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長期割賦販売等の延払基準の適用 売上と費用関係の節税


【目次】

1.延払基準とは

機械設備、船舶、車両などを販売する場合、販売する資産の種類によっては、その時々の相手方との個別契約により、長期割賦販売等(その代金を長期にわたり分割払いとする販売)が行われることもあります。

長期割賦販売等についても、引渡基凖により、その資産の譲渡等をしたときに収益を計上するのが原則です。

しかし、長期割賦販売等の場合は、その販売金額が大きくなる場合が多く、収益の計上を原則通り行うと売上が大きく計上されてしまい、その結果所得が多額に計上され、納税資金の確保が難しくなることがあります。

そのため長期割賦販売等による資産の販売、工事の請負又は役務の提供に係る費用及び収益の計上については、

延払基凖

を選択適用できることになっています。

延払基凖とは、長期割賦販売等による利益の額を賦払金の支払期日の到来の都度、その賦払金額に応じて計上する方法です。

延払基凖を適用するためには、確定した決算において延払基準の方法により経理を行う必要があります。

また延払基準は、割賦販売等をした個々の資産等ごとに選択適用することができますが、いったん延払基準を適用した資産については毎期継続して適用しなければなりません。

継続適用をしなかった場合には、その取引については以後延払基準を適用することはできなくなりますが、他の延払基準が適用されている長期割賦販売等に影響はありません。

なお、長期割賦販売等に該当する工事であっても工事進行基準の対象となる長期大規模工事については、延払基凖を適用することはできません。

2.長期割賦販売等とは

延払基凖が適用される長期割賦販売等とは、次の条件により行われる資産の販売、工事の請負又は役務の提供をいいます。

①月賦、年賦その他賦払の方法により3回以上に分割して対価の支払を受けること(3回以上の分割払い)

②その資産の販売等に係る目的物又は役務の引渡し又は提供の期日から最後の賦払金の支払期日までの期間が2年以上であること(2年以上の賦払期間)

③その契約において定められている資産の販売等の目的物の引渡しの期日までに支払の期日の到来する賦払金の額の合計額がその資産の販売等の対価の額3分の 2以下であること(3分の2以下の頭金)

このうち、①の「月賦、年賦その他賦払の方法」とは、支払を受けるべき金額の支払期日が頭金の履行期日を除き、月、年等以下の期間を単位としておおむね規則的に到来し、かつ、それぞれの履行期日において支払を受けるべき金額が相手方との当初の契約において具体的に確定しているものをいいます。

各履行期日に支払を受ける金額は、契約で確定していればよく、必ずしも均等若しくは逓減又は逓増するものであることを要しません。

3.延払基準の対象となる取引

延払基凖の対象となる取引には、資産の販売若しくは譲渡に限らず、工事の請負や役務の提供も含まれます。

また、次の取引は、資産の譲渡とは少し違いますが、納税資金に対する配慮により延払基凖の適用を認めるという趣旨から、資産の販売等に含まれるものとして取り扱われることになっています。

①借地権又は地役権の設定の対価として支払を受ける権利金その他の一時金の額で借地権の設定等により地価が著しく低下する場合の士地等の帳簿価額の一部の損金算入の規定の適用があるもの

②建物の賃貸借契約に際して支払を受ける権利金その他の一時金の額

③ノーハウの設定契約に際して支払を受ける一時金又は頭金の額

4.延払基準の方法

延払基準とは、長期割賦販売等による利益の額を賦払金の支払期日の到来の都度、その賦払金額に応じて計上する方法です。

この延払基凖により経理すれば、販売代金の回収期限に応じて、次のように収益及び費用を計上することになります。

4-1.各事業年度の収益の額

長期割賦販売等の対価の額 × 賦払金割合 = 収益の額

4-2.各事業年度の費用の額

(販売等の原価の額十販売等手数料)  × 賦払金割合 = 費用の額

(注1) 上記算式中の「賦払金割合」とは、次の算式による割合をいいます。
当事業年度中に支払期日が到来する賦払金の合計額÷長期割賦販売等の対価の額

分子の「当事業年度中に支払期日が到来する賦払金の合計額」は、

  • 賦払金のうち期末までに支払期日の到来する部分の金額(前期までに支払を受けている金額を除く。)
  • 賦払金のうち翌期以後に支払期日の到来するもので当期に支払を受けた金額

の合計額です。

(注2)販売等手数料には、法人が外部に支払う販売手数料のほか、その法人の使用人たる外交員等に対して支払う歩合給、手数料等で報酬等に該当するものも含まれます。

しかし、その支払うべき手数料が賦払金の回収の都度その回収高に応じて確定することになっているものは含まれません。

5.販売手数料が確定していない場合

上記算式のように、延払基準を適用する場合の長期割賦販売等の費用のなかには、その販売等に要した手数料の額が含まれています。

ところで、その手数料が頭金又は一定回数までの賦払金が回収されることを条件に確定するか、又は販売数量等に応じて逓増することになっている場合には、その販売があった事業年度では手数料の額が確定しません。

この場合には、その後の事業年度になってその額が確定したり、又はその額が増加することになります。

このような場合には、既往の延払損益を修正するのが本来のやり方ですが、その確定又は増加した事業年度で行った他の長期割賦販売等に係る手数料に、その確定又は増加した手数料を加算することができます。

6.対価の額又は原価の額に異動があった場合

延払基準を適用している途中で、値増しや値引きにより対価の額又は原価の額に異動があった場合には、次の方法のいずれかを選択して適用することができます。

①その後の延払基準の計算を通じて調整する方法
②その値増しや値引き等に係る金額をこれらの事実が生じた事業年度の損益として計上し、延払基準の計算に影響させない方法

したがって、その値増しや値引きにより利益が増加することとなる場合には①を選択し、利益が減少することとなる場合には②を選択すると有利になります。

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