ヘソクリが相続財産とされた事例

ヘソクリが相続財産とされた事例

目次

1.名義預金・名義株は相続調査で問題とされやすい

相続人名義の預金や有価証券等の金融商品が相続財産を構成するかどうか、いわゆる名義預金や名義株などは、相続税調査の際に最も問題になりやすいです。

その多くはその預貯金等の原資・管理・運用の状況から過去に贈与されたものか、名義のみ借りた相続財産か否かの判断を必要とします。


2.名義財産(相続財産)か贈与財産かの判断

  • 被相続人以外の名義の財産でも、その財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められれば、その財産は、相続税の課税対象、つまり被相続人の財産とされてしまいます。
  • 名義財産となる(相続財産に取り込まれる)かどうかは、その原資がだれのものか、取引や口座開設の意思決定やその手続をだれが行っているか、その管理又は運用による利得を収受していたのがだれか、といった点から判断されます。
  • 名義財産ではなく、過去に贈与を受けたものであると判断する場合は、いつの時点でどのように贈与が行われたかが大きなポイントです。贈与を受けたものであれば、相続財産に取り込まれません。


3.ヘソクリが相続財産とされた事例

平成19年10月4日の裁決では、国側は被相続人の妻及び子の名義となっている預貯金等の一部を相続財産と認定して相続税の更正処分を行ったのに対し、請求人子及び妻が預貯金等は名義人固有の財産であるとして原処分の全部の取消しを求めましたが、管理状況や原資等から相続財産であると認定されました。


4.妻及び子の主張

請求人らは、預貯金等のうち、

  • 妻名義のものは、妻が被相続人との婚姻前から保有していた預貯金及び妻固有の収入並びに生活費を節約して貯めたヘソクリを原資として形成されたものである
  • 子名義のものは、子が両親との同居期間中に子固有の収入から生活費として家計に入れていた金員等を原資として形成されたものである
  • 一部のものについては 被相続人から生前に贈与を受けたものである

と主張しました。


5.審判所の判断

預貯金等のうち妻及び子名義の郵便貯金の一部については、「郵便貯金メモ」等により被相続人が管理しており、被相続人がその処分権を有していたと認められました。預貯金を自分のものとするには、自分で管理している必要があります。被相続人が管理していれば、被相続人の財産であると認定される可能性が非常に高くなります。

また、本件預貯金等のうち上記以外の預貯金等についても原資は被相続人が出損したものであり、その管理も被相続人により行われていたと認められました。また、妻の固有収入は預貯金等以外の預金に化体しており、預貯金等の原資たり得ないとされました。


6.妻への贈与の事実

請求人らは、妻は婚姻前から預貯金を所有し、被相続人の給与から生活費として費消して残った金額(いわゆるヘソクリ)を蓄え、被相続人了解のもと、預貯金等を形成したと主張しましたが、妻は婚姻時に持参金がない上、夫婦間において、家庭生活を妻に委任し、その費用を妻に渡すことや一定の預貯金の管理運用を妻に任せることはあり得ることであり、その事実をもって任された妻の財産になるわけでもないとされました。

預貯金等の原資は被相続人が稼得した所得から賄われていたものであることや、その管理運用の状況等を併せ考えると、預貯金等の帰属は、被相続人にあったということができ、他に請求人らの主張を裏付ける証拠はないから請求人らの主張は採用できないとされ、結局被相続人の相続財産であるとされました。

【業務に関するご相談がございましたら、お気軽にご連絡ください。】

03-6454-4223
電話受付時間 (日祝日は除く)
平日 9:00~21:00
土曜日9:00~18:30

チャットワークメールでのお問合せ