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個人から不動産管理法人などへ不動産を移転する


【目次】

1.不動産管理会社設立による相続対策

不動産管理会社設立による相続対策は、推定被相続人に集中してしまっている不動産収入の分散させることによる所得税対策と、その収入が推定被相続人に累積することを防止することにより相続税対策となり、長期的に見ると大きな効果があがることがあります。

2.所得税の節税

所得税の節税は、賃貸不動産の所有者(以下「オーナー」。)から不動産管理会社に管理料を支払い、かつ、管理会社の役員をオーナーの家族にし、その役員に給与を支払うことにより、不動産管理会社を通じて、オーナーの不動産収入をオーナーの家族に、合法的に分散することにより超過累進税率の適用を低く抑えることになり節税に役立ちます。

3.相続税の節税

相続対策としては、原則として不動産管理会社の出資は、オーナーやオーナーの配偶者が出資することを避け、オーナーの子等による株主構成とします。

そして、不動産管理会社にオーナーの所有する高収益な不動産を売買などの方法により移転を図れば、より多く家族役員などへ給与の支払が可能となり、相続人への金融資産の移転が実現し、相続税の納税資金の準備に役立てることができます。

4.不動産管理会社を設立する主なデメリット

不動産管理会社を設立する主なデメリットは以下のとおりです。

① 個人所得と法人所得とに区分して計算する必要があり、所得計算が面倒になります。

② 法人に対して赤字の場合でも最低限の税負担(地方税の均等割) が生じます。

③ 法人税の申告等のため、税理士事務所などへ顧問料報酬が必要となります。

5.不動産管理会社の運営形態

不動産管理会社の運営形態は、大きく次の三つに区分されます。


6.管理料徴収方式

不動産管理会社はオーナーが不動産を第三者に賃貸する場合の仲介をし、以後の管理を行います。
(注)仲介を業務として行う場合には、宅地建物取引業としての許可を受ける必要があります。

【特徴】
①貸室等の賃貸借の契約者名義はオーナーであり、不動産管理会社は不動産の管理業務を行います。

②オーナーと不動産管理会社問において不動産管理委託契約が締結され、毎月管理業務の対価として月額管理報酬が支払われます。

7.不動産管理会社転貸方式

オーナーが所有不動産を不動産管理会社に一括で賃貸し、管理会社が第三者に転貸します。

【特徴】
①不動産そのものを不動産管理会社が一括で借り受けますので、オーナーは空室や賃貸トラブルの心配がありません。

②不動産管理会社の実質的な管理報酬は賃貸人からの賃貸収入とオーナーに支払う賃借料の差額となります。

③不動産管理会社は空室時の空家賃の支払などのリスクが高い分、管理料徴収方式よりも高い管理報酬を受け取ることができます。

8.不動産所有方式

不動産管理会社自身が賃貸用不動産を取得・建築し、管理運営の業務を行っていく方式です。

【特徴】
高収益の建物をオーナーから不動産管理会社が買い取り、オーナーの毎年の所得の軽減を図り、結果として、所得税対策と相続税対策に利用することができます。

この場合、不動産管理会社が所有していない不動産については管理料徴収方式及び転貸方式と併用して行うことが多いです。


9.不動産管理会社設立の留意点

9-1.会社法施行後の株式会社の機関設計

会社法施行(平成18年5月1日)に伴い、有限会社は新たに設立することができなくなりました。

中小企業の株式会社で「株式譲渡制限会社」では、以下の6パターンの中から自由な機関設計が選択可能です。

取締役会+監査役(従来の中小企業の基本パターン)
取締役会+会計参与
取締役会+監査役+会計参与
取締役1人のみ
取締役+監査役
取締役+会計参与

(注1)「株式譲渡制限会社」とは、すべての株式の譲渡を制限している株式会社のことをいいます。
(注2)取締役の員数は、取締役会を置かない場合は1人以上、置く場合は3人以上必要です。
(注3)取締役、監査役、会計参与の任期は最長10年とすることができます。
また、株式会社の設立手続が簡素化され、「類似商号」の規制がなくなり、「発起設立」では払込金の金融機関の保管証明は必要なく、残高証明で事足ります。
(注4)「発起設立」とは、発起人が設立時の資本をすべて引き受ける設立のことをいいます。

資産の保全や相続対策目的で設立される不動産管理会社では、家族役員への給与支給などを考慮して、①取締役会+監査役 か ⑤取締役+監査役が望ましいでしょう。

10.不動産管理会社設立における税務上の留意点

株式会社等を資本金1,000万円以上で設立する場合、消費税の納税義務は免除されませんので、不動産管理会社を設立する場合には、資本金をいくらにすべきか必ず検討する必要があります。

