その他の財産の検討 相続税税務調査
相続税の税務調査において論点となるその他の財産について解説します。
【目次】
1.生命保険金
● 被相続人の普通預金通帳から、生命保険料の引き落としの有無を確認します。
● 普通預金通帳からの引き落とし金額と契約内容を検討します。
● 複数の契約がある場合、申告漏れとなることがあります。
● 被相続人が契約者となって、相続人等に掛けている生命保険契約に関する権利は相続財産です。 【保険証書類】
● 相続開始後の生命保険金の入金状況を確認してください。
● 生命保険金を担保に貸借があり、支払会社と清算を行なっていないか等の確認を行ないます。
2.退職手当金
● 相続税の申告期限後に支払われる退職手当金の有無についても確認します。
● 弔慰金の支払いがある場合は、退職金に該当する部分の有無を検討します。
● 退職金が一部未払いになっている場合があります。
《質疑応答:死亡退職金の課税時期》
【照会要旨】
相続税法第3 条第1 項第2 号の規定は、「被相続人の死亡後3 年以内に支給
が確定したものの支給を受けた場合」と規定していますが、死亡退職金の課税
時期は、死亡退職金の支給が確定した時か、それとも当該死亡退職金の支払い
があった時のいずれですか。
【回答要旨】
死亡退職金の支給の確定があれば、死亡退職金の支払請求権(債権)という財産を取得したことになりますから、その時点において相続税の課税原因が発生しているというべきです。
相続税法第3 条の規定は、相続財産とみなされる財産を擬制しているに過ぎず、課税時期については、定めていないと解されます。
したがって、死亡退職金については、死亡後3 年以内にその支給が確定すれば、実際の支払いが3 年以内であるかどうかを問わず相続税が課税されることになります。
《質疑応答:死亡退職金を辞退した場合》
【照会要旨】
A(株)は、社長が死亡したため、株主総会及び取締役会の決議に基づき死
亡退職金として1 億円をその遺族に支払っていましたが、その後、遺族から退
職金受領を辞退したい旨の申し入れがあり、1 億円が返還されました。この場
合、相続税の課税はどのようになるのでしょうか。
【回答要旨】
社長の遺族が受領した退職金1 億円は、その支給について正当な権限を有する株主総会及び取締役会の決議に基づいて支給されたものであることから、受領した退職金を返還したとしても相続税が課税されることにかわりはありません。
ただし、返還理由がその退職金の支給決議が無効又は取り消し得べきものであった場合において、その無効が確認され又は取り消しがなされたことが、権限を有する機関の議事録等から明らかであれば、相続税の課税対象とはなりません。
3.家庭用財産等
● 家庭用財産は適切に見積もって計上します。
● 家庭用財産として一括評価できないような貴金属や書画骨董等高額な動産の有
無を確認します。
● 庭園設備に該当する規模の庭園について確認します。
● 家屋の増改築後の価額が固定資産税評価額に反映されているかの確認を行いま
す。
4.その他の財産の検討
● 財産として計上すべき貸付金・未収金等の有無を確認します。
【金銭消費貸借証書・賃貸借契約書等】
● 貸付金は相続人が知らず、申告漏れとなることが多い。預金からの高額な出金の検討、金銭消費貸借契約書等の確認を行います。
● 上記の他、財産として計上すべきものの有無を検討します。
【車両・各種会員権・営業権等】
● 申告漏れを指摘されることが多い未収金
未収給与・未収配当金・未収地代
● 建物を賃借している場合、預入保証金・敷金があります。
《質疑応答:支払期日未到来の既経過家賃と相続財産》
【照会要旨】
アパートの賃貸を業務としている者が本年4 月24 日に死亡しました。
賃貸借契約において、そのアパートの賃貸料の支払期日は、毎月の末日とする旨が明定されており、その契約に従って賃貸料が支払われてきました。
未収家賃はありません。
この場合、4 月分の家賃は、4 月30 日に相続人が収受しましたが、その家賃のうち4月1 日から24 日までの期間に対応する既経過分の家賃については、相続税の課税価格に算入して申告する必要がありますか。
【回答要旨】
死亡した日においてその月の家賃の支払期日が到来していない場合は、既経過分の家賃相当額を相続税の課税価格に算入しなくて差し支えありません。
《質疑応答:被相続人の準確定申告に係る還付金等》
【照会要旨】
被相続人は、8 月に死亡したので、相続人は準確定申告書を提出し、7 月に納付した予定納税額のうち一部の還付を受けました。
この場合の還付金及び還付加算金は、被相続人の死亡後相続人について発生するものですから、相続財産であるとはいえず、相続税の課税価格に算入されないと考えてよろしいですか。
【回答要旨】
還付金請求権は(本来の)相続財産であり、相続税の課税の対象となります。還付請求権は、被相続人の死亡後に発生するとしても、被相続人の生存中に潜在的な請求権が被相続人に帰属しており、これが被相続人の死亡により顕在化したものと考えられます。
したがって、これらの請求権に基づいて還付金を取得した場合は、相続税の課税の対象となります。
還付加算金は相続人が確定申告書の提出によって原始的に取得するもので、被相続人からの相続によって取得するものとは認められないため、所得税(雑所得)の課税対象となり、相続税の課税価格に算入されません。
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