適法かつ適性な法人の節税方法

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1.法人の節税方法について

東京都北区赤羽の税理士 鈴木宏昌です。

法人の節税とは適法かつ適性に、税負担を減らすことです。事実を隠蔽したり、ウソで税金を逃れることは脱税となります。法人の節税は本来は経営に役立つものです。

また、税負担を軽減するために取引を偽装したりする租税回避行為と節税は全く違うものです。

本記事では、正々堂々と実行することができ、利益を計画的・戦略的に使える法人の節税方法について解説いたします。

目次



2.役員社宅、従業員社宅の導入

法人が所有している家屋や賃貸している家屋を社宅として役員や従業員に貸し付けた場合、一定額以上の家賃を役員や従業員からもらっていれば給与として課税されません。

役員や従業員は家賃を会社に出してもらっている分、手取りが増えることになりますし、会社は家賃負担分の給与を下げることができれば、その下がった給与分に対する社会保険料を減らすことができます。

個人で住宅を購入した場合、税務上住宅口ーン控除があるだけで、その特典はそれほど大きなものではありません。

しかし、法人で住宅を購人した場合には、借入金利子、登記費用、固定資産税や不動産取得税、減価償却費、修繕費などの経費はすべて費用化できます。

一定額以上の家賃を徴収する必要がありますが、その金額は通常の家賃と比べるとかなり少額で済みます。

法人で購入するのはなかなか大変だと思いますが購入資金がない場合には、役員が会社の借上社宅を借りるという方法も考えられます。

いくら以上の家賃を徴収していれぱ給与にならないかは、小規模住宅か小規模住宅以外か、小規模住宅以外(一般住宅)では自社所有社宅か借上社宅かによって異なります。

2-1.小規模住宅の場合

木造住宅では床面積が132㎡以下、木造住宅以外の家屋は99㎡以下のものを小規模住宅といいます。小規模住宅は、自社所有か借上げかにかかわらず、下記の算式で計算した金額以上の家賃を徴収していれば問題ありません。

次の(1)から(3)の合計額が賃貸料相当額になります。

(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

2-2.小規模住宅以外(一般住宅)の場合

木造住宅で132㎡超、木造住宅以外で99㎡超の社宅は小規模住宅以外の住宅に該当します。

この場合には、自社所有であるか借上げであるかによって異なります。
自社所有の社宅の場合には、下記の算式で計算した金額以上の家賃を徴収する必要があります。

次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
 ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じます。
ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

借上げ社宅の場合には、上記で計算した金額と会社が実際に支払う賃借料の50%相当額のいずれか大きい方の金額を徴収していれば問題ありません。

家賃を徴収していなかったり、一定額以下の家賃しか徴収していない場合は、給与とみなされてしまいます。


3.有姿除却

資産として計上されているものは、現実にその資産を廃棄処分したときに除却損を計上するのが原則です。しかし、資産として保有はしているものの使用価値がなくもう使うことはないことが明らかなものは、現状有姿のまま除却損を計上することができます。これを有姿除却といいます。決算時には固定資産台帳に必ず目を通し、有姿除却ができるものはないか確認をするようにしましょう。有姿除却できれば法人の節税をすることができます。

除却処理が認められる事例として
・事業の用に供する可能性のない固定資産
・専用金型等
があります。

事業の用に供する可能性のない固定資産とは、使用を廃止していること、今後通常の方法によって事業の用に供する可能性がないことの2つの条件を満たす固定資産のことをいいます。

専用金型等は、
・特定の製品の生産のために専用されていた金型等であること
・製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないこと
の2つの条件を満たせば有姿除却をすることができます。

有姿除却だと、建物や製造ラインなどの大きい固定資産であっても除却損を計上することができますが、 その資産を有姿除却する理由を具体的で詳細に記載した稾議書、 役員会での決定を記載した議事録などを作成しておきましょう。


4.倒産防止共済への加入

倒産防止共済とは、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の略であり、中小企業の連鎖倒産を防ぐために設けられた共済で、もし万が一、取引先が倒産して損失を被った場合には、積立てた金額の最大10倍(最高8000万円)を「無利子・無担保・保証人不要」で借りることができるというものです。

