葬の費用、お通夜の費用、墓石・仏壇・位牒等の費用、戒名料、墓地購入費用、法要に要する費用などは、ここには含まれません。
また、告別式の当日に会葬者に対して贈る引出物は、香典の返礼と考えられますので、社葬のために通常要するものとは認められません。
ただし、会葬返礼品としてハンカチ程度の少額なものであれば問題ないのではないでしょうか。
2.香典等は遺族の収入
社葬費用の取扱いに関連して、会葬者が持参した香典等がどのように取り扱われるのかも問題になります。
社葬を行ってその費用を法人が負担する以上、会葬者が持参した香典等は当然に法人の収入として計上すべきであるという老え方もあります。
これに対し、会葬者が持参する香典等は、遺族に対する弔意のしるしとして故人の霊前に捧げるものであるから、遺族に対する弔慰金等として遺族の収入とし、法人の収入とするまでもないという考え方もあります。
社会通念上からすれば、香典等は遺族の収入とするのが常識であり、通達でも「会葬者が持参した香典等を法人の収入としないで遺族の収入としたときは、これを認める。」としています。
なお、香典等の金額がその故人の社会的地位、持参者との関係に照らして社会通念上相当と認められるものについては、所得税は課税されません。
3.相続税上株価算定をする上での社葬費用のメリット
取引相場のない株式を評価するに当たり、法人税法上損金の額に算入された社葬費用については、 1株当たりの純資産価額の計算上、負債として取り扱っても差し支えないとされています。
1株当たりの純資産価額の計算上控除する負債は、課税時期において現に存する債務で確実なものとされていますが、被相続人に係る葬式費用は債務として相続税の課税価格から控除でき、社葬費用も同様に考えられるからです。
非上場の同族会社が社葬を行うことには、法人税だけでなく相続税についてもメリットを享受できるとご理解ください。
4.葬儀後に行われる仏事の参会者に供する食事に要する費用は社葬費用には該当しない
社葬費用との関係で、葬儀後に行われる「おとき」(仏事の参会者に供する食事)の費用も法人の損金に算入できるものと考えられがちですが、葬儀後に行われるおときの費用は社葬費用には該当しません。
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