11.不動産管理会社の出資者は誰にすればよいか

優良な不動産を法人で間接所有し推定被相続人に集中する収入を分散させ、相続税負担を軽減すること等を目的に不動産管理会社を設立するため、その不動産管理会社にはどんどん内部留保が蓄積されていき、株価も上がっていきます。

そのため、株主は推定被相続人及びその配偶者(例えば、父母)がなることは避けて、なるべく下の世代である子や孫が出資することが大切です。

しかし、法人を通じた負担付贈与を行うことを目的とする場合には父母が出資する方法も検討に値します。

株式会社を設立するときの株主(出資者)は誰でもなることができます。

そのため複数の子による株主構成とする不動産管理会社の場合、会社が共有状態になり将来相続争いに発展しないか懸念される場合には、その不動産を管理する不動産管理会社の株主は、その不動産の承継予定者及びその家族を中心とする株主構成とします。

このことにより、会社の子同士の共有状況を避けることができ、将来の争続問題を事前に解決しておくことができます。

また、新設する不動産管理会社は必ずしもーつでなければならないということはなく、承継予定者の数や目的別に不動産管理会社を複数作ってもよいのです。

例えば、長男、二男、三男と3人の子がいれば、それぞれに 1社ずつ会社を設立し、承継予定者に残したい資産をそれぞれの会社が管理又は譲渡などの方法により移転するようにします。

実際に、ある法人が所有している不動産を分割型分割により3社に分割により移転し、それぞれの法人を長男、二男、三男を代表取締役として就任した事例があります。

12.具体例

具体的な手順は以下のとおりです。
①子が出資し資本金1,000万円未満で株式会社を設立します。
②父から高収益の賃貸建物を法人が時価で取得し、「土地の無償返還に関する届出書」を提出します。

土地の無償返還に関する届出書を地主の納税地の税務署長に提出した場合、法人に対して借地権の認定課税は行われませんので、忘れずに提出します。

この場合において、借地人が法人、地主が個人のケースは、支払地代の額が相当の地代に満たなくとも、法人・個人とも課税されません。

なお、無償返還の届出をして地代の収受を行っている土地(底地)の相続税評価額は、その土地の自用地評価額の80%となります。ただし、賃借人が土地所有者の同族会社の場合、土地の評価額の20%相当額が、その同族会社の株式等の評価に当たり純資産価額の計算上加算されますので、ご注意ください。

この場合の法人から個人へ支払う地代はその土地の固定資産税の2~3倍程度(賃貸借)がとします。また、売却する場合の建物の時価は、その建物の未償却残高(簿価)としますので、譲渡所得が発生しないことがほとんです。建物を簿価により法人に移すことで、親の優良な賃貸不動産の家賃収入が不動産管理会社に移りますので、毎年の所得税負担が軽減されます。

また、法人を通じて子たちに給料を支払うことにより、相続税の納税資金づくりにも役立ちます。


13.不動産管理会社の役員には誰がなるか

不動産管理会社は特定の不動産所有者である推定被相続人に収入が集中することに伴う所得税の累進税率を、管理料の収受などにより緩和することが主目的のーつです。

そのため、推定被相続人が役員に就任し給与の支給を受けるとせっかくの収入分散の効果が薄れることとなるので、極力役員に就任することは避けるようにします。

対外的な信用力などから、推定被相続人がその不動産管理会社の代表取締役になるべきではないかという疑問がありますが、相続税においては子が役員であっても何ら問題はありません。

14.役員給与の注意点

不動産管理会社の役員に親族などが就任し、役員給与を支払う場合、その役員給与の適否についても問題となります。

税務上不相当に高額であると判断されると法人の損金になりませんので、代表権の有無、常勤か非常勤かの別、実際の経営権があるかなど同業他社と比較して決定します。

15.管理料をいくらにすべきか

管理会社に支払う管理料が適正額であるかどうかが不動産管理会社の運営について重要です。

管理料の適正金額は、一律に賃貸収入の何パーセントという判断基準を用いるべきではありません。

管理の内容、管理委託物件の種類と規模、地域性その他様々な個別事情を総合的に判断して決める必要があります。

例えば、同族会社による管理の場合には、

①物件等への見回り・清掃等の頻度
②その他の管理の内容(毎日のように物件へ出向き、清掃等を行っているか)

などを考慮します。

適正管理料割合については、管理料徴収方式の場合で4~7%程度、転貸方式の場合で6~12%程度が目安となります。

税務調査において管理の実態が厳しく問われますので、何をやっているかや管理の記録などを整備しておく必要があります。

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