不良債権等を償却して自社株の評価を下げる

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法人税の課税所得をもとに年利益金額が計算されますが、課税所得を低く抑える方法の一つとして、税務上、認められると判断される債権等の貸倒損失を積極的に活用しましょう

目次

1.法律上の貸倒損失

法律上、または税法上において認められる私的整理による関係者の協議決定等による合理的な基準により債務整理手続等によって切り捨てられた金額は、損金経理の有無にかかわらず、貸倒れとして損金に算入できます。

①会社更生法の規定による更生計画の認可または整理計画の決定があった場合において、その決定により切り捨てられることになった金額

②会社法の規定による特別清算による協定の認可または整理計画の決定かあった場合において、その決定により切り捨てられることになった金額

③民事再生法の規定の決定があった場合において、その決定によって切り捨てられることになった金額

④債権者集会の協議決定により合理的な基準に基づき債務者の負債整理を定めている場合において、切り捨てられることとなった金額

また、行政機関または金融機関などの第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で、合理的な基準に基づいていると認められる場合で、切り捨てられることとなった金額

2.債権放棄(債務免除)による貸倒損失の計上

債務者の債務超過の状態が相当な期間継続しており、回収が困難となっている金銭債権(売掛金、貸付金、その他営業上の債権)について債権放棄(債務免除)を行った場合、明らかに回収困難であると認められるときは、その債権は法的に消滅するので税務上も必要経費または損金に算入することができます。

ただし、債務者の資産状況及び支払い能力からみて回収の可能性があり、債権放棄が債務者に対する経済的利益供与(贈与)と認められるときは「寄付金」とされてしまいますので、ご注意ください。

上記の債務超過の状態が相当な期間継続しているときとは、通常3年ないし5年以上の間、債務超過の状態の継続であり、容易に健全化が難しいと判断される状態をいいます。

このような状態にある債権について当方から一方的に債権放棄を行い利益を小さくすることになります。

また、この行為を第三者的に立証する必要がありますから、税務上も「書面により明らかにされたものに限る」としています。

よって一般的には内容証明郵便を利用して、債権放棄の事実、日時、金額等を明らかにし、後日に証拠が残るようにしなければなりません。普通郵便などでは認められません。

内容証明郵便の文書は、1行20字以内、1枚26行以内に記載します。

ただし横書きの場合は1行13字以内、1枚40行以内または1行26字以内、1枚20行以内に変わります。またカッコや句読点も1字とします。

内容証明郵便の文書は同文を3通作成(複写可)し、1通は送付されますが、1通は「控え」として差出人に返還され、1通は郵便局で保管されます。また通常は配達証明付きとします。


3.事実上の貸倒損失と認められる場合

金銭債権等の債権について、債務者の資産状態、支払い能力などから客観的にみてその債権の価値がなくなり、かつその全額が回収不能と認められるときは、税務上も「事実上の貸倒れ」として損金経理ができます。

ただし、担保物がある場合は、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとすることはできません。

この事実上の貸付れの具体的な判断基準が示されていませんから、事実の認定が判然としなければなりません。

債務者の法人が解散をしただけでは債権の回収不能とはならないのです。

通常では残余財産の分配、清算事務の終了などといった段階で初めて「回収の見込みなし」と断定されることとなります。

よって、解散中や事業閉鎖状態で全額貸倒れの見込みであると認定されるには、複数の請求、督促書類と最終的な内容証明郵便による法的等の警告による催告状などを出し、所在不明などの場合は配達証明による「宛名人見当らず」として郵便局より返送された書類を保管しておく必要があります。

さらに、債務者の資力の詳細な調査資料も必要です。

とくに所有不動産の有無、財産の担保力や担保余力のないことを証する不動産登記簿や鑑定評価等の書類です。

また、債務者が今後においても当分の間は再起が困難で債務の弁済が不可能であると認められる現況の財務状況の証拠書類等です。


4.売掛債権の貸倒損失の計上

債権のうち商行為による信用取引上の売掛債権については、「一定の事実」(後述)が発生し、回収が停滞した段階で、損金経理の処理をすることと「備忘価額」(1円)を残すことを条件として、形式的に貸倒れとして処理することを認めています。

売掛債権には売掛金のほか、未収加工料、未収手数料、未収地代家賃などの主たる商行為によるものであり、主たる商取引ではない不動産の譲渡による未収金や未収利息などは含まれません。

ただし、売掛金の回収による受取手形は含まれます。

上記の形式的要件の「一定の事実」とは次のような場合をいいます。

一定の事実
①債務者との主たる商取引を停止した時以後1年以上経過している場合(最後の弁済期または最後の弁済期が取引きを停止した以後であるとは、もっとも遅い時からをいいます。また、その売掛債権に担保物がある場合はすべて除かれます。)

よって、売掛金に関する帳簿や売掛金の管理台帳(回収記録などの業務記録のあるもの)などを整えて、事実の立証に備えるようにします。

②債務者の担当販売員等の同一地域の有する売掛債権の総額が、その回収のための旅費等の取立て費用が採算に合わないような少額な滞留不良債権の場合で、支払いの督促を何回も行ったにもかかわらず弁済がない場合

よって、担当者の地域要因や支払い督促の業務記録、回収直接費用などの見積り計算書などを備え置くことになります。

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