掛け金がほぼ積立となり、かつ掛け金の上限額の年間240万円までを全額損金計上できるため、法人の節税対策としては非常に有効です。

掛金上限は800万円までとなりますが、40か月以上支払った場合には100%戻ってきますので、非常におすすめです。


5.役員の追加

家族や親族を役員にすれば役員報酬を支払うことができ、法人においては節税となります。
しかし、役員報酬額が大きすぎると、否認されますし、何も業務を行っていなければこれも否認されます。

株主総会議事録等を作成し、職務の内容を明確にしておく必要があります。


6.家賃の年払い

家賃、地代、借入金利子、手形売却損、損害保険料、生命保険料、信用保証料、工業所有権の使用料、雑誌等の購読料、諸会費、賃借料などで1年以内に役務提供を受けるものは、支払った事業年度で費用計上ができます。家賃などは1年分まとめて事業年度最後の月に支払った場合、全額が費用計上できることになります。未払計上ではなく、実際に支払う必要がありますのでご注意ください。

弁護士や税理士の前払顧問料は、その役務提供が等質、等量ではないため、前払費用ではなく、前払金という性質なので認められません。


7.中退共への加入

中退共とは、中小企業退職金共済制度の略であり、従業員への退職金準備を国が行っている制度のことです。中退共の掛金は全額費用計上ができますので、節税効果があります。

退職金は通常退職したときにはじめて費用計上するのですが、中退共だと毎年退職金準備で掛金を支出し、それが費用計上できますので、退職金を退職時ではなく、毎年費用計上できるため節税につながるということです。

また、給与の一部を中退共掛金とすることにより、減らした給与分の社会保険料を減額する効果も見込むことができます。



8.旅費規程の整備

会社で旅費規程を作成した場合、旅費日当を出すことができ、旅費日当については給与課税対象とはならず、節税効果があります。
ただし、適正額を超える部分については役員等に対する給与となります。

旅費日当の適正額は、出張先がどこか,宿泊費に食事代が含まれるか等によって事情が異なりますので一概にはいえないのですが、一般的には2~5千円程度であれば問題ありません。


9.社内規定の整備

就業規則などの社内規程を整備することにより、節税につながることがあります。

例えば、就業規則という規程は給与体系や有給休暇について定めたものですが、就業規則がないと従業員を解雇することができません。どうしても従業員を解雇せざるを得ないようなときに就業規則があれば解雇することができ、人件費・社会保険料の節約につながるかもしれません。

また慶弔規程があれば、慶弔の際の御祝い金などを支出することができますので、社内規程は整備するようにしましょう。


10.事業年度の短縮

進行中の事業年度で、その事業年度において単発で利益が多額に計上されることがわかっている場合、その利益が発生するまえに事業年度を短縮することにより節税をすることができます。

12月決算法人の場合で12月に利益が出るとわかっている場合、事業年度を短縮し1~11月で決算を行ってしまえば、次の事業年度は12月~11月となり、利益を翌期に飛ばすことができます。

その利益が計上された事業年度では役員報酬を増額するなどの方法により節税をすることができるということです。

事業年度の短縮方法ですが、
・臨時株主総会を開催する
・異動届に臨時株主総会議事録を添付し、税務署・都道府県・市町村に提出する
これだけで変更することができます。


11.在庫の評価損計上

棚卸資産の評価損を計上することにより、利益を圧縮し節税を見込むことができます。
評価損の計上を行う場合の金額は、評価換直前の帳簿価額と期末の価額との差額に達するまでの金額です。

無条件に評価損が計上できるわけではなく、評価損の計上ができる場合は下記のとおりです。

・物損等の事実及び法的整理の事実が生じた場合
・会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定があった場合
・民事再生法の規定による再生計画認可の泱定その他これに凖ずる事実が生じた場合

