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高収益部門を後継者の会社に譲渡する 株価対策

高業績を上げている優良なオーナー会社は、必ず高収益部門の事業を持っているものです。

オーナーが健康な間に後継者を決めたならば、思い切って高収益部門を別会社にして後継者に経営の実際を任せてみるのはいかがでしょうか。

もちろん、オーナーが社長で後継者が副社長、専務でもかまいませんが、オーナーが代表権のある会長、後継者を社長にして経営の後見をしながら、後継者として育成していくことにすれば、よりよいでしょう。同時に、本体会社の自社株式の株価が上がりますから、自社株対策も実施するようにします。

目次

1.高収益部門を営業譲渡する方法

(1)後継者を株主とする事業を譲り受ける会社を設立します。

(2)高収益部門の資産、負債等のすべての営業を譲渡します(事業譲渡契約の締結)。営業には、得意先、仕入先、取引銀行の預金、融資金等及び従業員を含みます。

(3)譲渡する資産、負債の譲渡価額

① 資産、負債は、個々の資産、負債の時価で評価して決定します。

例えば機械等は全体でいくらとするのではなく一個の機械ごとに時価を算定することになります。

減価償却資産は通常簿価を時価として行われています。

ただし、土地等に含み益(時価と簿価の差額)がある場合は譲渡する会社に譲渡益が生じますから、賃貸にします。この場合、建物と一括して賃貸するケースと土地だけを賃貸し、建物を譲渡するケースがあります。建物を譲渡しますと、借地権の問題が発生します。

その他の資産については、経済的な実質価格(不良債権は除く等)により判断することになります。

② 税務上の各種引当金、準備金は原則として引き継げませんから、譲渡の対象にはしません。

(4)債権、債務の譲渡は、通常の売買ですから当然債権者及び債務者の承諾が必要になります。

(5)高収益部門の営業譲渡は、会社法上営業の重要な一部の譲渡(会467条)に当たりますから、株主総会の特別決議(会309条)による承認が必要です。

事業譲渡契約書

鈴木一郎株式会社(以下「甲」という。)と、株式会社鈴木次郎(以下「乙」という。)とは、当事者間の営業譲渡に関し、次の契約を締結する。

第1条 甲は平成○年○月○日現在における貸借対照表及び財産目録に基づき、楽器製造部門の営業ならびにこれに関する一切の財産を乙に譲渡するものとする。ただし、その細目については、本契約締結後、甲乙協議のうえ決定するものとする。

第2条 この営業譲渡の財産の価額については甲の平成○年○月○日現在の時価とし、甲乙協議のうえ決定した評価により計算した価額とする。なお譲渡代金の支払いについては、甲乙協議のうえ決定するものとする。

第3条 この営業譲渡実行日は平成○年○月○日とする。

第4条 乙は甲より譲り受ける営業に関する従業員の一部を引き継ぐものとし、当該従業員の甲における勤続年数は継承するものとする。

第5条 甲は第1条に基づく財産目録を乙に提供する。

第6条 甲及び乙は、譲渡日までにそれぞれ株主総会を開催し、本契約の締結につき、その承認を求めるものとし、その承認により効力を生じるものとする。

第7条前各号のほか、本契約の履行につき必要な事項については、甲乙協議のうえこれを決定するものとする。

本契約を証するため、本契約書2通を作成し、甲乙各1通保有する。

平成○年○月○日

東京都北区赤羽○丁目○番○号

譲渡人 甲 鈴木一郎株式会社

代表取締役 鈴木 一郎印

東京都北区王子○丁目○番地

譲受人(乙)株式会社鈴木次郎

代表取締役 鈴木 次郎印

2.事業譲渡における独占禁止法、金融商品取引法等の規制

(1)ポイント
① 事業を譲り受ける会社は、事業譲渡に先立って公正取引委員会に当該事業受けの内容を届けなければなりません。事業譲渡は上記届出受理の日から原則として30日を経過するまではすることはできません。

② 届出書を提出しなければならないのは、国内売上高合計額200億円超の会社が、①国内売上高30億円超の会社の営業全部を譲り受ける場合と②譲受け対象部分の国内売上高30億円超の営業の重要部分または営業上の固定資産を譲り受ける場合です。

③ 有価証券報告書の提出義務のある会社は、一定以上の規模の事業譲渡または事業譲受を行う場合は内閣総理大臣に対して「臨時報告書」の提出が必要です。

(2)公正取引委員会への届出

事業譲渡等に対する独占禁止法による規制の目的は、事業譲渡等による競争の実質的な制限を防止することにあります。そこで、独占禁止法は、会社が一定以上の規模の事業譲受等を行う場合に、合併と同様の事前届出義務を事業譲受会社に課しています(独禁法16条)。具体的な行為は下記のとおりです。当事会社は、届出書の受理日から原則として30日を経過するまでは事業譲渡等を行えません。

