領収書のない費用は認められるか 決算と申告時における節税
【目次】
1.領収書の記載事項
領収書はつい軽く見られてしまいがちです。
これは大会社といえども例外ではなく、名だたる上場企業の社長が個人的な支出を会社の経費として回し、刑事事件になった例もあるほどです。
また、飲み屋の領収書を買い集め、経費の水増しをはかった会社がその不正を指摘された例、領収書に記載された金額を改ざんした例、飲み屋から金額の記載のない領収書をもらい、自分で金額を記載する例などたくさんあります。
そのほか少額資産がらみ(10万円未満の資産は費用計上できる)で、領収書を複数に分けて発行してもらっている場合も問題になることがあります。
たいてい同じ日付で、領収書の上にふられている番号が連番になっていることから発覚します。
領収書は取引を証明するものとして会社が備えておくべきものですが、逆に、領収書さえあれば、どんな出費も会社の経費として認めてもらえるのかというと、そう簡単にはいきません。
税務署にとっては領収書=証拠書類とはただちにならず、その領収書を作成した相手先も調査(これを反面調査といいます)し、その段階で問題がなければ、はじめて証拠書類として認められます。
税務調査は、領収書などの証ひょう類を調査することといっても過言ではありません。税務署に痛くもない腹を探られる前に、
1-1.相手先名が入っているか
以前はよく「上様」とだけ書かれた領収書がまかり通っていましたが、消費税の関係もあり領収書として認められません。同族会社の場合はこの上様領収書が問題になることがあります。社長が複数の会社を経営しているときには、その会社が儲かっているかどうかをみて、上様領収書を振り分ければ利益の操作ができてしまいますし、宛先がはっきりしていないので、外部から上様領収書を集めて会社に請求することができるし、社長など役員個人の費用を負担させることもできます。
こうしたことから、税務調査では上様領収書はチェックの対象になります。支出が社長がらみだとすると、とくに厳しくなります。もしも、領収書の振り分けなどの不正があると判断されると、支出した金額は損金と認められません。
1-2.金額が正しく入っているか
1-3.日付が明記されているか
1-4.領収書を発行した会社の名前、住所、会社の社判が押されているか
1-5.使いみちが書かれているか
いわゆるただし書きの部分。よくお品代としてというのがあるが、何に使ったのかがわからない。デパートなどで発行する領収書は日付のほか、商品名が記載されているのが一般的です。
上記の項目をきちんとチェックしましょう。
余談ですが、領収書には金額に見合った印紙が貼られているかどうかも重要な要件ですが、こちらは領収書を作成した側の問題ですので、自社が発行するときには印紙の貼付・消印を忘れないようにしてください。
2.領収書がなくても費用とできる場合
いまではほとんどのお店で領収書を発行してくれますが、電車賃や公衆電話代など領収書をもらえないケースも少なからずあります。
領収書がなけれぱ費用として処理できないかというとそうではありません。
会社で支払い証明書などを作成し、それに支出を記入し、業務に必要であると認められれば費用とすることができます。
支払い証明書には、誰がなんの目的で支出したのかと、誰に対して、いつ、どこで、なにを、そして金額はいくらかが、わかるように記録します。
領収書は会社の外部が発行するものなので、支出の証拠として信頼性は高いものがあります。
ところが、支払い証明書は会社が内部でつくるものなので、信頼性が高いとはいえません。それでなおかつ、第三者を納得させなければならないので、きちんとした支払い証明書をつくる必要があります。
【支払証明書サンプル】
3.社長絡みの支出
どの会社も従業員に対しては、領収書のない支出などは認めていないはずです。したがって立替金は領収書と引換えが原則となります。
経理もそれなりにチェックしますから、一般の経費などではそうそう不正も起きにくいといえます。
ところが社長がらみの支出となると、とたんに社内チェックが甘くなる傾向にあります。
そのため、役員が支出するものに関しては税務署のチェックも厳しくなっていますから扱いには注意してください。
加えてそれが接待費であったり、旅費交通費などである場合にはさらに厳しくなってきます。
たとえば接待で飲み食いし5万円の領収書があるからといって、それが税務上の損金になるかといえばそう簡単にはいきません。
交際費として認められるには、相手先の会社名と実際に接待した者の氏名などがきちんと記録に残っていることが必要です。
これらの記録がない場合には使途不明金となり、会社の損金には算入できなくなりますので注意してください。
また、その支出が社長がらみのものである場合には、社長個人への役員賞与とみなされてしまい、所得税が課せられてしまいます。
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