物損等の事実とは、棚卸資産が災害により著しく損傷したことや棚卸資産が著しく陳腐化したことが該当します。例えば季節商品で売れ残ったもので、今後通常の方法により販売できないことが明らかである場合、その商品と同じ用途の商品で、明らかにスペックが高い新商品が発売されたため通常の方法により販売できないことが明らかである場合などは評価損を計上することができます。

ただし、物価変動や過剰生産によって時価が下がっただけでは陳腐化したとはいえないため、評価損を計上することができません。

上記の法的整理の事実とは、会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続における評定が行われることのほか、民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことにより評定が行われることが該当します


12.決算賞与の支給

決算の前後に支給する決算賞与により節税対策をすることができます。決算直前に決算賞与を計上し、その事業年度末までに未払いであったとしても決算の翌月までに事前に通知した全員に支払っていれば損金計上することができます。

注意していただきたいのは、決算前に書面にて全員に通知をする、全員に支給をする、支払いの証拠を残すために振込にするということです。

決算賞与は従業員のモチベーションアップにもつながりますので、少なくとも決算3か月前には予想利益、予想税額を計算し、決算賞与の支給を検討してみてはいかがでしょうか。


13.消耗品の購入

消耗品を購入すれば費用計上することができ、節税を図ることができます。少額減価償却の特例というものがあり、1台あたり30万円未満であれば全額損金計上することができますが、年間300万円までとなっています。



14.社員旅行の実施

社員旅行費用を法人が負担した場合、一定の条件はありますが福利厚生費として処理することができ、節税をすることができます。

福利厚生費として処理ができる条件は、
・旅行期間が4泊5日以内であること
・旅行に参加した人数が全体の人数の半分以上であること
となります。

一人あたりいくらまで認められるかということについては明らかにされていません。参考となるのは過去の裁決事例ですが、平成3年のタイ国への社員旅行は3泊4日で一人あたり183,771円であり、福利厚生費として認められています。

平成10年の九州への社員旅行は3泊4日で一人あたり192,003円でしたが、高すぎるということで給与課税されています。

このことから考えると15万円を超えると給与課税の可能性が高くなると言えそうです。


15.健康診断の実施

健康診断費用は福利厚生費として費用処理ができますので、節税につながります。ただし、下記の条件を満たす必要があります。

・健康診断の対象者が全社員となっていること。ただし、年齢による限定は可。
・診断内容が健康管理を目的としたものであり、常識的な範囲内のものであること。
・健康診断の費用が会社から診療機関(医療機関)に直接支払われていること。

健康診断については就業規則に記載するようにしましょう。税務調査では、健康診断の実施ルールを就業規則に記載されているかチェックされることもあります。


16.個人名義車両の受け入れ

個人名義車両は、会社で買い取るか、会社が個人から借りれば車両として減価償却するか、賃借料として費用計上することにより利益を少なくし、節税をすることができます。

会社で借りる場合にはただで借りる場合と使用料を支払って借りる場合があります。

ただで借りる場合には個人と法人間で使用貸借契約を締結します。そうすれば、ガソリン代や保険料、自動車税などが経費として計上することができます。

使用料を支払って借りる場合、個人と法人間で賃貸借契約を締結します。そうすれば、上記のような車両関連費用のほか、車両本体の使用料も経費となりますが、車両を貸している個人は車両の使用料収入を確定申告しなければいけませんので、注意が必要です。


17.小規模企業共済への加入

法人では節税とはなりませんが、個人で掛金支払えば、全額が所得控除なる制度として小規模企業共済というものがあります。

小規模企業共済は掛金を支払った年で所得控除を行い、事業を辞めたときに退職金代わりでもらうことができます。
小規模企業共済の掛金は月1,000円から月7万円まで500円単位で決めることができ、後から増額することも、減額することも可能です。



18.iDeCo(個人版401K)への加入

iDeCoは個人型確定拠出年金(iDeCo)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度のことであり、掛金が全額所得控除となります。