① 他の会社の事業の全部または重要部分の譲受け
② 他の会社の事業上の固定資産の全部または重要部分の譲受け
③ 他の会社の事業の全部または重要部分の賃借
④ 他の会社の事業の全部または重要部分についての経営の受任
⑤ 他の会社と事業上の損益全部を共通にする契約の締結


3.事業等の譲受けの届出要件

① 届出義務のある会社

事業譲受等を行う場合に届出をしなければならない会社とは、国内売上高合計額が200億円を超える場合の事業譲受会社です。国内売上高合計額とは、会社の属する企業結合集団(注1)に属する会社等の国内売上高をそれぞれ合計したものをいいます。

(注1)企業結合集団とは、会社及び当該会社の子会社(注2)並びに当該会社の最終親会社(親会社(注3)であって、他の会社の子会社でないものをいいます。)及び当該最終親会社の子会社(当該会社及び当該会社の子会社を除きます。)から成る集団をいいます。ただし、当該会社に親会社がない場合には、当該会社が最終親会社となりますので、当該会社とその子会社からなる集団が企業結合集団となります。

(注2)「子会社」とは、会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している会社等として公正取引委員会規則で定めるものをいいます。

(注3)親会社とは、会社等の経営を支配している会社として公正取引委員会規則で定めるものをいいます。

② 届出が必要なケース
上記①に該当する会社が、次のいずれかの行為を行う場合には、事前届出が必要です。

ア国内売上高が30億円を超える会社の事業の全部の譲受けをしようとする場合

イ他の会社の事業の重要部分の譲受けをしようとする場合であって、当該譲受けの対象部分に係る国内売上高が30億円を超える場合

ウ 他の会社の事業上の固定資産の全部又は重要部分(*)の譲受けをしようとする場合であって、当該譲受けの対象部分に係る国内売上高が30億円を超える場合

(*) 重要部分とは、譲渡会社にとっての重要部分を意味し、原則として、当該譲渡対象部分が1つの経営単位として機能し得るような形態を備え、譲渡会社の事業実態からみて客観的に価値を有していると認められる場合を指します。会社法第476条等に規定される「重要部分」とは必ずしも一致しません。

③ 届出が不要なケース
以下に該当する場合には届出は不要です。
ア 親会社・子会社間および兄弟会社間の営業等の譲受け
イ 営業の賃借
ウ 経営の受任
エ 損益全部を共通にする契約の締結

(4)臨時報告書の提出
有価証券報告書の提出義務のある会社は、下記のいずれかの事業譲渡または譲受けに係る契約を締結した場合(契約の締結が確実に見込まれ、かつ、その旨が公表された場合を含む。)には、遅滞なく、内閣総理大臣に対して「臨時報告書」を提出しなければなりません。

① 事業譲渡または譲受けによって、提出会社の資産の額が最近事業年度の末日現在の純資産額に比して30%以上減少または増加することが見込まれるとき
② 事業譲渡または譲受けによって、提出会社の売上高が最近事業年度の実績に比して10%以上減少または増加することが見込まれるとき

4.営業権の問題

(1)営業権の評価の必要性

相続税法基本通達では、「法に規定する『財産』とは、金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものをいうのである」として、「財産には、法律上の根拠を有しないものであっても経済的価値が認められているもの、例えば、営業権のようなものが含まれること。」と営業権についても評価することを明確にしています。

すなわち、取引相場のない株式の評価においては有償取得であるか自己創設であるかを問わず、一定の計算式に従って営業権を評価することになります。

なお、営業権の評価については、平成20年3月14日付で国税庁より公開された財産評価基本通達の一部改正により、評価方法及び評価不要の営業権の取扱いが改正されています。

評価方法では、営業権の評価算式における「標準企業者報酬額」を現下の経済実態に応じた金額とし、「総資産価額に乗じる率」を基準年利率から総資産利益率を基にした5.0%に引き上げたため、結果として営業権が発生しにくい状況となりましたので、それほど心配する必要はありません。

5.自然発生借地権の問題

建物を後継者の会社に譲渡し、土地を賃貸すると借地権の問題が生じます。

ただし、更地の土地に対し適正な地代を支払っていれば、借地権の問題は生じません。

適正な地代とは、更地のとしての土地の時価又は公示価格若しくは相続税評価額の6%とされています。

またその算定は、評価年度を含む、前年及び前々年の過去3年の平均額でよいとされています。

さらに、地代を据え置きますと、地代が上昇すれば、自然発生的に借地権が、後継者の会社に移転していくことになり、本体会社の持分割合が減少します。

本体会社の土地保有割合が減額されるとともに、後継者の会社の資金の余裕が将来できれば、本体会社より底地を買い上げることも考えられます。

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