小規模企業共済と同様、法人では節税とはなりませんが、掛金が全額所得控除できるため、個人では確実な節税となります。

平成29年1月から、基本的に20歳以上60歳未満の全ての方(※)が加入できるようになりました。

iDeCOについては、下記のサイトをご参照ください。
https://www.ideco-koushiki.jp/



19.匿名組合への出資

投資家(事業会社等の出資者)が、物件の運用事業を行う営業者(リース会社の100%子会社)と匿名組合契約を結び、物件の購入価額のいくらかを出資するリース・ファイナンスをオペレーティング・リース取引といい、航空機、船舶、コンテナなど大口取引に用いられます。

オペレーティング・リースの特色は、リース収入は毎年定額ですが、リース資産は定率法により償却し、かつ、リース期間が耐用年数を上回っていますから、リース期間の前半は必ず投資損益は赤字となり、投資家に損失が分配されることになります。

このようにオペレーティング・リースは、将来の赤字が予想できますから、計画的に利益を圧縮することが可能になり、節税効果があります。

オペレーティング・リースの後半はペーパー上の黒字が発生し、繰り延べられた利益が多額になりますので、退職金として支給したり、修繕費とぶつけることが可能です。


20.生命保険への加入

法人だと生命保険の種類によりますが、その全額を費用計上することができます。それに対し、個人での加入だと生命保険料控除の枠内でしか所得控除できません。

保険料がすべて経費となるわけではなく、一部資産計上が必要なものもありますので、加入前によく調べてから加入する必要があります。


21.団体定期保険への加入

会社が従業員の保険料を負担するのが総合福祉団体定期保険であり、役員を含めた全員が加入する必要があるものです。

掛金は全額損金となりますが、加入従業員に制限があることが一般的であり、10名以上などの縛りがあります。掛金が全額損金となるため、法人にとってはメリットがあるといえます。

総合福祉団体定期保険とは違うもので団体定期保険というものがあります。団体定期保険は、従業員が任意で自費で加入する保険であり、独自に加入するより保険料が割安となります。団体定期保険は従業員が自分で払うものですので、法人には特段のメリットはありませんが、保険料が割安で、かんたんな告知で加入できることが一般的ですので、従業員のモチベーションアップにつながると考えられます。


22.最終仕入単価の引き下げ

棚卸資産の評価方法は税務署に届け出ていない限り、最終仕入原価法により計算することになります。

最終仕入原価法とは最終に仕入れた単価により期末在庫を計算する方法です。仕入単価が期末に下がっていて、期末直前に商品を仕入れた場合、低い単価で在庫を評価することができますので在庫金額を少なく計上することができます。よって節税につながるということになります。


23.未払費用計上の確認

法人税は債務が確定したら費用計上することになっています。期末の段階でまだ支払っていないものでも、債務として確定しているものは未払費用として計上することができますので、節税になります。決算期の次の月の請求書の内容などよく確認し、決算月に計上できるものはすべて計上してしまいましょう。


24.売掛金等の貸倒れ処理

債権が不良化が発生し、それが回収不能となった場合、貸倒れとして処理することができる場合があります。

税務上では下記3つの基準が定められています。
・金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ(法律上の貸倒れ)
・回収不能の金銭債権の貸倒れ(事実上の貸倒れ)
・一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ(形式基準による貸倒れ)

実務上では、一定期間取引停止後弁済がない場合の貸倒れの基準が選択されやすいですが、もっとも有利な基準を選択する必要があります。


25.決算期末直前の発送を遅らせる

税法上収益計上基準は届出が必要ありません。
収益計上の時期は棚卸資産の引き渡しのあった日の属する事業年度で計上することになりますが、引き渡しの時期については税法上4つあります。
・出荷基準
・検収基準
・使用収益開始基準
・検診日基準

すべての商品について同一の基準を適用しなければいけないという決まりはありませんので、事業や事業所ごとに出荷時、検収時に収益を計上するなど決めることができます。

この収益計上時期を利用し、期末直前に発送し、相手方の検収が翌期となる場合、検収が終わる来期に収益を認識することになりますので、節税につながります。




節税にはさまざまなものがありますが、適法かつ適正な節税のためには事前に利益を算出するためのタイムリーな月次決算が不可欠です。利益を計画的に使いたいという方は一度ご相談ください。

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